詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

晩夏

2010年09月02日 | 政治
雑草の踏み切りを渡ると
いまはもう微かな草いきれ
また夏が
なにひとつ傷跡を残すことなく
永遠の行方不明人みたいに逝ってしまった

いつの日にか
きみが手にしていた鬼灯の向こう側で
か細く風鈴が鳴っていた
あまりにも多くの
抜け殻ばかりを見すぎてきてしまったせいさと
ランボーの詩句を口ずさめば
一面の水溜りの上で蜻蛉と残照がダンスする

いつもの帰りの通い道で
大木に寄りかかりながら
きみの部屋に灯りがともるのを待っていた
ぼくの思い出にも
ふっと灯がともって

降るような蝉時雨のあとには
賭けるものがもうどこにもなかった
きみと別れて以来
空腹と涙以外のなにもかもが偽物だった

廃線のはてのふるさと

2010年09月02日 | 
別れにはいつも
波音やせせらぎの音があった
多くの細々とした川と
砂浜に囲まれたふるさと

砂丘へと吸い込まれてゆく
町のはずれの川のほとりで
初めて愛を告白した
断崖絶壁を見上げながら
海を覗き込む二人の影へと響いていた海鳴り

思い出せば いつも
一面のコスモスの野原を歩いてゆくぼくがいる
ほんとうの青空と呼びたいような 
群れ飛ぶ赤蜻蛉の夕空の下を

紙飛行機の行方を追いつづけ
「川だ! 川だ! 川だ・・」
そう叫び声をあげ続けていると
まるで別世界へと入ってゆけそうだった

長い長いぼくの影帽子にむかって
高く手をあげては 笑いながら
あの頃はまだ生きていた
きみがなにかを大声で叫んでいた