湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第5番

2018年10月04日 | ヴォーン・ウィリアムズ
○ハンドレー指揮王立リヴァプール・フィル(EMI)1986・CD

ヴォーン・ウィリアムズの今や最高傑作の扱いになる交響曲である(また作曲直後にもヴォーン・ウィリアムズに期待される絶美が、酸鼻を極める戦争直後に提示されたことで演奏されまくった)。しかし「タリス」「田園交響曲」と同じ世界を描きながらブラスの多用、立体的な書法による多彩な響きの晩年様式によるもので(裏腹にあけすけすぎて、かつての室内楽的な密やかさ、絶望の果の諦念は影を潜める…暗い6番ですら然り)余りのわかりやすさに首を傾げる向きもあるかもしれない。勢いだけだとそうなってしまうし、録音が古いとメリットが薄まる。同時代指揮者のものはそういうわけで曲を味わうには不向きで、では現代のものならヴォーン・ウィリアムズの人によっては疑問を提示するオーケストレーションを掌握したうえで、多少ロマンティックであればしっくりくるだろう。ロイヤル・フィル系の明るく透明な音ならこの美しい田園風景をしっかり耳に焼き付けることができる。そのスケール感、晩年様式の特長を明瞭に抉り出す高音ブラスのあけすけな発声(たまたまそういうオケなのかもしれないけど)、ハンドレー盤はかなり期待に応えることができている。特に三楽章は浅薄に落ちず、歌いあげられており心揺さぶられる。野の花とのカップリングだが、明暗を行き来する野の花よりもこちらのほうがハンドレー向きらしい。機会があればぜひ。
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