2014年度作品。アメリカ映画。
たった一台の戦車で300人ものドイツ軍に戦いを挑む5人の男たちの姿を描く、ブラッド・ピット主演の戦争ドラマ。
監督はデヴィッド・エアー
出演はブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ ら。
戦争映画の意義は、戦争の残酷さを伝えることにあると思っている。
人が人を殺し合うという醜さを見せることで、戦争の無意味さを突き付けること。それが戦争映画の一定の役割ではないだろうか。
「フューリー」はその点において、成功していると言える。
だがそれゆえに、娯楽映画としては失敗している作品とも言えるのである。
主人公はナチスドイツと戦うアメリカ人兵士だ。
そこではアメリカの戦争犯罪もきっちり描かれている。
たとえば、投降してきたナチス兵士を撃ち殺しているし、占領した街の女性を合意の上とはいえ、輪姦してもいるのだ。また汚い言葉を使って、敵を罵り、殺しまくってもいる。
そういった描写に対し、正直不快になったことは否定しない。
そしてそう感じるのは、極限下だからこそ生まれる人間の醜悪さを見るからなのだろう。
もちろん人である以上、相手に同情を覚えることはある。
ナチスは敵であるはずの若手兵士を見逃したし、若者だって、ナチスを殺すことは最初ためらった。
だが自分に襲いかかってくる敵である以上、何も考えず人は人を殺さざるをえないのである。
そんな主人公たちに対して、共感を覚えることは難しい。
実際、映画を観終わった後に残るのはカタルシスではない、ただの深い虚しさだ。
そういう点、この映画を嫌う人は一定数いるに違いない。
だがそこにあるのはまちがいなく、戦争の現実だ。
そしてそれゆえに、一つのメッセージをしっかり訴えている作品でもある。
そのため僕は、賞賛はしないまでも、本作を否定することは絶対にできそうにないのである。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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