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僕は今、いつもとは違う場所にいる。 |
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いつもの場所は、草刈り中なんだ。 |
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今ちょうど、刈り取った草をクレーンで吊り上げる作業をしている。 |
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だから僕は、ここに避難しているんだよ。 |
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「避難だと? ふふふ。怖いのか?」 |
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「人間は怖くありません。クレーンの音が怖いんです」 |
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「クレーンの音が怖い?」 「そうです。猫は、大きな音に敏感ですからね」 |
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「はははは! 笑わせるな!」 |
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「たかが音じゃないか。私は、大きな音なんか怖くないぞ」 |
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「……へえ? 本当ですか?」 |
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「ふふふ。本当だとも」 |
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「……」 |
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「わ~~~っ!」 |
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「うひゃっ!?」 |
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「どうです? 怖かったでしょう」 |
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「……」 |
オムイ外伝 第六部(驚天動地篇) 第14話 |
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抜け忍オムイは、病んでいた……。 |
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眼の病である。 |
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右の眼から、粘りけのある涙が出てしまうのだ。
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「おい、オムイ! 具合はどうだ? 大事ないか?」 |
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「むッ!? 追忍かッ!」 |
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「まあ落ち着け。武士の情けで、薬を持って来たのだ」 |
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「薬だと……?」 |
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「これだよ。眼軟膏だ。さあ、さっそく使うがいい」 |
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「か、かたじけない……」 ぬりぬり |
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「……うむ、効きそうだ。礼を言うぞ!」 |
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「な~に。敵に塩を送るというやつさ。礼には及ばん」 |
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「いやいや……恩には、恩をもって報いたい」 |
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「そうだ! 礼として、秘伝の忍薬をお前にやろう」 |
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「秘伝の忍薬……?」 |
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「これだ! 美男子になれる薬だ!」 |
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「な、何ッ!? 美男子になれるとなッ!?」 がばっ |
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「さ、この薬を、顔に塗るがいい」 |
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「か、かたじけないッ……!」 ぬりぬり |
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だがこれは、オムイの非情なワナだった……。 「ぐはッ!」 |
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「ふッふッふ。効いてきたようだな……」 |
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「うわッ! か、顔が!」 ぶるぶるぶるぶる |
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「その薬を塗ると、顔が崩れてしまうのだ!」 |
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「ぐはあああーーーッ」 |