春の憂い

2010年03月22日 16時26分00秒 | B地点 おむ

 

 

なんだか元気が出ないや
川岸に降りるのも面倒な気がする
ここから動きたくない
桜が咲き始めて三日め
ここからもよく見える
一分咲きってとこかな
とっても綺麗だけど
愉快に浮かれる気分じゃないよ
咲いた時は嬉しかったけど
今はなぜか悲しい
美しいものって、悲しみを誘うよね
今日は不思議な日だ
カモさん達が、やたらと岸に上がってくる
恋の季節だしね
楽しそうに走り回ってる
でも僕は、そんな気分じゃないんだ
「おむさん、どうしたんだろう?」
「今日はずっと、あそこにいるよ」
「体調でも悪いのかな……?」
「おかか先生に相談してみよう」
「それっ」
「ねえねえ、おかか先生」
「先生ってば」

「ん? どうした?」
「何? おむの奴が、ふさぎ込んでる?」
「う~ん」
「解るような気がするな」
「春の憂い、ってやつだろう」
やがて、日が暮れてきました。
けれど、おむさんは、塀の上から動きませんでした。

―― こういうことが、時々、あるのです。


※ほぼ実話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


花見でありがちなこと

2010年03月21日 15時32分00秒 | B地点 おかか

 

 

桜の花が、どんどん開く。
「いいお天気ですね~!」
「どうだ、花見でもやるか?」
「わ~い!」

ひょい
おむさんは、久し振りに「社長のイス」に乗ったのだった。
「へへっ。ここは特等席ですよ」
「う~ん、綺麗だなあ!」
「ふふふ。おい、そこにビールがあるだろ?」
「ビール?」
「あっ、これですか?」
「猫にビールは、よくないですよ……」
「な~に。ほんのちょっとだけさ」
などと言いながら、おかか先生は、しこたま飲んでしまったのだった。
「……う~い」
「ひっく!」
「酔ってきた~」
ぐるぐる ぐるぐる
「あああ、眼が回る~」
「うぐぐ、苦しい……」
「おえっ」
「悪酔いした~」
「おえおえ~っ」
「も、もうだめだ」
「うぐぐ……」
「言わんこっちゃない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


暴風の翌日

2010年03月21日 14時21分00秒 | G地点 ミーコ

 

 

ミーコさんが、やって来た。
すたすた
「昨夜の風は、凄かったわねえ」
「記録的な暴風だったそうじゃないの」
「このあたりでも、被害があったのよ」
「ほら、門扉が壊れて、倒れてる」
「桜の枝も、折れてしまったわ」
「可哀想な、桜の枝……」
「この幹のように太ければ、折れずに済んだのに」
「折れなければ、蕾を膨らませて」
「やがて花を咲かせることも、できたでしょうに」
「可哀想な、桜の枝……」
「せめてあたしが、遊んであげましょう」