温泉にゃんこのネコ散歩

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東山魁夷という人

2004-11-16 21:34:46 | 文学の話
大好きな日本画家、東山魁夷画伯について書かれた本を2冊同時に読んだ。
・「素顔の芸術家 東山魁夷 大いなる自然への祈り」佐々木徹著 ピジョン企画出版社
・「感動 人間・東山魁夷」村上通哉著 日本経済新聞社

前者は、東山画伯の足跡を、夫人の東山すみさん監修のもと、多彩な絵や写真をまじえて綴っている。その繊細さゆえにひとりの時間を過ごした幼少期、けして幸せを感じさせてくれたと言えない家族への深い優しさと献身、「私は生かされている」という謙虚な思いで山河を彷徨した大成期前、真摯な思いにあふれる唐招提寺御影堂の障壁画…など、透明な人、東山画伯の一生をただ坦々と語っている。その一節…

~ いつも月の光にみちびかれていた。1967年9月、東山魁夷はスケッチのため京都に来ていた。ついでに足を伸ばして奈良をおとずれた。たまたまその夜が、唐招提寺の観月会だとわかった。着いてみると夕方まで降っていた雨も上がり、灯りの消された境内を仲秋の月が照らした。金堂の扉が開かれ、三体の仏像が浮かび上がった。三年後の12月、唐招提寺御影堂の障壁画について打診があった。名月の夜の荘厳で清浄な光景がよみがえった。魁夷の心は大きく動いた ~

というくだりが印象に残った。この方は、自然と一体化して生かされていたのだとあらためて感じた。

後者は、ひょんなことから東山魁夷画伯と深い縁が繋がった九州の中学校教師が書いた作品だ。この本では、東山画伯の人間としての透明さ、真摯な姿、あたたかさ、心の深さ、謙虚さを知ることができる。九州の田舎の中学生にさえ礼を尽くす画伯の姿勢に、真の美の巨人の本当の凄さを感じた。この本の表紙は、にゃんこの一番好きな「花明り」という作品で装丁されている。円山公園の満開の紅枝垂れを照らす満月…画伯は間違いなくこの光景にめぐり合ったのだろう。

前者の表紙は、冬枯れの森でスケッチをする画伯のまっすぐな視線が写し出されている。静かで澄み切った目が、心の清らかさと強さを物語っている。心が押しつぶされるような時、東山画伯のひたすらに清らかな画をみたくなる。

大いなる自然への祈り→
http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31320930
感動 人間・東山魁夷→
http://www.nikkei-bookdirect.com/art/item.php?did=16440
長野県信濃美術館・東山魁夷館→
http://shinshu-online.ne.jp/museum/shinano/