だあれが殺したコック・ロビン?「それは私」とスズメが言った―。四月のニューヨーク、この有名な童謡の一節を模した不気味な殺人事件が勃発した。マザー・グース見立て殺人を示唆する手紙を送りつけてくる“僧正”の正体とは?史上類を見ない陰惨で冷酷な連続殺人に、心理学的手法で挑むファイロ・ヴァンス。江戸川乱歩が称讃し、後世に多大な影響を与えた至高の一品。
日暮雅通 訳
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
本格推理らしい作品である。
当たり前ではあるけれど、非常に緻密に事実を積み上げていっていて、殺人解決に至っており、この手の推理小説を久しぶりに読んだ分、よけいおもしろく感じられた。
マザーグースの童謡に元にしたと思われる殺人が発生する。その事件を捜査する一同だったが、次々と童謡に基づいた事件が発生して……という流れだ。
見立て殺人の古典だけあり、そうした理由は今ひとつ、最後まで納得いかないのだけど(理由は説明される)、ガジェットとしては申し分ない。
そうして少しずつ犯人は誰なのか、探り当てていくのだが、そこから次々と殺人が起こる過程はおもしろかった。
特に追及劇などは二転三転して、非常にドキドキさせられる。
これぞ本格推理のだいご味だ。
ヴァンスのラストの行動はどうかと思うのだけど、物語のおもしろさは最後まで光っている。
よくできた推理作品と感心するばかりである。
評価:★★★(満点は★★★★★)
そのほかのS・S・ヴァン・ダイン作品感想
『グリーン家殺人事件』
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます