らぷんつぇる**

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『八日目の蝉』

2009年02月16日 23時51分43秒 | Books
かくたみつよ、ちょ。
ふりんの話です。
…はしょりすぎました。

*あらすじ*
あの人の赤ん坊を見るだけ。これで終わり。すべて終わりにする。
そう思って、浮気相手の留守宅に忍び込んだ希和子は、つい赤ん坊を抱き上げてしまう。
私はこの子を知っている。そしてこの子も私を知っている。
希和子は赤ん坊を家から連れ出すのだった―

名前は、薫。かつてあの人と決めた名前。
希和子は薫とともに全国を転々とする。
友人の家、名古屋の見ず知らずの女の家、エンゼルさんと呼ばれる女性を慕い女性ばかりで集団生活を送る「ホーム」、小豆島…。
そして、あの9月19日。

話は、恵理菜(薫)に続く。


きれいに練られた話です。
浮気の話とか、愛憎劇とか、あまり興味がないんだけど、この話は完成度が高いと思う。
赤ちゃん連れ去っちゃって、ほんとどーすんだよー!!ばかだなー!って思いながら、ドキドキしてました。
連れ去ってしまう方を軸にしても話として充分だけど、その後に連れ去られた方を軸にして話が進むところがなんとも読み応えが。
だって、生まれたばかりで父の愛人に連れ去られて4歳まで育てられた人生って、想像するだけでも…。
そりゃ、本人だけじゃなくて家族や周囲の人間にも大きな影響を与えずにいられないだろうな。

タイトルの『八日目の蝉』は、会話の中に出てきます。
「三日だか、七日だか、ちゃんとは知らないけどさ、ずうっと土の中にいたのに、生まれてきてそれっぽちで死んじゃうなんて、あんまりだって、私、子どものころ、思ったことがあるんだよね」
「でもね、大人になってからこう思うようになった。ほかのどの蝉も七日で死んじゃうんだったら、べつにかなしくないかって。だってみんな同じだもん。(中略)でも、もし、七日で死ぬって決まってるのに死ななかった蝉がいたとしたら、仲間はみんな死んじゃったのに自分だけ生き残っちゃったとしたら(中略)そのほうがかなしいよね」
…あとで、その考え方は恵理菜のなかですこしかわってくるのですが。

緑のきれいなころに生まれるねえ、っていうお医者さんのせりふと
小豆島に渡るフェリーで、恵理菜が島について語る言葉がだんだん島の言葉になっていくシーンがすき。

『対岸の彼女』より、絶対こっち。
というか、『対岸の彼女』はもすこし年をとってから読むべきかな。
角田光代を楽しめるのは女性の特権。
赤ちゃんを産める性って、不思議だなぁ。

*データ*
著者:角田光代
出版社:中央公論新社
定価:1600円+税
ISBN:978-4-12-003816-7