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「すっかり暗くなったなあ」
「ええ、日が短くなりましたねえ」 |
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「街灯の光ってのは、なんとも物淋しいな」
「そうですね」 |
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「それに比べて、ほら、家の明かりは、とっても暖かい感じがします」 |
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「あの光の一つ一つに、それぞれの生活があるんですね」
「うむ」 |
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「ねえ先生、どこかの家で、あの光に包まれて、暮らしたいと思いませんか」
「……いや、そういう問いを立てること自体が、恐らく無意味なのさ」 |
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「私達は今ここに居る。それ以上のことも、それ以下のことも、たいして意味が無いのさ」 |
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「それでいいじゃないか」 |
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「……はい」 |