詩人PIKKIのひとこと日記&詩

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日本のメーデー100周年に寄せて(萩尾健太)

2020年05月02日 | 政治
http://www.labornetjp.org/news/2020/0501hagio
「これは地下の火だ。君たちに消すことなどできはしない。」
日本のメーデー100周年に寄せて 東京 萩尾健太(弁護士)

1 死刑囚の言葉
「虐げられた数百万の人々が、悲惨と貧窮の中で労苦している数百万の人々が救済を求めている運動、労働運動を、私たちを絞首刑にして踏みにじることができると思うなら、それが君たちの見解だというのなら、死刑にするがいい!

 ここで君たちは火花を踏みつぶしている。だが、あちこちで、君たちの背後で、君たちの眼前で、いたるところで、炎は燃え上がる。
 これは地下の火だ。君たちに消すことなどできはしない。」

これは、1886年5月4日のヘイマーケット事件(写真)で絞首刑とされた労働運動指導者・無政府主義者アウグスト=スパイスの死刑判決後の法廷陳述です。

2 8時間労働制の歴史
1880年代のアメリカでは、1日14~15時間労働が当たり前とされていました。当時の労働運動のスローガンは「第1の8時間は仕事のために、第2の8時間は休息のために、そして残りの8時間は、おれたちの好きなことのために」の実現でし
た。

 1886年5月1日、この厳しい労働条件を打破し「8時間労働制」を求めて、アメリカのシカゴを中心に約35万人の労働者がゼネストを決行しました。結果、18万人の労働者が経営者に「8時間労働制」を約束させました。しかし、このスト中の労働者4人が警官隊に殺害されました。それに抗議して、5月4日夜市内のヘイマーケット広場で集会が催されました。このとき、解散を命じる警官隊に爆弾が投ぜられて衝突がおこり,警官側死者7人を含む多数の死傷者が出ました。

 犯人不明のまま、警官殺害の共同謀議の罪で8人の労働組合指導者が裁判にかけられました。陪審員の評議の結果、4人が絞首刑、他の4名(うち1人は、獄中で自殺)が禁固刑となりました。冒頭の法廷陳述は、この裁判の時のものです。

 経営者側はこの裁判によって労働組合側を世論から孤立させ、8時間労働制の協約を次々に破棄しました。

 後に州知事はこの裁判が不当であったとして、禁固刑であった3名の指導者を解放しています。ヘイマーケット事件は大弾圧・謀略冤罪事件でした。

 アメリカの労働者は、この弾圧に屈したままではいませんでした。アウグスト=スパイスの言葉の通り、2年後の1888年、アメリカ労働総同盟(AFL)は1890年5月1日にふたたび「8時間労働制」を要求してゼネストを行なうことを決めました。1889年には、フランス大革命100周年としてパリにマルクス主義者が結
集して第二インターナショナル創立大会が開催されました。

そこでAFL会長ゴンパースは、弾圧事件の経験を踏まえて国際的な支援を求め、AFLのゼネスト実施に合わせて労働者の国際的連帯としてデモを行うことを要請しました。これが大会で決議され1890年5月1日が第1回の国際メーデーとなり、アメリカ、ヨーロッパ、中東欧、オーストラリア、ラテンアメリカなど世界各地で数十万の労働者が集会とデモをくりひろげました。

 まさに「海を隔てつ我らかいな結びゆく」(インターナショナル)が実現したのです。
 それは、ヘイマーケット事件の無政府主義者、AFLの労働組合主義者、第二インターナショナルのマルクス主義者、の党派を超えた連帯でもありました。

そして、アウグスト=スパイスが述べた「火花」は山河を越えて東進し、「イスクラ」(ロシア語で「火花」 ロシア社会民主労働党の機関紙の名)となって、第一次世界大戦の最中の1917年、人類史上初の社会主義革命を迎えるに至ります。革命ロシアでは8時間労働制が布告され、初めて国の法律として確立しました。

 さらに、第1次世界大戦後、戦争への反省と、社会主義を目指す国家が成立するという国際情勢の変化のもとで、1919年ILO(国際労働機関)が設立されました。ILOは「世界の平和及び協調が危うくされるほど大きな社会不安を起こすような不正、困窮及び窮乏を人民にもたらす労働条件を・・・改善することが急務」であるとして(憲章前文)、「1日8時間・週48時間」労働制を第1号条約に定め、国際的労働基準として確立しました。そして、1923年までにほぼヨーロッパ全土で8時間労働制が確立するに至ります。

 その波は日本にも押し寄せました。1920年5月2日に第1回のメーデー集会が行われ、およそ1万人の労働者が「八時間労働制の実施」を訴えました。そして、第2次戦争の惨禍の反省を踏ま1947年に労働基準法が制定され、8時間労働制が盛り込まれるに至ったのです。

このように、8時間労働制は、世界の数多くの先輩たちの命を賭けた闘いで勝ち取られてきたものであり、まさに「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(憲法97条)なのです。

 しかし、今再び、18世紀さながらに労働法制を「不自由な規制」と捉える新自由主義のもとで、共謀罪が導入され、労働者・労働組合への不当弾圧が増えてきているのです。
新型コロナ禍の困難な情勢ですが、先輩たちの闘いを引き継ぎ人権向上の歩みを進めましょう。



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