二つの明暗

2010年03月14日 17時59分00秒 | B地点 寄り目ちゃん

 

 

「まぶしい~っ!」
「こりゃもう春の陽射しだな」
「背中が熱いくらいだ」
「ふと見れば」
「可憐な花も咲いているし」
「春が来たんだなあ」
「あ~、いい気分だ」

ごろごろ
「……ん? だんだんに日が翳ってきたぞ」
「向こう岸は明るいのに、こっちは暗い……」
「川のこっち側は、陽当たりが悪いからなあ」
「ま、しょうがない。ぼちぼち夕方だしな」
「リュックにでも乗るか」
「うん、極楽、極楽」
「ふふ。おかか先生、リュックですか」
「日暮れ時は、まだまだ寒いですからねえ」
「僕も、カメラのお兄さんの膝に乗ろう」
「うん、極楽、極楽」
「……うらやましいなあ」
「僕は、カメラのお兄さんって、ちょっと苦手なんだ」
「ああ日が暮れる。寒くなってきたよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


名探偵の誤算

2010年03月14日 17時48分00秒 | B地点 寄り目ちゃん

 

 

名探偵ホおむズ 事件簿004



ロンドンにも、春が来た。

ワトソンは、穏やかな気持で、テムズ河の水面を眺めていた。
うららかな光景である。
だが、水の底に、おぞましいものが……!

「ああっ!? ザリガニが死んでる!」
「殺しだ! ザリガニの惨殺死体だ!」
「えらいこっちゃ! ホおむズに知らせなきゃ!」
「何っ! ザリガニが何者かに喰い殺された?」
「う~む! 久々の凶悪犯罪だ」
「これほど恐ろしい事件を起こすのは……」

「あの男に違いないっ!」

「あの男」とは……そう、ホおむズの宿敵、モリアーティ教授である。
ロンドンを揺るがす凶悪事件のほとんどは、モリアーティ教授が裏で糸を引いているという。
ホおむズは、たちどころに、教授の隠れ家を捜し当てた。
「久し振りだな、モリアーティ!」

「むっ!? ホおむズ!」
「ザリガニを喰い殺したのは貴様だろう!」

「な、何をいきなり?」
「さっさと吐け! 貴様が犯人だっ!」

「り、理不尽なっ」
「証拠でもあるのか、おい?」
「しょ、証拠?」
「証拠は……」
「何もない……」

「ふん。笑わせるな。それでも探偵か」
「いや、証拠はある!」
「貴様の口から、ザリガニの匂いがするはずだ!」

「じゃあ嗅いでみろっ」
くんくん くんくん
「おかしい……。匂いがしない……」
「ふん。私は無実だ。墜ちたな、ホおむズ」
「おい、ホおむズ! 防犯カメラの映像が見付かったぞ!」
「な、何っ!」
防犯カメラの映像である。
殺害の様子が、はっきり映っている。
犯人は、サギであった。
ホおむズ、痛恨の黒星である。

しょんぼり
ホおむズは、肩を震わせて泣いた。

「うっ、うううっ……」
「何で19世紀に防犯カメラがあるんだ……」

しくしく