キキリ・キキリ・キキリ

-北海道の昆蟲と自然-

北海道の昆虫の写真を中心に、身近な生き物や自然を紹介しています。

用水路採集

2006年06月22日 | 採集記・撮影記
野山に行って、思うように結果が得られない時、または息抜きしたい時、「用水路」があれば、それを覗いてみるのも面白いかもしれない。

先日、林道を走っている時に見つけた「用水路」での出来事。

「用水路」は田畑に水を引く為の構造物であるが、草地の脇や林縁部など、意外と昆虫類が集まる環境に施工されている場合が多い。
そうすると、不幸にも用水路に落ちてしまう昆虫類も多い。
虫にとっては「三途の川」、虫屋にとっては「流しソーメン?」みたいな場所。
お好みの昆虫をテイクアウトすることが出来る。



ここの用水路は低山地の中腹に設けられ、ミズナラ、オヒョウニレ、ドロノキ、ケヤマハンノキ、イヌエンジュ、ヤナギ類などの豊かな広葉樹林の縁を延々と流れている。
しばらく水路の内部を覗いていると、ハムシ、ゴミムシ、コガネムシが流下して行く。
水が流れてくる方向をみると、水路は行き止まり・・・。
この先には沢があり、沢向こうの水路と分断されている。
こういう構造物を見るのは初めてであったが、「逆サイホンの原理」を利用した水路であり、地下に水路を通しているのだ。水が再度、地表面に現われる箇所では、流れが渦巻いている。そんな場所にゴミが溜まっていた。



ゴミの内容は2~3週間前に落ちたであろう、ヤナギの花である。
分厚く堆積し、腐った匂いにつられてかカタツムリが多数集まっている。
近づいてみると・・・



OH!ルリオサムシである。横にはカナヘビもいる。
オオルリ君は自分が大変な事に巻き込まれているのに、悠長にお食事中である。

持っていたタモ網でゴミごと回収・・・



オオルリオサムシ[Damaster gehinii]★★★(特)
(コウチュウ目オサムシ科)
カタツムリ食で主に下草の豊富な広葉樹林帯に生息する。海岸付近の草原やササ草原に生息しているものもいる。北海道特産種で幾つかの亜種に分類されている。


他にゴミの中から出て来たのは・・・


セアカオサムシ



ミヤマクワガタ

他にはキクビアオハムシ、ヒメビロウドコガネ、ハイイロビロウドコガネ、ミヤマオオハナムグリ、アオハナムグリ、ヒラタシデムシ、センチコガネ、エゾカタビロオサムシ、オオキンナガゴミムシ・・・



そして、最後にエサキキンヘリタマムシ。
恥ずかしながらキンヘリタマは初採集である。

虫以外にはカナヘビ、アマガエル、トガリネズミ類が混じっていたが、死んでいるものが多かった。

腐った植物にカタツムリが集まり、それらを食べにオサムシ、ゴミムシが集まる。オサムシ、ゴミムシを食べにカエル・カナヘビ・ネズミが集まり、水路から這い出せなくて死んでしまう。
そこにシデムシ・センチコガネが集まる。
生態系の縮図がこの渦の中に形成されていたのだ。


チョッと興味深かったので紹介しました。



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「エゾ」なカミキリ

2006年06月21日 | カミキリムシ科
悪天候に付き、早々と戻ってきました。
一昨日の結果をお知らせします。


6月19日

夕刻となり仕事が終了。
宿泊先に行く前に、チョッと寄ってみたい場所があった。

・・・石狩川某支流河川敷・・・

そこには、「エゾ」を冠にした風変わりなカミキリが居るはず・・・。


予備知識として持っていたのは、夕方になるとヤナギの「ひこばえ(切り株や木の根元から出る若芽)」に登り食害、交尾を行う。
昼間はヤナギの根元に隠れている。それと、飛ばないらしい・・・

今までに数頭採集したことがあるが、オサムシPTに落ちたものや築堤上を歩行しているモノを採集しただけで、「採った~!」という感激が薄いカミキリであった。今回はまたと無いチャンスである。



果てしなくヤナギ林が続く河川敷。良く見ると、「ひこばえ」だらけ。
ポイントが絞れぬ・・・
とにかく探索するしかない。


ざぁーと見渡す限り、若枝に登っている個体は見られない。
ならばと林内に入り込む。

次に、余計な草を掻き分け、根元を覗いてみる。
何か判らないが、幹から木屑が出ていたり、数mmの脱出孔があったりする。
エゾカミキリは10mm位の孔を開けるというから、ゾウムシか何かであろう。


草を掻き分け、掻き分けしていると、足元に土色の物体が蠢く・・・



・・・ イ、イター(゜∀゜)ー!!



逃げる逃げる。「オイ、待て、待て~!」
結構、足が速いのである。



エゾカミキリ[Lamia texor]★★★(特)
(コウチュウ目カミキリムシ科)
5~7月に現われ、ヤナギ類の生木を食害。夜行性。
北海道特産種。石狩低地帯以東、以北に分布。


探索、5分で1頭目。今日もキテます!
お次は?っと・・・



ホレ、根元にイター(゜∀゜)ー!!
反対側には怪しげな木屑・・・。
しっかし、目立ちませんなぁ。見事に同化しています。



おっと!逃げた。



捕まえた。
エゾ君:「何すんじゃい!」



横顔も迫力満点!


枝に登っているものは見つけられなかったが、教科書通りの生態。
根元を掘れば、もっと出てきそう。


たった15分で結果を出す。
サッカーで例えるなら「ロスタイムで交代、ワンチャンスで得点!」みたいな・・・。
ジーコJAPANにもこの運を分けてあげたい。そんな気分になったのであった。



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ピリカ・キキリ

2006年06月19日 | 採集記・撮影記
ピリカ・・・アイヌ語で「綺麗」・「良い」という意味。
この週末に撮影したピリカな昆虫を紹介します。


先日、設置したPTを早速、回収してきました。
今年のPTはこれで終了にします。これ以上、設置と回収に費やす時間をスケジュールを組み込め無い為。
今回は昨年以上の結果(4頭))を期待してましたが、150個を1週間の短期決戦。
結果は如何に・・・


17日のPM8:00に現地に到着。
前回、崖崩れが近くで起きた駐車場で車中泊。


18日 PM3:00 起床し、PTポイントへ移動。



外はまだ暗いです。当たり前か・・・
さあ、早いとこ回収しましょう。



1個目:何もなし、2個目:アオカタビロオサムシ、3個目:クモ・ヨコエビ
4個目・・・


入った!完品オシマルリだ!いいぞ、この調子でどんどん入ってくれ



50個目:エゾマイマイカブリ、51個目:クモ、52個目:ツンベルグナガゴミムシ
53個目:オシマルリ。
「よっしゃ~!」薄暗い渓谷にこだまする。



148個目:何もなし、149個目:センチコガネ、150個目:ん?
20cm弱の大型のエゾサンショウウオ・・・ゴメンちゃい


結果はご覧の通り、2個体でした。



でも、1週間で2個体はまあまあです。左の色の個体は昨年も採れました。
ピリカ・ピリカ・ピリカであります

やっぱり、もっと標高上げなければ沢山は入らないんですかね~。
来年こそ、相方を探さなければ・・・。


本来ならば、こんな写真を撮ってみたかった・・・。


この写真はイメージです。



この写真はイメージです。

いつか本物の生態写真を撮ってやる!
そう誓って下山しました。


戻る途中、林道脇に良さげな湿地発見



さてさて、奴は居るかな?




居ました、キヌツヤゴールド!


キヌツヤブルー!


キヌツヤレッド!


キヌツヤグリーン!

キヌツヤミズクサハムシ。
普通種ですが綺麗ですなぁ~。



この後は先週、撮影できなかったカラフトトホシハナのおさらいと行こう。
札幌まで寄り道せずに戻る。


こんな景色や


羊蹄山(蝦夷富士)も曇っていちゃ大した事ない・・・。
虫の方に期待しましょう。



さて、着きました、いつもの林道。
「カミキリ、カミキリ・・・」と念仏のように唱え林道を歩くが今日はカミキリの気配が無い。
枯ヅル、枯れ枝、叩いても叩いても、何も落ちない。
そして、「熊に気をつけなよ。」と言わんばかりにコイツがお出迎え。



キバネクロバエである。クマの糞に発生する。
クロバエという名がついているが日本最大のイエバエである。
ちょっと、気味が悪い・・・。それでも進軍!

直後に、綺麗なチョウを発見!


タンポポの陰に隠れているのは・・・


定山渓の妖精、ジョウザンシジミである。
[Scolitantides orion]★★★(特)

この林道は数年前から通っているが初めて確認した。
カミキリは出てこないが、今日はチョウがよく目に付く。


ヒメウスバシロチョウ
[Parnassius stubbendorfii hoenei]★★★(特)





サカハチチョウ
[Araschnia burejana strigosa]★



ルリタテハ




ヒゲナガガの一種

他には、スジグロシロ、エゾスジグロシロ、オオモンシロ、ミヤマカラス、カラスアゲハ、オハガアゲハ、キベリタテハ、ルリシジミ、コツバメ・・・、蝶屋じゃないが黙っていても視界に入る。


カミキリはキタセスジヒメハナ、ホクチチビハナ、モモブトハナ、カラカネハナだけ・・・
カラフトトホシはオアズケでした。



ならばと思い、山を降りて、以前ルリヒラタを採ったポイントへ。


これまたカミキリは見つけられず、代わりに居たのが


オオキカワムシ?でした。
[Pytho nivalis]★★★

初めはゴミムシかと思いましたが、扁平で妙にテカッてます。
初めて採集。珍しいのか?


というわけで、オシマの結果には不満が残ったが、今日もいろんな種を沢山撮れたので良しとます。
今回は各種のコメントを入れませんでした。後ほど時間を作って追加します。
今日から出張につき、やや暫く更新できません。
よろしくお願いいたします。



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ケ・マダ~ラ!

2006年06月17日 | カミキリムシ科
こんにちは。




僕はヨモギが大好きです。
お家は河川敷の日当たりの良い草地です。
北海道にのみ棲んでいます。




可愛い顔してますが、背中から見ると、クビ長なのです。




背中のまばらな黄色い毛が名前の由来です。
「ケ・マダラ」であって「ケダマ・ラ」ではありません。



ほな、サイナラ!

ケマダラカミキリ[Agapanthia daurica]★★★(特)
(コウチュウ目カミキリムシ科)
オオヨモギ、ハンゴンソウなどに集まり、後食する。北海道特産種。
6月の草原に普通であるが、近年減少傾向といわれている。
東北地方に近似種のミチノクケマダラカミキリが生息する。


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初夏の山地の昆虫

2006年06月16日 | 採集記・撮影記
6月11日 前回の続き・・・


一気に道南地方から札幌まで戻ることとした。
中山峠を越えると、一転、天気は快晴に
気温も高いし、湿度もあって良い感じ。
よーし、いつもの場所でカミキリムシ狙いだ。



ポイントへの至る道路。
良く見ると、たくさんの虫が歩いている。



アカアシクワガタ[Dorcus rubrofemoratus]★★
(コウチュウ目クワガタムシ科)
山地のヤナギ類を吸汁する姿を良く見かける。
今年の初クワである


まだまだ、居るぞ・・・



アオカタビロオサムシ[Calosoma inquisitor cyanescens]★★
(コウチュウ目オサムシ科)
樹上で蛾の幼虫を食べたり樹液を舐めたりしている。
西日本では珍しいオサムシらしいが、北海道では6月に大量発生する。



マルトゲムシの一種(コウチュウ目マルトゲムシ科)
目撃は初めて。コケ食べるんだったっけ?



曇天後の快晴、そんでもって高温多湿。
初夏の昆虫が動き出した。急いでいつもの林道へ向かう。



普段はゲートが開いている林道だが、今日に限って閉まっている。
ゲート前に車を止め、カメラと網と鈴とナタを装備し林道を歩く・・・。
なんだかとても暑く感じる
気温9度の場所から20度の場所へ移って来たからねぇ。仕方ない・・・
歩き始めて、ほんの2~3分で、甲虫らしき物体が地表付近を飛翔中。
すかさずネットイン!

ん?

ああっ!

え~!トホシ

いやいや・・・



カラフトトホシハナカミキリ[Brachyta sachalinensis]★★★(特)
(コウチュウ目カミキリムシ科)
タンポポなどに集まるという・・・。北海道特産種。

こいつは今年に目標に上げてもよかった種である。
こりゃ嬉しい。他にもいないかなぁ?

次に現われたのは・・・



ヨツボシヒラタシデムシ[Dendroxena sexcarinata]★★
(コウチュウ目シデムシ科)
今日は綺麗に撮れました。

そして、目の前をヒラヒラ・スーと飛ぶトンボが・・・


ムカシトンボ[Epiophlebia superstes]★★★
(トンボ目ムカシトンボ科)
山地の渓流付近で見られる。
生きた化石といわれる。

この前も見た蝶・・・


キベリタテハ[Nymphalis antiopa asopos]★★
(チョウ目タテハチョウ科)


ヨモギの上には・・・


コウノニセリンゴカミキリ[Niponostenostola niponensis konoi]★★
(コウチュウ目カミキリムシ科)
チチブニセリンゴカミキリの北海道亜種。広葉樹の枯れ枝などに集まる。
食樹はホオノキ、クルミ類など。
この個体は色が鮮やかじゃないですか?


夏といえば・・・


ミヤマクワガタ[Lucanus maculifemoratus]★
(コウチュウ目クワガタムシ科)
北海道で最も普通に見られるクワガタだがファンは多い。
自分もその一人。


昨日までの天気が嘘のようだ。
いやぁ~、今日は面白い


林道脇の白い花。ナナカマドっぽい。
良く見ると甲虫が居る・・・





網を伸ばして、ネットイン!



カエデノヘリグロハナカミキリ[Eustrangalis distenioides]★★★
(コウチュウ目カミキリムシ科)
恥ずかしながら、初物です。


隣の房に違うのが居る・・・



ネットイン!


ミヤマオオハナムグリ[Protaetia lugubris insperata]★★
(コウチュウ目コガネムシ科)
花よりも樹液に集まることが多いハナムグリ。

お~!ミヤマオオの緑化型だ!これまた初(色)物。
良い写真が撮れなかったので、葉っぱに置いてみた。


今日はキテます


おっと、もうAM11:00、そろそろ帰らなくては・・・。
来た道を戻る。この後見られたのは・・・


ムカシトンボの羽化。



オオヨモギハムシ[Chrysolina angsticollis]★★
(コウチュウ目ハムシ科)
山地のアキタブキ、アザミ類などを食べる。近似種が多い。


など、他にも色々見られたのである。
ただ、カラフトトホシハナおよびトホシハナを追加は出来なかったのは残念!


うーん、初夏の北海道。
私の一番好きな季節です




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