川の字(後編)

2008年11月22日 13時33分00秒 | B地点 おむ

 

承前


「そういう演技は苦手なんですよ。困ったなあ、う~ん」

「そう言わずに、やってやれよ。あの子のために」

「……よ~し、やるか!」

「そうこなくちゃ」
「ほ~ら、向こうからパパが来ますよ~」

「えっ、パパ!?」
「おーいパパだぞ~。ちゃんとおヒゲもあるだろ~」
「パ、パパ~!」
「寂しがらせてごめんな~」

「わ~い、パパ~♪」
「よかったわね、パパが来てくれて」

「うん」

「よしよし、いい子だな」
こうして、いわゆる「川の字」が、遂に完成したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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効果が現れテイル

2008年11月22日 13時32分00秒 | B地点 その他

 

あの子の体調は、必ずしも万全ではないようだ。そこで私は、得意のツボ押しをやってみることにした。
「元気になるツボを押してあげるからね~」
「ツボはね、ここにあるんだよ~」
ぐぐっ

しっぽピーン!

「おおっ、効いた!」

バシッ

「痛てッ!」

「ま、まあ、これだけ元気があれば大丈夫だろ」

「もうすぐボランティアさんが迎えに来てくれるからね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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優しく抱く

2008年11月22日 13時12分00秒 | B地点 おむ

 

「どこへ行くんだい?」

「お水飲みに」
「気をつけるんだよ」

「うん」
「さあ、飲もう」
「おいしいなあ」
「あっ、あれは何!?」
「怖いよう!」
「どうしたんだい?」

「怖いよう……」
「大丈夫だよ、あれは鳥さんだよ」

「鳥さん?」
「怖くないんだよ」

「うん、もう怖くないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


川の字(前編)

2008年11月22日 13時11分00秒 | B地点 おかか

 

おかか先生は、半ばヤケクソで、今日も仔猫の母親役を務めていた。

「ほ~ら、ママですよ~」

ちゅっ

「パパ……」

「えっ!? 何だって?」
「パパ~」

「そ、そうか、今度はパパが欲しいのかい?」
「パパ~!」

「……あいつに頼むしかないな」
スタスタ
「頼みがあるんだが……あの子のために、」

「パパの役をやってくれないか」

「ええーッ!?」

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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同じ夢

2008年11月22日 12時46分00秒 | B地点 おむ

 

或る所から、おむが現れた
やがて、同じ所から、
あの子も姿を現した
昨夜はどこで寝たのだろう
おむと一緒に居たのだろうか
おむが移動すると、
この子も付いていく

昨夜二匹は、寄り添い温め合って眠ったに違いない
そして、一緒に同じ夢を見たのだ……
私はそう信じている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


日だまり

2008年11月22日 11時08分00秒 | B地点 おかか

 

「なんだ若造、一体どうした? こんなに早く?」
「ま、話は後だ。ここは寒くてかなわん。移動しよう」
「こっちだ」
「ほら、ここだ」
「どうだ、ここだけ光がよく当たるだろ。日だまりってやつさ。体がぽかぽか暖かくなるんだよ」
「で、何の話だ? ああ、あの仔猫か!」
「あの子は、今ここにはいないよ。おむの奴と一緒じゃないかな」
「あの子もどうなるか……。生きて欲しいな、日だまりで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ママは誰?

2008年11月21日 15時23分00秒 | B地点 おかか

 

「ママ~」
「あ~こらこら、危ないよ」
「だめだよ、落ちたらケガするだろ」

「ママ!」
「違うよ。私はママじゃないんだよっ!」

「マ、ママ……」
「ママ」

「違うってば。本当のママの所へお帰り」
「ママ~」

「何度言ったらわかるんだい。私はママじゃないよ」
「ママ~!」
「ママァ~~~ッ!!」
「ん~、しょうがないなあ……」
「え~い、もうヤケだ! ほ~ら、私がママだよ~」
ちゅっ
「マ、ママ~♪」
「やれやれ」

「ママ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ママいずこ

2008年11月21日 14時42分00秒 | B地点 その他

 

(あっ、昨日のあの子だ)
(うわあっ、危ないよ)
「おい、大丈夫かい。どこから来たの?」

「ごはん~」
「君は男の子? それとも女の子?」

「ごはん~」
「ちぇっ、聞いちゃいねえ」

「ごはん~」
「あっ、食べ終わったの?」

「ママ~」
「ええっ!? 僕はママじゃないよ!」

「ママ~」
「参ったなあ……」

「ママはどこ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一夜明けて

2008年11月21日 14時35分00秒 | B地点 その他

 

昨日の仔猫は、おむさんやおかか先生と、仲良くなっていた。
現地では、猫ボランティアさんを始めとして、地域の人達が数名集まっており、給餌がなされ、そして、この仔猫についての話し合いが行われていた。
おむさんがタジタジとなる場面も(笑)。
これはひどいピンボケだが、いい画なので敢えて掲載する。
私がこれまで野良猫を観察してきた限りでは、新参者が仔猫であれば、集団から排除されることは余りない。若い世代を育てて「種」を保存していく、という本能的なものが根底にあるのかもしれない。(「種」ではなく「遺伝子」こそが保存されるべきものであるならば、この点はどう説明されるのだろう。)
まさにちょうどこの場所にキジトラ兄弟が捨てられた時のことを、私は思い出さずにはいられない。その時も、おむさんとおかか先生は、仔猫達を優しく見守っていたのであった。
この仔猫を見ていると、なんとしてでも生き抜こうという強い意志が感じられる。
中々いいスリーショットが撮れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


いとけなき闖入者

2008年11月20日 15時13分00秒 | B地点 その他

 

「ん? ……鳴いてる! 聴こえるでしょ、先生?」
「うむ……。私達のテリトリーに、誰か入ってきたようだな」
「こっちだ」
「あそこだ!」
「あれっ、まだ子供じゃないか」
「可愛いなあ」
「寒いのかな、ひもじいのかな」
「大丈夫かなあ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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黄金の絨毯

2008年11月19日 15時15分00秒 | B地点 おむ

 

金の じゅうたん
とても ぜいたく
色が 変わるよ
魔法の じゅうたん

さあ 日が暮れる

ねぐらに 帰ろう

あの日と 同じ

この道 通って

 

 

3枚目は2008年04月25日撮影。「魔法のじゅうたん」を参照。
7枚目は2008年04月02日撮影。「去年と同じ」を参照。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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マスターは映画好き

2008年11月18日 12時53分00秒 | B地点 おむ

 

「オヤジ、今日はふわふわ毛玉ヌーヴォーの解禁日だったな? 一つくれ」


※11月の第三木曜は、ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日です

「へい、お待ち」

「む……いける! まったりとして、それでいて、しつこくない」

「気に入ったぞ。おいオヤジ、おかわり四つ!」

ビシッ
「二つで充分ですよ」
「下ネタはやめんかあああ!」
「わっ!? す、すいませんお客さん! あたしゃ映画好きなもんで、つい! ほんの冗談です! わかって下さいよっ」
「そういう冗談は苦手だ。もう帰る」

「あっ、お帰りですか? じゃ、どうか『第三の男』みたいに」

「あーだめだ、逆方向に帰っちゃったよ」


※意味がわからない人は『ブレードランナー』の冒頭と『第三の男』のラストを思い出しましょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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上部消化管内視鏡検査(後編)

2008年11月18日 12時49分00秒 | B地点 おむ

 

(承前)


「お、おい! なんとかしてくれっ!」

「……こうなったらもう、お腹をドーンと押して出すしかありませんね」
「なにっ!? ちょ、ちょっと待て」
ばっ
「やめろおおおおお!」
ぶわーっ
ドーン

「げはーーーッ!」

「ほら出た」

「めでたしめでたしですね、先生」

「どこがめでたいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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