本日の売り上げ

2011年07月31日 16時02分41秒 | B地点 おむ

 

 

喫茶店に行こう 8杯目

 
おかか先生とおむさんの、喫茶店である。

おかか先生がマスター、おむさんがウエイター。
今日は、マスターが出掛けているので、おむさんが一人で店番をしている。
そこへ、お客がやってきた。ゆうちゃんである。

「アイスコーヒー下さい」
「いらっしゃいませ。アイスコーヒーですね!」
「お待たせしました」
よく冷えた、とてもおいしいコーヒーだった。
「ごちそうさま~。さて、そろそろ帰ろうかな」
「では、お会計を」
「おいしかったから、お金よりもいいもので払うよ!」
「え? お金よりもいいもの……?」
ゆうちゃんはお金の代わりに、四つ葉のクローバーを置いていった ―― 。
やがて、マスターが戻ってきた。

「どうだ? 客は来たか? 売り上げは?」
「な、何っ!? これが今日の売り上げだと?」
「おいっ、どういうことだ!? 金を受け取らなかったのか?」
「このほうが、お金よりも価値があるでしょ?」
「おいおい! そんなもん、ただの葉っぱじゃないか!」

「ぼ、僕は、先生が喜ぶと思って……」
「ふざけるな! 喫茶店経営は、そんな甘いもんじゃないぞ!」

「ご、ごめんなさい……」 
「でも、せっかくの四つ葉ですから、先生に差し上げますよ」
「いらん! そんな葉っぱなんぞ、お前の頭にでも載せとけ!」

「は、はい……」
「あ~あ。叱られちゃった……」
「がっかりだなあ……」
マスターは、いつまでもぷりぷり怒っていた。
おむさんは、すっかり気落ちしてしまった。
ところが ――

たまたま通り掛かった旅人が、おむさんを膝に載せて、慰めてくれた。
おむさんは、すっかり気分が良くなった。
しかも ―― 旅人は、四つ葉のクローバーを、五万円で買ってくれたのである。
「ご、五万円で売れただと!?」
「そうですよ~。全部、僕のものですよ~」
「ちょ、ちょっとでいいから分けてくれよ……」
「は~っはっは~! 今さら遅いですよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


なめるなよ!

2011年07月30日 17時01分39秒 | B地点 おかか

 

 

名探偵ホおむズ 事件簿031

 
すたすた
「おや、これはこれは。ワトソン博士じゃないか」
「むっ!? き、貴様は、怪盗ルパン!」
「ホおむズは元気か? 君達はまだ私を逮捕できないのかね。ふふふ」
「ふ、ふん! 必ず捕まえてやる!」
「そいつはどうかな? 証拠がなくては、どうしようもないだろう」
「や、やかましいわっ! すぐに証拠をつかんでやる!」
ザッ

「なめるなよ!」
「この私が、簡単に尻尾を出すと思うか!」
「うるさい! ちょっと尻を見せてみろ!」
「……あ? 尻を見せろだと?」
「いいから尻を見せろっ」

「ど、どうするつもりだ!?」
べろん
「な、なめるなよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


なかなおり・あまやどり

2011年07月29日 17時24分17秒 | B地点 おむ

 

 

よっちゃんとケンカをしてしまった
よっちゃんは、口をきいてくれない
僕も口をききたくないけど

でも、謝って、仲直りしようかな……
「……」
ぷいっ
「……ちぇっ」
「……」
「……」
そのうちに、雨が降ってきた
たいした降りではないけれど
僕たちのいつもの場所は

やがてしっとりと濡れてしまった
こんな時、僕はここで雨宿りする
ここだけ、桜の葉が茂っているんだ

ちょっとした雨なら、ここで凌げるんだよ
そして ―― よっちゃんが、急にやってきた
僕はちょっと慌ててしまった
よっちゃんも、雨宿りしたいらしい
でも、雨宿りは、むしろ口実で
よっちゃんは、僕と仲直りしたいんだ
その気持は、よく分かったけど

僕は何も言えなかった
結局、僕たちは、この日いちにち、口をきかなかった

でも ―― こんな風に雨宿りしたんだ
雨が降って、よかったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ついうっかり

2011年07月28日 15時58分39秒 | B地点 その他

 

 

オムイ外伝 第六部(驚天動地篇) 第9話

 

「ええ~い! まだオムイを倒せぬのか?」

「も、申し訳も御座いませぬ」
「たわけがッ!」
「どうかお許しを……」
「オムイの処分、この私にお任せ下さい」
「おぬしが? 如何なる手を使うつもりか?」
「ふッふッふ……毒を用います……」
「ふ~む、毒術か! いけるかもしれんな」
「オムイが好む木の枝に、猛毒をたっぷり塗っておきました……」
「で、オムイがスリスリすれば、毒が回るというわけだな!」
「御意!」
「オムイが、このように」
「この枝で、スリスリすれば……」

スリスリ
「あッ、おい!? 毒が塗ってあるんだろ!?」
「しまッた! ぐはーーーッ!」

← 毒が回った
ガクッ
「たわけが……」