風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

中国のクリスマス その2 (連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第66話)

2011年11月14日 06時43分22秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
 こちらのカップルは、日本と同じようにクリスマスを一緒に楽しく過ごす。
 中国人の友人たちとクリスマスのことをいろいろ話していた時、
「それじゃ、君も彼氏になにかプレゼントを贈るんだ」
 と、僕が何気なく言ったら、彼女はぽかんとした。
「クリスマスって男が女にプレゼントするものなのよ」
「えっ? 恋人同士でプレゼントの交換をしないの?」
 今度は僕がぽかんとした。
「どうして女の子が男にプレゼントするの?」
 彼女は首を傾げる。
「だってさ、交換したほうが楽しいだろ。男だってプレゼントをもらったら嬉しいんだし」
「なんだか変よ。おもしろいことをするのね」
 彼女は楽しそうに大笑いした。
 一般的にいって、中国では彼女が彼氏へプレゼントを贈ることはあまりない。バレンタインデーも彼氏が彼女へプレゼントを渡すだけだ。どうやら、中国では祝いの日は「彼氏が彼女に自分の甲斐性を見せる日」ということのようだ。たぶん、それが中国人の伝統的な考え方なのだろう。
「もし野鶴さんの彼女がプレゼントをあげなかったらどうする?」
 友人がこう訊くので、
「そんなことは許さない。むりやり買わせる」
 と、僕は断固として答えた。中国流ではないかもしれないけど、僕だって男だというところを見せなくてはいけない。
「えー、ひどいわ」
「ひどいのはどっちだよ。僕だってプレゼントが欲しいんだもん。そんな高価な物をくれだなんて言わないよ。ちっちゃな物でいいんだよ。ハンカチとか手袋とか、そんなものでいいんだよ。気持ちの問題じゃないか。プレゼントを交換するのは、お互いに相手を大切にしましょうってことだよ」
「でもやっぱり、中国の女の子はプレゼントを贈らないと思うわ。そんな習慣がないもの」
 彼女はあくまでも言い張る。習慣の壁を打ち破るのはなかなかむずかしそうだ。
 中国のクリスマスなのだから、中国人が楽しめるように中華風にアレンジすればいいわけだけど、それでもプレゼントだけはゆずれないよなあ。



(2010年12月22日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第66話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

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