とにかく事件だ

2010年03月08日 16時55分00秒 | B地点 おむ

 

 

19世紀末。

霧の都、ロンドン ―― 。

ベーカー・ストリートの、とある下宿屋で、二人の男が、共同生活をしていた。

この男の名は、シャーロック・ホおむズ

どんな難事件もたちどころに解決してしまう、私立探偵である。
こちらの男は、ジョン・オカカ・ワトソン
生業は医師だが、ホおむズの助手であり、親友である。
さて、この二人 ―― このところ全く事件が起きないので、退屈しきっていた。
「あ~あ、退屈だな~」

すたすた
「さっぱり事件が起きないから、つまらん」
「そもそも、ホおむズが悪人どもを一掃しちゃったからいけないんだ」
「ホおむズの、あほ~っ」
「あ~あ。ヒマだな~」

ぶつぶつ ぶつぶつ
無聊をかこつ親友ワトソンの後ろ姿を、ホおむズは、じっと見ていた。
そして、ホおむズは、考えた。
ホおむズは、ワトソンの背後から、そっと忍び寄り、
いきなり、殴りつけた。

ボカッ
「な、何をするっ!?」

「ワトソン! 事件発生だ!」
「事件だと?」

「うむ! ワトソン殴打事件!」
「あ、あほかっ!? お前が犯人だ~っ!」
「まったくもう……探偵が事件を起こしてどうする」

「うるさい。行くぞ、ワトソン!」
「行くって……どこへ行くんだ?」
「おいおい、待てよ……」

ホおむズの不思議な魅力に惹かれ、結局はついてゆく、ワトソンであった。