認知症予算大幅増の161億円>
医療、介護など七つの柱
共同通信社 2015年1月27日(火) 配信
政府は27日、認知症の対策強化に向けた関係閣僚会合を開き、省庁横断の国家戦略「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を決定した。2025年に認知症の高齢者が700万人前後に達すると見込まれることから、今や一般的な病気だとして「よりよく生きていくための環境整備」を目指す。15年度当初予算案で、認知症施策に14年度比66億円増となる約161億円を確保した。
戦略は「適切な医療・介護の提供」など七つの柱を掲げた。安倍晋三首相は会合で「認知症への対応は世界各国の共通課題だ。安心して暮らせる社会を実現し、世界のモデルとなる取り組みを進める」と述べた。
厚生労働省研究班の推計によると、団塊の世代が全て75歳以上となる25年には、認知症の高齢者が現状の7人に1人から、5人に1人に増える。
七つの柱の一つ「適切な医療・介護の提供」では、発症間もない段階での発見と対応につなげるため、歯科医師や薬剤師らへの研修を新設。かかりつけ医や専門医、介護事業者が連携して本人らを支える新たな仕組みも16年度からの導入を目指す。
「予防や診断、治療法などの研究開発」では、15年度末までに早期に診断できる方法を確立し、20年ごろまでに根本治療薬の治験を始めるとした。
他にも「理解の普及・啓発の推進」「介護者への支援」「本人や家族の視点の重視」などを盛り込んだ。
戦略は厚労省が13年度から始めた「認知症施策推進5カ年計画」(オレンジプラン)を発展させた内容で、消費者庁や警察庁、経済産業省など省庁間の連携を強化。徘徊(はいかい)による行方不明を防ぐための見守り体制づくり、詐欺被害の防止、家族らの負担を軽くするための介護ロボット開発などを進める。
安倍首相が昨年11月の国際会議で、策定を表明していた。
※認知症: 脳の神経細胞が死んだり、働きが悪くなったりして記憶障害や言語障害が起き、日常生活に支障をきたす状態。物忘れや妄想、徘徊(はいかい)、幻視といった症状が出る。アルツハイマー病や脳血管障害に起因するものなどのタイプに分かれる。投薬によって症状の進行を遅らせられるものもあるが、根本的な治療法は確立されていない。厚生労働省は2012年時点で認知症高齢者は約462万人と推計していたが、25年に700万人前後に達するとの新たな見通しを公表した。