風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

指紋認証装置が正しく作動しなかった場合の中国人の反応について (『ゆっくりゆうやけ』第68話)

2011年11月20日 23時33分51秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 僕の勤め先には入口に小さな指紋認証装置が置いてあって、指紋を押してタイムカードの代わりに使っている。
 朝はいつもそこに行列ができるのだけど、なかなか動かない時がけっこうある。何度押してもエラーになってしまう人がいて、その人で行列がとまってしまうのだ。遅刻しかけだったり、朝イチから大急ぎで仕上げなくてはいけないことがあったりすると焦ってしまう。
 そんなに出来の悪い機械でもないし、どうしてしょっちゅう行列がとまるのだろうと不思議に思ったので、中国人従業員の様子をじっくり観察することにしてみた。それで、ようやくなぞが解けた。
 指紋認証装置の脇には雑巾が置いてあるのだけど、彼らは十人が十人とも自分の指を拭いて、それからまた画面を押していた。
 何十人も指紋装置を押せば、指紋を押す画面が汚れて正しく反応しなくなってしまう。いくら自分の指を拭いてみたところでしかたない。画面の汚れを拭き取ることが先決だ。それくらい察しがつくだろうと思うのだけど、誰も気づいていないようだし、画面を拭こうともしない。画面を拭かないから、何度押してもエラーになる。それで行列がとまっていたのだった。
 日本人なら、おそらく画面が汚れていると気づいて汚れた画面をさっさと雑巾で拭いてしまうだろう。だけど、中国人はこのことに気づかない。自分の指を拭いてきれいにするのは当然といえば当然なのだけど、そこで発想がとまっていて機械のことまで考えていない。それで反応してくれないと言って嘆いている。
 こんな時、同じ東洋人といっても、日本人と中国人では発想がずいぶん違うよなと実感する。

 


 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第68話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/
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