茶々日和~まったりしましょ~

愛犬茶々(Mダックス・メス)とのまったりした暮らしと、趣味の観劇記です。よろしくお願いします。

ゴースト 中島京子

2018-04-11 08:44:01 | 読書・映画
久しぶりに、ちゃんと感想を残しておかなくてはと思う本に出会った。
中島京子さんの「ゴースト」。

7つの短編は、幽霊譚なんだけど単なる怪奇譚ではない。
どの物語にも「戦争」の影がつきまとう。
過去のものとして忘れ去られ、そして都合のいい時に、都合のいいように思い出される過去の記憶。

妖艶な第一話、「原宿の家」。
社宅の縁側で、カタカタ歌っていたミシンを思い出した第二話「ミシンの履歴」。
第三話の「きららの紙飛行機」は、ネグレクトされているきららと戦災孤児のケンタとが時空を超えて交流する物語。
私はこういう傷ましい物語はあまり好きではない。
できたら読みたくはなかった。
第四話「亡霊たち」、第五話「キャンプ」、第六話「廃墟」と、ちょっと重たい話が続き、最後に軽そうに見える「ゴースト・ライター」。
それまでとは趣の異なる「ゴースト・ライター」までたどり着くと、この短編集に込められている意図がはっきりしてくる。

何も言えないまま死んでいって、(都合が悪いから)誰にも思い出されず死んでいった「ゴースト」たちの声をすくい上げたのが、この短編集。
すくい上げていくのが、作家の仕事。

人によって、どの物語が心に残るか違ってくるだろうなと思う。
それは、その人の好みかもしれないし、生きてきた軌跡にもよるだろう。
だからこそ、若い人には、「亡霊たち」に出てくる千夏のように、「亡霊」が見えるようになってもらいたいなと思った。
私も、「好きじゃない」なんて言っていられない。(でも、いや。)

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