「四月がいちばん好きな季節」と
夕焼けに染まった橋の上で
きみがつぶやいたから
四月がぼくのいちばん好きな季節になった
溶け始めた雪の間から
きらり きらきらと
さらさらの川面が
また今年も顔をのぞかせる頃
「福寿草を採りに行こう」と父が呟く
残雪でまだらになった丘を
いくつもいくつも越え
風の橋をいくつも渡り
ああやっぱり今年も
同じ川のほとりから
頭をのぞかせている福寿草の蕾
「みてみて!」と
従姉妹の君が指差す先の森には
まるで踊り子たちみたいな片栗の群落が
風の中でひっそりとワルツの練習中