湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

☆ドビュッシー:三つの交響的エスキース「海」

2016年08月27日 | ドビュッシー
○スヴェトラーノフ指揮LSO(ica,bbc)1975/4/17live・CD

凄絶なブラヴォで終わる壮年期スヴェトラーノフの激演。とくに両端楽章のスピードと迫力は凄い。まったくロシア式発音をブラスや太鼓などに指示し、太筆描きの海をギラギラ煌めかせる。音がいちいち太いのがいい。音画ではなく文字通り交響曲として自己流を押し出した演奏だろう。オケがまた良かった。ロシアオケではキツすぎる。○。ストラヴィンスキーが火の鳥を海と改作したような感じの演奏と言ったらどうだろう。
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☆ブラームス:交響曲第1番

2016年08月27日 | ドイツ・オーストリア
◎カサルス指揮プエルト・リコ・カザルス音楽祭管弦楽団(GRANDSLAM他)1963/5/31live・CD

度肝を抜かれた。フルヴェン以来の衝撃の名演だった。むろん、弦が物凄い。音色もアンサンブルも表情付けも素晴らしい、しかも独特の色が付いている、ここが肝心だ。カザルスの指揮は集中力がハンパないことはいつものこととして、この手垢まみれの曲をこう独自の表現で、感情のうねりをぶつけて来られると圧倒されまくり。一楽章でまずそのテヌート気味の音の連射にやられ、恐らく一番の聴かせどころである二楽章でのドルチッシモな法悦。三楽章は軽く流すが四楽章ではアゴーギグ弄り倒してなおテンポは突き進み、弦だけでなくブラスの迫力もそうとうなもの。全て演奏レベルもそこそこありアンサンブルに問題はない。これはフラブラ仕方なしか。◎!
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☆ウォルトン:管弦楽のためのパルティータ

2016年08月26日 | イギリス
◎セル指揮クリーヴランド管弦楽団(sony)1959/1/21・CD

この精度・スピード・テンションで、この高音質で録音されたということで、◎にせざるを得まい。乾いた感傷がセルの芸風に合う。パルティータと言いながら芸風はまるきり近現代の作曲家ウォルトンそのもので、折衷的な部分はあるが、極めて難度の高いアンサンブル、とくに符点音符同士の絡み合いであるとかそういったものが高速で現れる、そこを若干ヒステリックではありながらも立派にやりきっているオケには感動と同情を禁じ得ない。セルの苛烈な要求に応えたものであろう。二楽章が意外と聴きもので、ソロ楽器の妖しい絡み合いに胸ときめかせ、むせ返るような色彩の爆発に仰け反る。このスケール感は録音のせいだけではないだろう。◎。
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☆マーラー:交響曲第10番(クック改訂第三版)

2016年08月26日 | マーラー
○マルティノン指揮シカゴ交響楽団(Ritardando:CD-R)1968/11/21live

マルティノンにはクック改訂途中の版によるものを含めて何枚か同曲の録音が残されている。この演奏はかなり板についた感じがする。さっさと進む明るいマルティノン節、録音音質もよく、同じ組み合わせでシカゴ交響楽団自主制作ボックスにも10番クック版が収録されているのだが、遜色無い聴き心地である。私はかなり楽しめた。もっともクック版ならではの問題はあり、声部が剥き出しになる個所が多く、2楽章のヴァイオリンパートだけが細かい音符を刻む場面などではバラケがみられて「らしく」ない。流れ良さがそれを救っている。クック版ならではの「マーラーぽくない」フレーズでの違和感もこのスタイルだと率直に伝わってきて、終楽章フルートから提示され奇怪な変容をなすメロディなど「もっと生きていたらこんなの差し替えたろうな」と思ってしまう。ザンデルリンク盤の恣意性がもたらした説得力がここにはない。音響の迫力に欠けるところもあり、後半楽章を象徴する葬送の太鼓も響きが浅くて「音楽的過ぎる」。いろいろ書いたが全般にはじつに聴きやすく、マルティノンらしい色彩味があって他には聴けない特色があり、終演後一人ブラヴォを叫ぶ人に加担したくなる、そんな演奏。
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☆プーランク:三重奏曲

2016年08月26日 | フランス
◎作曲家(P)ピエルロ(O)アラール(B)(Ades他)1959・CD

優秀なステレオ録音。現在聴きうる最もレベルの高い演奏記録と言えるのではないか。楽曲の古典性を明確にしそこに新しい和声や世俗的なフレーズを有機的に織り込んでいくプーランクならではのモーツァルト的な喜遊性が、ここまではっきり意識して表現された演奏は無い。ピアニスト作曲家自作自演ならではともいえる。ただ、トリオという編成はソロ楽器が互いに個性を主張しあうという、「アンサンブル」とは少し違った視座で楽しむべき(というかそうなってしまう)もので、これもその他聞に漏れない。作曲家後年のピアノは不安的な録音もあるがここでは調子がよく、30年前にくらべてはテンポも落ち着き円熟味があるものの、攻撃性は失われていない。表現が大きい。ピエルロはただでさえ饒舌なオーボエという楽器の機能性を駆使して自己主張する。一番印象に残るだろう。アラールはバソンということを感じさせない安定感があり、曲的にそれほど前に出てこないにもかかわらず完璧な技巧と、時にアルトサックスのような音で個性を出しオーボエに対抗する。スリリングですらある。◎。
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☆エルガー:交響曲第2番

2016年08月26日 | イギリス
◎ボールト指揮LPO(LYRITA)1968・CD

精度面で緩さがあることは否定しないが、この古きよき王侯貴族ふうの重厚なる気高さを持味とした指揮者が、エドワード朝の理想と黄昏に生きた気高き作曲家の粋を表現するに不足があるわけがない。ニキシュ派英国人指揮者がドイツ・オーストリア派英国人作曲家の作品を録音する、というのは珍しいというか唯一の例ではないか。オケが指揮者に全幅の信頼をおき音色の美のかぎり力を出し切っている。指揮者はそういったオケをきちんと制御し必要な音それほど必要でない音を見極めて、スコアの再現ではなく音楽の再構築を目し、成功をおさめている。かなり感情的に激したアーティキュレーション付けがきかれ、全般には即物派のような性急なインテンポに強いアタックが特徴となっているが、けして客観主義ではなく感情を煽るための設計が行き届き、またボールトには珍しくリズムも溌剌として退嬰や透徹に逃げず最後まで色のついたドラマを維持している。それがエルガーのような「古い作曲家」にはぴたりとあっているのだ。フィナーレ最後の1楽章主題再現における表現はこの演奏を聴いてしまうと他が聴けなくなる。明るく遠く懐かしい響きは今もって他を寄せ付けない。それまでの流れから終止部まで絶妙の設計となっている。ボールトLPOの素晴らしさをつたえる一級の録音。
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☆メシアン:トゥーランガリラ交響曲~リハーサル

2016年08月26日 | フランス
◯バーンスタイン指揮ボストン交響楽団(WHRA)1949/11/28live・CD

6分余りの記録はボストン交響楽団記念盤で出たことがあるが、この嗄れたナレーションで始まる26分余りの長尺は初出かと思う。恐らく新しい放送音源(晩年の本人のナレーション)からのものだと思う。難しい曲であることが伺えるが叙情的でしつこくない官能性が美しく印象的。いっぽう打楽器やピアノのポリリズム的な絡みが特徴的なアクセントを加えている様子が一層強調されていて、対比が一種乖離的にも感じられ、アイヴズの曲のような重層性を感じさせる。注意深い指示も注目される。5楽章が入っていて驚くが余りに重くて尖さが無い。もっと鋭く軽やかさを感じさせるくらいの響きが欲しい楽章だが、初演者記録として貴重か。
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☆ディーリアス:海流

2016年08月26日 | イギリス
○アレクサンダー(B)シューリヒト指揮バイエルン放送交響楽団、合唱団(archipel)1963/3/8・CD

この時期にしては録音はあまりよくない(おそらくモノラル原盤)。シューリヒトの意外な演目だがこの人はイギリスでも人気があったしディーリアスの同時期の曲がドイツ語で書かれているものが多くイギリスよりドイツで先に認められたという経緯もあり(この演奏はドイツ語歌唱によるものである)、また、聴けばわかるのだが晩年シューリヒトのさらさらとした演奏ぶりが透徹したような曲の性質にあっており、これを選んだ理由がなんとなくわかる。シューリヒトというとブルックナーだが晩年のブルックナーの芸風を更に薄めたような、海流というより渓流のような軽々とした透明感にちょっとびっくりした。バリトンはしっかり主張しており、バックオケ・合唱とのコントラストが明瞭である。ビーチャムあたりと比べると面白いかもしれない。客観的に引いたようなディーリアスというのもなかなかだ。
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☆ウォルトン:弦楽四重奏曲

2016年08月26日 | イギリス
◯ハリウッド四重奏団(capitol)1949/11/2、3・SP

一般に聴かれる録音はウォルトンの指示で採り直されたものとはよく知られている。これはウォルトンを怒らせた初録音という。最近ネットで公開されているものである。さらさら流れるように達者な演奏が進むさまはTESTAMENT復刻盤と大した違いは感じないのだが、スケルツォの繰り返しをしつこいとみなして奏者が勝手に削ったのが逆鱗に触れたらしい。だが、再録音により地球の裏のウォルトンはえらく気に入り、この曲はハリウッド四重奏団にしかやらせないようなことを言っていたそうだから気まぐれだが、まあ、いずれここまで、集中して取り組んだ演奏もなかろうし、奏者のレベルからしてもこれ以上ない。音のキレの凄さと言ったらない。二度目よりもスピードが早くテンションも高く感じるのは印象に過ぎないか。◎にしたい◯。
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※過去記事のピックアップについて

2016年08月26日 | Weblog
少し過去記事の掘り起こしをしてみます。10年もたてばスタンスや精度がかなり異なってきていますが、かつて良い評価したものを試しにアップしてみますね。落ち着いて新しいものを聴くための、耳を洗う時間をくださいな。表題の最初に「☆」をつけた記事がそれです。
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☆メシアン:トゥーランガリラ交響曲

2016年08月26日 | Weblog
◎イヴォンヌ・ロリオ(p)ジャンヌ・ロリオ(OM)ロザンタール指揮ORTF(ina)1959/1/20live

ハデハデな演奏でバンスタの初演もここまではドガシャーンしなかったろうという具合。殆どロックコンサートのようなノリでオンドマルトノがシンセのようだ。気を煽る演奏を求めるなら是非!聴衆反応も良い。
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ヴォーン・ウィリアムズ:二重弦楽合奏のためのパルティータ

2016年08月25日 | Weblog
アンドレ・ジラール指揮ORTF(ina配信)1971/3/4放送

放送用セッション録音の模様。古典と現代のやや珍しい小編成合奏曲を並べた中のメインにあたる。そもそもORTF、ひいてはフランスの楽団がイギリス現代をやること自体非常に珍しく、フランスの指揮者としては娯楽性を備えた職人的指揮者としてデルヴォーよりもマイナーな存在であるこの人の演奏を敢えて聴いてみた。録音は時期からするとあまりよくない。弱音で少し震えがあり、全般やや篭もる。演奏は、いや、これもRVW特有の「弾きにくさ」が横溢した作品なんだなあという厳しい部分もあるものの、全般としてメリハリがききアンサンブルもわかりやすいレベルで上手く組みあい(必要以上に厳しくして骨皮にはなってないということ)、そこそこふくよかさもあり、後半楽章の旋律の伸びやかな歌い方は、なんでこのオケ、この指揮者はもっとヴォーン・ウィリアムズやらなかったんだろう、というくらい、板についていてびっくりする。イギリスの演奏と言っても通じるくらい音が安定し、やさしい。なかなかでした。
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ヴォーン・ウィリアムズ:二重弦楽合奏のためのパルティータ

2016年08月25日 | Weblog
ボールト指揮LPO(warner/EMI)1975/10・CD

晩年作品。ヒンデミット流の新古典主義をへた後期の特徴として技巧に走ったようなところがあり、依然叙情的な横の旋律が支配的ではあるから聴きやすいが、立体的な構造は6〜8番交響曲を思わせる響きに、より複雑なアンサンブルの彩を加えている。二楽章前半はこのコンビではしばしばあることだがセッション録音とは思えないバラケっぷりが聴こえ、専門室内楽団であったらこうはならなかったろう、と落胆もする。しかし分厚い編成なりの迫力は逆に、このコンビでなければ出せなかっただろう。こういうのがボールト流RVWだ。室内楽編成プラス2ndVnを欠く弦楽合奏団という組み合わせは弦の美しさのみを追求したタリス幻想曲を思わせるが、ここでは弦だけで特色ある多彩な響きを出すための単なる装置として働いている。
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バルトーク:ピアノ協奏曲第3番~Ⅱ抜粋

2016年08月24日 | Weblog
カペル(P)ザッヒャー指揮SWF南西ドイツ放送交響楽団(memories)1948/5/30live・CD

40年代ライヴということで録音的にはかなり厳しく耳を衝くようなノイズが痛い。楽章の性格上のこともあれオケが重苦しい。透明感あるカペルの音との乖離具合が逆にこの作曲家の作品群中における同曲の立ち位置を考えさせられる。とにかく短いのでこのくらいしか言えない。
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フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番

2016年08月24日 | Weblog
R.カサドシュ(P)カルヴェ四重奏団のメンバー(sony)1935・CD

時期的にも古風な点は否めないロマンティックな作品だが、浮遊感のある調性の頻繁な変化に独自の作風があらわれスケルツォもさることながら終楽章では躍動感にもあふれる特有の、しかし自然で偉大なフィナーレを作り上げる。演奏的に今ひとつパッとしない感のあるこの盤でもカルヴェの甘い美音がひときわ輝き音楽に色を添えている。もっとも、編成が若干大きくピアノがあるので、録音制約上、弦楽器はおしなべて背景にまわりがちなのは惜しい。
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