この中吉さんのお店の前を通るのが「北国街道」。昔は、交通や文化の要だった場所だ。高濱虚子記念館もこの道沿いにある。駐車場から見上げた入り口には、梅が咲き誇っている。何度も訪れているが、また入ろうかなぁ?と思い近くまで行ったが、土曜のせいか中から多くの人の声が聞こえる。せっかくなら静かな中で書や句を感じたいので、入るのはまた今度にしてそのまま駅方面に向かった。景観条例が施行され、この街道沿いも徐々に情緒漂う風情になってきている。各お店の屋号を書いた木の看板がなかなか素敵だ。
通り沿いに、なにやら気になる場所を発見!寄り込んでみる。「商人館・よってけや」と名付けられたお店では、昔の北国街道の賑わいを写した写真を展示中だった。その隆盛振りを見ると、「中吉」のご主人のおっしゃったこともよくわかる。他に、旧い看板やお店の備品などもあって楽しい。ひとりでお留守番をしているおばちゃんが、
「よかったら、お茶あがっていって下さい」
と言って、お茶とお菓子を持ってきてくれた。
「小諸大好きで、よく来るんですよ。いいですよね、こういう落ち着いた感じ」
「でもね、新幹線がとまらなかったせいで、こんなに寂しくなっちゃってね。今は、懐古園くらいしか知られていないから…。でも歩いてもらえば、けっこういいところがいっぱいあるんですけどね。そういうものを感じてくれる人が、来てくれると嬉しいですよ」
押し花のしおりと「千曲川旅情」や「信濃の国」の歌のプリントまでいただいてしまった。こういうところで、地元の方とゆっくりお話できると、よりその場所に親近感を感じられていいよね(^^ 小諸の町は、古きよき時代の香りがそこここに残っている。藤村や虚子の足跡もあるし、浅間ゆかりの作品を集めた美術館もある。そう言えば、大好きな俵万智もこの町に縁があり、「チョコレート革命」の中に多くの歌を残している。この町の良さをもっと多くの人に知ってもらいたいと思いつつ、お店を出て駅に向かった。
GWの最終日、5月8日が浅間山の山開きだ。小諸の殿も友人の一家もこの日は浅間山に登る。
「今年はどうする?一緒に登るかい?」
と、殿が言ってくれたが、どうも人が多いところが苦手なので、
「また静かに登れる山閉めにうかがえたらと思います」
「そうだね、人が多いのダメだって言ってたもんな。またブラッと来ればいいや。都合が合えば、黒斑からの道も案内するから」
と言って下さる。埼玉で生まれずっとその地で暮らしている私にとって、小諸は第二の故郷のような場所だ。そんな場所があることに感謝して、ずっとこのご縁が続くことを願っている。(おしまい・軽井沢編につづく)
小諸→
http://www.kanko.komoro.org/