温泉にゃんこのネコ散歩

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俵万智の小諸

2005-04-29 20:29:13 | 旅のあれこれ
俵万智さんの歌が好きだ。特に「チョコレート革命」は、いつも身近に置いて、何かあるたびに読み返している。その中の、-もどり橋まで-という章は、小諸での歌が記されている。彼女はこの町で、どんな時間を過ごしたのだろうか?切ない思いが伝わってくるこの中で、心に残る作品を何点か…。


  雲厚き小諸の空や捨てきれぬ 思い抱えて「もどり橋」まで

  はじまりもおわりも見えぬ千曲川 どこまで続いていくのかこの恋

  片恋の見え隠れするような道、 坂道多き町なり小諸

  泡のごとリンゴを浮かべていたるかな 谷間の小さき温泉宿は

  ひき返すことのできない心もて 仰ぐ浅間は決意のかたち


俵万智HP→http://gtpweb.net/twr/


今日、庭の牡丹が咲いた。艶やかで儚い花、強くて脆い…。

にゃんこin小諸4

2005-04-28 20:58:14 | 旅のあれこれ
この中吉さんのお店の前を通るのが「北国街道」。昔は、交通や文化の要だった場所だ。高濱虚子記念館もこの道沿いにある。駐車場から見上げた入り口には、梅が咲き誇っている。何度も訪れているが、また入ろうかなぁ?と思い近くまで行ったが、土曜のせいか中から多くの人の声が聞こえる。せっかくなら静かな中で書や句を感じたいので、入るのはまた今度にしてそのまま駅方面に向かった。景観条例が施行され、この街道沿いも徐々に情緒漂う風情になってきている。各お店の屋号を書いた木の看板がなかなか素敵だ。

通り沿いに、なにやら気になる場所を発見!寄り込んでみる。「商人館・よってけや」と名付けられたお店では、昔の北国街道の賑わいを写した写真を展示中だった。その隆盛振りを見ると、「中吉」のご主人のおっしゃったこともよくわかる。他に、旧い看板やお店の備品などもあって楽しい。ひとりでお留守番をしているおばちゃんが、
「よかったら、お茶あがっていって下さい」
と言って、お茶とお菓子を持ってきてくれた。
「小諸大好きで、よく来るんですよ。いいですよね、こういう落ち着いた感じ」
「でもね、新幹線がとまらなかったせいで、こんなに寂しくなっちゃってね。今は、懐古園くらいしか知られていないから…。でも歩いてもらえば、けっこういいところがいっぱいあるんですけどね。そういうものを感じてくれる人が、来てくれると嬉しいですよ」
押し花のしおりと「千曲川旅情」や「信濃の国」の歌のプリントまでいただいてしまった。こういうところで、地元の方とゆっくりお話できると、よりその場所に親近感を感じられていいよね(^^ 小諸の町は、古きよき時代の香りがそこここに残っている。藤村や虚子の足跡もあるし、浅間ゆかりの作品を集めた美術館もある。そう言えば、大好きな俵万智もこの町に縁があり、「チョコレート革命」の中に多くの歌を残している。この町の良さをもっと多くの人に知ってもらいたいと思いつつ、お店を出て駅に向かった。

GWの最終日、5月8日が浅間山の山開きだ。小諸の殿も友人の一家もこの日は浅間山に登る。
「今年はどうする?一緒に登るかい?」
と、殿が言ってくれたが、どうも人が多いところが苦手なので、
「また静かに登れる山閉めにうかがえたらと思います」
「そうだね、人が多いのダメだって言ってたもんな。またブラッと来ればいいや。都合が合えば、黒斑からの道も案内するから」
と言って下さる。埼玉で生まれずっとその地で暮らしている私にとって、小諸は第二の故郷のような場所だ。そんな場所があることに感謝して、ずっとこのご縁が続くことを願っている。(おしまい・軽井沢編につづく)

小諸→http://www.kanko.komoro.org/


にゃんこin小諸3

2005-04-27 19:54:08 | 旅のあれこれ
懐古園を出て向かったのは、駅から徒歩15分ほどの「中吉(なかきち)」というお店。殿のおうちのある高濱虚子記念館のはす向かいだ。にゃんこの好きなTV番組に、土曜の18時から始まる「人生の楽園」というのがある。ある日それを何気なく見ていたら、その日は小諸が舞台。古くからの町家を、お食事処として始めたご夫妻の姿を追っていた。
「おお!小諸にこんな素敵なお店ができたんだ。今度行ってみよう」
とメモを取っていたら、画面には小諸の殿と友人の母の姿が映し出された(^^; このお店、どっちの家からも至近距離だもんね。後から聞いたら、映ったのは一瞬だったがカメラはかなり長時間回していたそうだ。

今日は念願叶って初めての訪問。殿があらかじめ電話しておいてくれたので、お席の確保もできている。ランチの中から、限定10食の「蓼科牛と旬の野菜のせいろ蒸し」を注文。出来上がるまで、奥や2階のお部屋を見せていただく。とてもお洒落になっているが、いたるところに古くから使い込まれた味のある場所を見出せる。階段下の引き出しの付いた階段箪笥も、今では滅多に見られない物だ。格子の窓越しに見る北国街道の風景は、一味違ったいにしえの香りがする。大好きな水菜を使ったサラダの後に、ホカホカの大きなせいろが運ばれてきた。色とりどりのお野菜と綺麗な蓼科牛が湯気を上げている。ちょっぴりポン酢に付けて食べると、素材の味が口いっぱいに広がった。ちょびっと添えられた、花豆おこわも絶品だ。お味噌汁もご飯も美味しい!そう言えば、毎年年末に送ってくれる殿の自家製味噌も、素晴らしく美味しいもんなぁ~。素敵な空間を楽しみながら、ゆっくり堪能していると、ご主人が食後にホットイチゴジュースをサービスで出してくれた。軽井沢のジャムの「沢屋」の苺シロップをお湯で割ったそうだ。こういう発想は無かったが、あたたかいジュースも美味しいものだ。

他のお客さんも帰ったので、シャイなご主人もポツポツといろんなことをお話して下さった。このジャムの沢屋も、元は小諸の薬屋さんと関係があるとか、ここの「中吉」さんも、昔は紙などを扱っていた奉公人がたくさんいる大店だったなど…。その当時の、人がたくさん出入りする活気を少しでも取り戻したくて、このお店を始める決心をしたという。先祖が残したものを後世に伝えていきたいという気持ちはとてもよくわかるし、大事にして欲しいと思う。今、都会で流行の「和風レトロモダン」というスタイルだが、その場しのぎでそれっぽく作り込んだものと、こういう本物に手を加えて作り上げたものでは、その中に漂う「気」の重さや香りが全く違う。古い物を残していくには新しく作る以上の手間がかかるだろうが、一度壊してしまったらもう二度と作ることはできないので、ぜひチャレンジし続けていただきたいと願う。贅沢で豊かな時間を過ごし、再訪を約束してお店を後にし北国街道を歩き始めた。(つづく)

中吉→http://www.nakakichi.com/



ミューズに溺れて…

2005-04-27 00:04:16 | 音楽の話
旅の話の中休みに、ちと音楽の話など…。今日は久しぶりの平日休み。彩の国さいたま芸術劇場である川井郁子さんのコンサートに行ってきた。この劇場、蜷川作品をやったり通好みの音楽家を呼んだりして、中規模ながら埼玉の芸術の要となっている。造りもとてもお洒落で、去年放送されたTVドラマの「砂の器」の撮影場所にもなったほどだ。特に音楽ホールは、中世の雰囲気でとても素敵な空間だ。

アルゼンチンタンゴの中でもピアソラの曲が大好きなにゃんこ、バンドネオンでは小松亮太、バイオリンではこの川井郁子がピアソラの魂を伝えられる演奏者だと思っている。藝大出の才媛でありながら、その美貌とテクニックと華やかさ…天は彼女にはいくつもの物を与えているんだなぁとため息が出る。華奢でしなやかな指、遠くを見る濡れた瞳、心持ち開いた口元、リズムを取る腰骨の妖しさ…彼女はバイオリンを全身全霊で奏でる。

クラッシックも見事に弾きこなすが、やはりピアソラの作品を弾く時の-熱い-感じがいい。「エスクアロ」でのクールな妖しさ、「リベル・タンゴ」での獲物を狙う黒豹のような鋭さ。天使にも悪魔にも変貌するその姿は、最終的にはミューズ(女神)になる。普段のおしゃべりは普通の賢い女性だが、バイオリンを奏でる姿は官能的である。本人も演奏中は、
「何かが降りてきて、何も怖くなくなる自分がいる」
と言っている。2時間はアッという間だった。サインをもらってホールを出たら、妖しく紅い月が東の空から昇ってきた。月まで色っぽい夜ではないか。

6月には銀座の博品館で、今までと全く違ったスタイルの舞台をやるという。これは観に行かなくては!でも彼女のコンサートに男連れで行くのはイケナイ。川井郁子の世界から醒めてふと横を見たら…そこには同じ女性とは思えないほどのブーがいたと思われる危険性が大である(0^;気をつけなくては…。

川井郁子HP→http://www.ikukokawai.com/



にゃんこin小諸2

2005-04-25 20:49:03 | 旅のあれこれ
その後K氏には、小諸に行くたびにお目にかかっている。2年前の晩秋には、山伏一家とK氏ご夫妻と一緒に山閉めに同行することができた。その時の空の蒼さ、トーミの頭に昇る昼の月、カモシカの親子、目に痛いほど鮮やかな紅葉は、生涯忘れられない情景となった。

このK氏のおうちは、高濱虚子が小諸に疎開していた時に住居を提供していたという名家である。今は隣に「小諸高濱虚子記念館」が建ち、その敷地内には「虚子庵」として当時虚子が住んでいた家が保存されている。K氏も虚子記念館の受付に立つこともあり、虚子先生のことには滅法詳しい。ご自身も句をたしなむ粋人でもあるので、「小諸の殿」と呼ばせてもらっている。

駅の改札で会った後、せっかくだからと懐古園に向かう。桜はまだ1部咲きにみたないほどだが、園内はお花見ムード一色で、緋毛氈が敷かれた縁台ではお茶席が催されている。顔の広い殿はあちこちから声をかけられ、そのたびににゃんこのことも紹介して下さる。こういうご縁が、時間が経ってから思わぬ形で展開することも多いので、これはありがたい。この懐古園は、小諸城址である。天守閣こそもう無いが、野面積みの石垣が残り、その上から眺める満開の桜はピンクの雲海のように見える。ソメイヨシノの中に「小諸八重紅枝垂」という銘木があり、それが開いたさまはお姫さまのようであるという。…が、今年もまだ開花には早かった。せっかちなにゃんこは、いつも待ち切れずに早く来てしまう。
「また、来年も来いということですよね」
と言いつつ、その前で殿と一緒に記念写真をパチリ!園内の神社にお参りして、再訪が叶うことを願った。

この小諸という場所、なぜか高校生の頃から惹かれて度々訪れている。最初のきっかけは、藤村と浅間山が目的だったような気がするが、はっきりとは覚えていない。レンタサイクルで布引観音まで行き、頑張って山道を登って見た千曲川と浅間は感動的だった。車を買って初めての遠出の際には、中棚鉱泉(今は、中棚温泉)にひとり泊まり、藤村を偲んで懐古園をゆっくり巡った。高峰温泉へ行ったのがきっかけで、星の世界の素晴らしさを知ったし、初めての山登りもここからだった。そしてOLの時に一番の仲良しだったのが、小諸在住の山伏の娘…。もう何度この地を踏んだかわからないが、その度に思い出と人との縁が増えていく。

園内の料亭で、昼席のお食事会があるという殿と別れて、今回の旅の目的のひとつでもある町家のお食事処に向けて歩き始めた。北国街道沿いの家々には満開の梅が咲きほこり、町はいい香りに包まれていた。(つづく)

小諸高濱虚子記念館→http://www.kanko.komoro.org/mido/kyosi.html
懐古園→http://www.kanko.komoro.org/mido/kaiko.html