明かり

2008年11月06日 17時24分00秒 | B地点 おむ

 

「すっかり暗くなったなあ」

「ええ、日が短くなりましたねえ」

「街灯の光ってのは、なんとも物淋しいな」

「そうですね」
「それに比べて、ほら、家の明かりは、とっても暖かい感じがします」
「あの光の一つ一つに、それぞれの生活があるんですね」

「うむ」
「ねえ先生、どこかの家で、あの光に包まれて、暮らしたいと思いませんか」

「……いや、そういう問いを立てること自体が、恐らく無意味なのさ」
「私達は今ここに居る。それ以上のことも、それ以下のことも、たいして意味が無いのさ」
「それでいいじゃないか」
「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


川面に映る灯

2008年11月06日 17時03分00秒 | B地点 おかか

 

日が暮れる。

黄昏時 ―― 。
ひとの姿の見分け難いこの時間を、古くは「誰そ彼(たそかれ)時」と称した。

或いはまた、「逢魔(おうま)が時」とも。

昼と夜との間には、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界へと通ずる裂け目が開けるのか。

川面に映る対岸の灯も、どこか現実離れしている。

夢幻の彼方に惹き入れられそうな気がする。

水を飲んでいる内にも、辺りは暮色蒼然。
現世の時間とは違う、何か別の時間の中に、迷い込んでしまいそうだ。