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【アピール】汚染水の海洋放出に反対する

2021年06月16日 | 放射能

   

 

【アピール】  汚染水の海洋放出に反対する


                         横見 出 (よこみ いずる)


 2021年4月13日、日本政府は東日本大震災で破壊された東京電力福島第一原子力発電所から排出されている放射性物質を含む100万トン以上の処理済みの汚染水を、福島県沖の太平洋に放出する計画を承認した。
 とんでもないことだ!せっかく閉じ込めているものを、それも急速に拡散するだろう太平洋に捨てるなんて認められない!
 いくら薄くても母なる海に核ゴミを捨てるなどありえない!
 が、まずはこの件に関しての世論調査、報道など世間の考えを拾い出してみよう。

 国内世論調査は次の通り。
 朝日新聞(2021/1/3)対象:全国 方法:郵送 有効回答2216人 賛成32% 反対55%
 Yahoo!(2021/4/23)対象:全国 方法:オンライン 投票225,706人 賛成56% 反対40.7%
 FoE(2020/5/19)対象:6都県漁協 方法:郵送 有効回答42漁協 賛成1漁協 反対38漁協
 毎日新聞(2021/4/18)対象:全国 方法:電話 有効回答1085人 仕方がない54% 
  他の方法を考えるべき36%
 産経新聞(2021/4/18)対象:全国 方法:電話 有効回答1180人 評価する46.7% 評価しな
  い(反対)45.3%

 これらの数字を見る限り、悲しいことに国内賛否は拮抗している。

 海外の様子は次の通り。
 BBCのニュースによると、グリーンピース、中国、韓国が反対、アメリカ合衆国が容認、IAEAは当然のことというスタンス。
 英国系メディアの論調は反対、米国系メディアの論調は容認と見える。
 以上のように利害、関心を含めて意見は割れている。中英米とも核保有国であるからわかりやすい傾向があるとも言えない。


 環境庁の「人の健康の保護に関する環境基準」において、シアン(青酸)、アルキル水銀、PCBは「検出されないこと」とある。これらについては希釈してもだめと解釈できるが、カドミウムや六価クロムなど悪名高い有害化学物質でも一定量以下の濃度を許容する仕組みになっている。おそらく町工場がカドミウムや六価クロムを水で薄めて排出しても大問題になるだろう。


 本来、法律の基準というものは出さないために作られているもので、出すための方便など目的から大きく逸脱しているだけで、違法な行為という点から逃れられないはずだ。ところが昨今、政治資金問題に代表される「バレたら返せば許される」という行為に異を唱えることがなくなった。薄めてしまえば、基準値さえ満たせば捨てても良いという解釈も同類だ。環境を守るための基準という法の目的を大きく逸脱する違法行為だ。
 なお、残念ながら環境基準に放射性物質に関しての記述はない。

 

  高度経済成長期に著しく環境が汚染された記憶のある人にとって、放射性物質に汚染された大量の水を太平洋に投棄するなど、許しがたい行為だ。特に放射性物質は原子レベルでの汚染であり、原子自体が変化するため健康被害、中でも長期影響を証明する手立てがほとんど無い。被害自体が当の本人に見えないのだ。

 私は大気圏内核実験の影響で戦後の日本の「がん」の増加があったと考えている。最初は「胃がん」、その後多様な「がん」が増加してきた。子供の体力は戦後どんどん低下した。日本人が世界のスポーツで活躍することなど殆どなかった。

 ところが、1990年代生まれあたりから変化が出てきた。子供の体力低下が収まり、世界に通用するスポーツ選手が次々と現れたのだ。核実験が禁止されて30年、直接の環境被曝(雨や塵などを経由する)世代から数えて孫の世代になったとき、食物中の放射性物質が0.1bq/kgレベルまで落ちたとき、それが1990年代。大陸性の国民より日本人の体力回復が遅れた理由は海産物を多く摂取する国民性だからと思われる。福島第一原子力発電所の核惨事後、保険金支払いの対象が「がん」から「脳梗塞」、「心筋梗塞」、「くも膜下出血」、「肺炎」に変化した、と保険屋さんに聞いた。やっぱりな、と思う。

 放射性汚染水の海洋投棄はいずれ新たな疾病の増加をもたらすだろう。米国の井戸水のトリチウム汚染では脳疾患が増えたとの報告がある。同じことが起こると思う。感情のコントロールができなくなる可能性もあり、社会が荒むこともありうる。しかし、それらが広範囲にあらわれると因果関係を証明することは限りなく不可能である。

 放射能汚染水の海洋投棄に対する意見が世界でも国内でも割れる中で、如何にして最善の方法(汚染水の海洋投棄を止める)を選択するかは難題である。資金力のある原子力勢力が自前で都合よく構築した論理に科学のレーベルを付けているからだ。相手の都合のよい土俵に上がり、真に正しい科学のレーベルで反対の論戦をすすめることは容易ではない。世界の核汚染地域で多くの人が戦っているが論争は何十年にも及ぼされて今に至っている。

 科学というもの、実は賛同者の多い意見を「正」として構築されてきた。それがまさしく「正」である条件は、科学者の「正義」への忠誠に依存している。ところが「核」に関してはその根幹が間違っている。「核」が「正」なのだ。

 だから科学のアプローチだけでは長い時間を要し、解決への道は見えない。科学を尊敬しつつも自ら考え意見する市民活動が必須だと思う。

 折につけ思うことがある。EU統合の賛否に関する国民投票でアイルランドのおばあさんがこういった。

 (EU統合に関する膨大な書類を読もうとした後)「わからん。わからんものには賛成できん。だから反対に投票する」 

                                     (終)

 

  金曜ウォーク@宇部配布討議資料

  上関原発はいらない!原発ゼロへ!

  2021年5月21日(№1)、5月28日(№2)に掲載されて配布されました。

 

 

 

 


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