六畳の神殿

私の神さまは様々な姿をしています。他者の善意、自分の良心、自然、文化、季節、社会・・それらへの祈りの記。

杜子春的苦悩

2005年05月16日 | 心や命のこと
 先週のある日、母がわざわざ新幹線で上京して来た。話がしたいと言う。平日だったが仕事の空き時間を利用して、近くでランチを食べながら話すことにした。

 目的はうすうす分かっていた。だから冷静に和やかにやり過ごそうと思って、わざと明るく振る舞った。どうせ日帰りなんだし、一緒に過ごす数時間だけ我慢して、にこやかにお帰り願う方が後々面倒なことにならないと、理性では分かっていた。

 でもテキさんは流石、ダテに何十年も私の母をやってない。挑発のツボを心得ているというか、どんな表現をしたら私がゲキドするか分かっていて、そこを衝いて動揺させようとしてきた。もう脳ミソ沸騰してアタマ禿げるくらい腹が立ち「勝手に帰れ」と駅に置き去りにした。直後にケータイに何度も架けてきて「もう一度駅に戻って来て。ちゃんと話し合いましょう。わざわざ手料理も持ってきたのよ」と言ってきたが、仕事に戻るからと断った。母は結局そのまま手料理を持ち帰った。後日「美味しく出来ていたわよ。食べさせたかった。この親心を理解して。」と書いた手紙が届いた。

 心底、哀しいと思った。

 私の怒りのツボの一つは「他者の心をないがしろにする」こと。

 生きていく以上、人に迷惑をかけたり傷つけたりするのは必然。だからこそせめて可能な範囲では、他者に誠実に、嘘をつかず、人を傷つけないように生きたいと私は願っている。

 そんな私に母は見合い話を持ってきた。ダーリンに内緒で会えと言う。

 ・・見合いなんて要するに『一緒に堅苦しいメシ食う』だけだから別に会うのは簡単だけれど、ダーリンがそれを知ったら、のちのち義父母となるべき私の両親を、どう思うか。
 また見合い相手の「見知らぬ氏」だって間に入ってくれる仲人?さんだって、私が、心に決めた人がありながら見合いをした女だと後日知ったらどう思うか。
 それらを考えるととてもそんなこと出来ない。私はそんな不誠実な人間になりたくないし、結婚後の私んちとダーリン家の関係を考えても、そんなこと、すべきじゃない。だからイヤだ、と静かに説明した。それに対し母は「我が家にとって有利な結婚をするためなら誰を傷つけてもかまわない」と主張。さらに「お前は何であんな男(←ダーリンの意)に義理立てするのか。全てを正直に話す必要はない、黙っていれば分からない」と言う。

 この考え方に私はブチ切れた。
 失礼にも程がある、私に対してもダーリンに対しても。そこまで「ふたりの心」を無視するか。信頼の絆を断ち切りたいのか。
 また、現状を知らずに見合い相手を紹介してくれたりと、私たち家族に心を寄せて関わってくれる人々に対しても、あまりにも不誠実で自己チューじゃないか。

 ・・このままじゃ地獄に墜ちるよ、母。●木数子じゃないけどさ。

 「自ら望んだ結婚」をするためなら、他者を傷つけることになるのも致し方ない。それは私も同意する。

 しかし「我が家に有利な結婚」ってのは、何?
 そもそも結婚て、利益追求行為なのか?

 おまけに「黙っていれば分からない」なんて。そりゃそうかもしれないけど、結婚と言う慶事にあたり『双方のためを思い一生秘めておかなければならない秘密』を娘に持たせようとする親が、果たして居るもんだろうか。(つーか白無垢って「そーゆーのがありませんよー」を表す装いなんじゃないの~?)

 ・・そりゃあ何十年も人間やってれば「墓の中まで持っていく秘密(生涯誰にも明かさない秘密)」のひとつやふたつは抱えるものだ。私だって人並みに持っている。
 でもそれは、自分の手で封印し自分の意志で抱えるからこそ、重みも「人生の体重」の一部として受容できるのだ。
 これを他者に強制されて持つとしたら、かなりしんどい。日々心にのしかかる重みは「強制した者への晴れぬ恨み」として心を縛る。
 「結婚」が、そんな暗い人生の始まりを告げるものならば、しない方がマシ。

 たとえば莫大な借金があるとか誰かに命の危機が迫っているとか「感情」なんて吹き飛んでしまう状況下ならば、私はヘナヘナ~となって涙ながらに暗い忍従の人生を選んでしまうかもしれない。情けないが私も、弱く自己チューな遺伝子を親から受け継いでいるから。
 でも現状はそんなじゃない。

 とすれば、私がここで頑張らねばと思う。親の無理解や罵詈雑言が辛くても、ダーリンのそばに踏みとどまって、幸せになっていく姿を見ておいてもらわねば。母の魂を人の道から外さないためにも。 

 そして付け加えるなら。
 本来、母の魂を地獄行きから救うべきは、娘のあたしじゃなくて夫である貴方じゃないの~、父?

 妻が周囲の迷惑も省みず自己チュー全開してるのを、止められない父。高い新幹線代払ってわざわざ上京した母を冷たく追い返した親不孝な娘を、叱りも諭しもしない父。調子の良いことばかり言って、機嫌を取るのが愛情だとカンチガイしている父。
 ・・トーチャン、頼むよ(--;)。娘じゃなく妻を第一に考えて、労って支えてやってよ~。

 結婚するなら女はやっぱ「自らの意志で選んだ」人じゃなきゃダメだね。「誰か(親)が勧めたから」とか「何か(誰か)のために」と理由をつけて、自分の心を偽って不本意な結婚をしちゃいけない。母の、哀しい鬼のような言動を見るたび、つくづくそう思う。

 セレブ婚なんか特にそうだけど、結婚した直後は注目されうらやましがられ、誉めそやされたりするから「やっぱりこれでよかったのよ」と思うかもしれない。でも、いずれ人は皆、寿命を終えて土に還る・・その時、ぼんやりしたあてのない恨みの想いだけが中空に漂う・・そんな結婚が、子々孫々に幸せを伝えるはずが無い。

 もちろん、時代背景もあるだろう。親世代の結婚観や見合いセレブ婚が全て誤りとも思わない。紹介経緯は見合いでも自らの意志で「この人なら」と思えたらそれはラッキーだし、「自分の意志で」自分のためじゃない結婚(そういう人生)を「選ぶ覚悟を決める」女性もいるだろう。不本意な結婚でも、後々振り返った時に「まぁ良かったかもね」と思える味わい深いものになるかもしれない。

 多分、結婚には「正解」も「王道」もない。

 だから私だって、母の言葉なんかにイチイチ動揺してはいられない。
 これが自分の人生だと、腹をくくらねば。もっと強くならねば。

 ・・そして男は、いくら金持ちで社会的地位が高くても、イケメンモテ男でも、妻ひとり幸せにできないようじゃ「男としてダメ」だね。たとえば最近話題の監禁犯の父親みたいにね。



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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いいえいいえ (風野)
2005-05-23 16:59:21
>>トンチンカンなコメントだったかもしれませんね、失礼しました。



blue様、とんでもない!コメント頂けて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

公開モノなのではっきり書けなかったり、感情が先走ったりして、状況説明の言葉が不足しているのはこちらの方です、なのに読み続けて頂けるのは、本当に励みになります~。

(^^)これからもいろいろと頑張りますので、推移を時々見にきてやって下さいネ。



また、違う視点からの感想を教えていただけるのもありがたいです。苦言も、どうぞ遠慮なくお寄せ下さい。

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そうだったのですか・・・ (blue)
2005-05-23 11:01:37
過日はろくに内情を知りもせず、トンチンカンなコメントだったかもしれませんね、失礼しました。

家族の数ほど悩みや問題があるのですね・・・頑張ってとしか言葉が見つかりません。
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いらっしゃいませ2 (風野)
2005-05-19 08:20:39
コメントありがとうございます。

「我が家」ったってどこぞの名家とかじゃないのに、何じゃそりゃって感じです。^^;

父は三男で本家は別にあるし、両親自身も「婿を取って苗字を残す」のが主目的じゃない。要は「父、母、私の三人が合意できる相手」であるべき、って言うんですね。私ひとりが「良い」と言ってもそんな我儘は通らない、と。

・・たとえばダーリンがプータローだとかギャンブル好きだとか女癖が悪いとかそーゆー誰もがうなずくような理由で反対されるなら、まだ納得できるんですが。
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哀しいですねえ (megumiyazaki)
2005-05-19 00:23:53
内情も知らず人の親御さんに勝手な言いぐさですが、「我が家に有利な結婚」というのはあまりに哀しいなあと思ってしまいました。せめて、「我が子に有利な結婚」と言ってほしかった。

風野さん、自分の思うようにしてください。それが一番だと思います。

なんだかうまいこと言えなくてごめんなさい。
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いらっしゃいませ (風野)
2005-05-18 14:14:08
コメントありがとうございます。



>>あさひ素材さま

僭越ながら社長さんは『「親」である前に「人間」として(←コレ、子育てに重要)』きちんと生きていらっしゃるように思いますから、そのままで充分ではないでしょうか~。

(^^)お子さんは娘さんなのですね。可愛いでしょうね~。

「娘に愛される父親」になるポイントは二つ。

1.娘に愛情は注いでも機嫌取りはしない。

2.他人はもちろん娘よりも、まずは妻を優先し大事にする。

これでバッチリです♪



>>ロリスさま

ブログへようこそ~。

応援ありがとうございます。頑張ります!

日記の方でも知らない方から助言メールを頂いたりしまして、勇気が出ます。

・・同時に、「結局は親が悪くて私は悪くないのダ~」という自己正当化のワナにハマらないよう気をつけねば、とも思っています。

自己を客観視するのは難しいですけどね。
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本当に(ため息) (ロリス)
2005-05-17 22:15:11
メール、ありがとうございました!



親が子を愛するって、どういうことなんだろうなあ、と考えさせられました。

「自分の人生」=「子の人生」では無いのだし、だれでも頭では分かっていることなんだろうけれど。。。



難しいですよね。でも風野さん、応援してますよ!
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おぉ (あさひ素材)
2005-05-17 11:33:21
力のこもった記事ですね!



親が子供の選択に、反対したり障害を作るのは、それでもやり遂げるかどうか、すなわち本気の度合いを試しているのだと言います。



お母様も、自分では意識していないかも知れませんが、子を持った人間の本能で、そういう障害を作っている可能性も…。



私にも娘がいますが、自分はどんな親になるのだろう…。
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