京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間「京の煙時間」

2019-06-24 09:30:14 | 時計修理

6月24日月曜日。北野天神市の前の日。
どうということのない一日の始まりです。

昨日は沖縄戦終結の記念日。6・23、8・6,8・9忘れてはいけない日。
アメリカ大統領は今週末大阪へやってくる。
終戦直前の大阪大空襲を知っているのでしょうか?煙となって消えた思い出にしてはいけないと思う。

工房を開けて11年たちました。贖罪の日々はまだまだ続きます。
大型時計販売店がいきなり全店閉店、会社が精算されたのが2007年でした。
お客様の支援で何とかアフターサービスを続けてこれた。
カルティエ、ブルガリ含む電池交換を1000円税込みの料金で続けてきました。ナウ存命!
当時は平均的な料金がいつの間にか「近所の商業施設が1500円に上がったよ!」とお客様が教えてくれる。
不思議に周辺から取り残された気分です。

「おばあちゃんの遺品時計の修理費用いくら?」の質問に3万円と回答します。するとお客はおしりに火が付いたように帰っていく。
追いかけるように「IWCの手巻きモデルですよ~!」「IWCって何?」「給料の二カ月分の時計です。」
商品価値をお金でしか伝えられないアイテムになった時計。世の中から取り残された気分。

先日四条通りを歩いていると不思議な臭いがした。
「はて~?どこかでかかわったなじみの香り。何だこりゃ~懐かしい」
数日後も同じ場所で同じ香りがしてのんびりした友人の顔を思い出す。なんと彼が吸っていたフランスタバコ・ゴロワーズの香りでした。
私が工房を開けるタイミングで禁煙に成功したので煙とは無縁になったことから香りもわすれていました。
タバコの世界から取り残された気分。 懐かしい5分間の会話時間だったがいつの間にか社会から追い出された。

「アラジンと魔法のランプ」
「なぜ妖怪がぽわっとランプから出てくるときは煙と一緒なの?」と聞かれたことがある。
昔のランプは煙が出たものなのだよ~。
「火のないところに煙は立たない」は死語になるまであと少しか?
昔子供のころランプのホヤ磨きと時計ゼンマイ巻き、五右衛門風呂の風呂焚きは私の仕事でした。
離島では22時過ぎると電気が消えるので島に一つだけの駐在所ではアルコールランプに切り替えます。
風呂にランプをもって入った。

ガラスのホヤはよく割れる消耗品。大量生産される底部分は磨きがかけられていないので危ない。
よくスパっと指先を切っていました。切り傷だらけの指をじっと見て石川啄木気分に浸ります。
「どうしてランプから煙が出るの?」の質問にしばし絶句。
ランプの世界から50年取り残されました。

「イソップ物語」
「アリとキリギリス」ではチェロ弾きは怠け者。
時計の仕事もチェロと同じ贅沢品でした。贅沢に遊んでいるといつかはひどい目にあうぞ~の役目で一般人には縁がないアイテムでした。
パティック・フィリップ先代の社長はボート競技のスイストップクラスの選手。奥さんは犬ぞりレースヨーロッパチャンピオン。
彼らを代表に当時の時計屋さんたちはそれぞれ趣味をもって人生を謳歌していました。
今は冬の季節。
時計もチェロも見向きもされないアイテムに替わったか?
働き方改革では日本人はずべからくダブルワーク、トリプルワークでアリのように働くのだ。

今日も7時まで営業しています。
11年前に煙のように始まった工房。
そのうちに昔のオヤジたちの左腕に何かぶら下がっていたような記憶を思い出すでしょう。
今日も勝ち目のない時間の流れとの闘いで頑張るのじゃ~。









コメント
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