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風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

オカリナの頃

2018年11月04日 07時15分15秒 | 詩集

 雲ひとつない晴れた朝
 君の夢で目覚めたよ
 穏やかな光につつまれて
 君はさよならと言った

 あれからどれくらい経ったのだろう
 季節を幾つ 数えたろう
 今頃ようやく気づいたんだ
 君が大好きだって

  窓を開ければ冷たい風
  僕の頬を撲つ
  君の名前を呼ぶ癖も
  今日限りでさよなら

 あゝ 秋は君が想い出に
 想い出に変わる季節
 あゝ 君と僕の物語
 青い空へ消えてく


 君がつくったオカリナを
 久しぶりに吹いてみるよ
 最後のけんかをした夜から
 おきざりにしたままだった

 こんなにやさしい音色だったんだね
 君の声が聞こえるよ
 僕のわがままを許してね
 きっとしあわせになってね

  空に届け このメロディー
  愛を風にのせて
  僕に似合いの夢を探そう
  輝く陽射しを抱きしめ

 あゝ 秋は君が想い出に
 想い出に変わる季節
 あゝ 君と僕の物語
 青い空へ消えてく



星から吹く風は

2018年11月01日 18時15分15秒 | 詩集

 星から吹く風は
 頬に心地よく
 変わることを
 恐れるなと
 やさしく
 僕に告げる

 風にかたちが
 ないように
 心にも
 人生にも
 決まったかたちなど
 ないのだから

 悲しませないようにと
 考えすぎて
 いつのまにか
 君を落ちこませていた
 愛はもっと強いもの
 なんだよね

 星が誘う
 ぼくらの旅路
 ひんやりとした風が
 夢をまき散らす
 澄んだ夜を越えて
 きらめく星々を
 くぐり抜けて

 かけがえのないのは
 君ばかり
 愛おしいのは
 君ばかり
 変わり続けるなかで
 ふたりのしあわせを
 抱きしめる

 星から吹く風は
 頬に心地よく
 変わってゆけと
 怖がるなと
 心静かに
 僕を諭す


待ち人

2018年10月27日 19時30分30秒 | 詩集

 暮れなずむ空
 人恋しい街の灯り
 アルタの前であんぱんをかじりながら
 あんたが来るのを待っている
 たぶんこないんだろうなって思うけど
 やっぱりこないって気づいているけど

 電話をしても取ってくれない
 メッセージを送っても返事をくれない
 あたしのことなんて
 相手したくないんだろうな
 楽しいことが見つかったのかな

 退屈しのぎに ひまつぶしに
 あたしの相手をしてただけなんだよね
 付き合っているはずなのに
 ずっと片想いみたいだったもの
 あんたはしょっちゅうつれない生返事
 あんたが好きだから
 なにも言わなかったけど

  99%こないとわかっていて
  1%だけ期待している
  あたしの人生に
  奇蹟なんて起こるはずないんだよ
  もう帰ろうって何度もなんども
  自分に言い聞かせてみるけど
  あたしの足は動かない 動けない

 足早に通り過ぎる
 見知らぬ人たち
 アルタの前であんぱんをかじりながら
 来てはくれないあんたを待っている
 秋の風は冷たい風
 スカートを吹き抜ける
 からっぽの風

ふりかえるあの空に

2018年09月10日 06時15分15秒 | 詩集

 ふりかえるあの空に
 あなたのほゝえみを映して
 ふりかえるあの空に
 あなたの笑顔を残して

 あなたが遠くなります
 夢の日々でした
 あれが恋だと
 気づかずにいた僕でした

 この山道はどこまで続く
 緑のそよ風
 涙を拭いて
 心拭いて 旅を歩く

 あなたの夢が叶うように
 祈っています
 瞳に宿した
 あこがれをなくさないで

 岩場の陰に湧き上がる
 甘露を飲んで
 よっこらしょと
 腰おろし ひと休み

 しあわせを探してゆく
 風吹く 峠越えて
 遙かへ
 しあわせの住む町に
 いつかたどり着きたい

 ふりかえるあの空に
 あなたのおもかげを映して
 ふりかえるあの空に
 あなたの笑顔を残して



さらってしまいたい

2018年07月25日 06時45分45秒 | 詩集

 焼けた肩に
 蒼い月の光
 燃えるように
 燃えてしまうように
 光が跳ねるから
 水着の紐のあと
 僕は思わず
 くちづけてしまう

 朽ちた木のボート
 傾いた船べり
 君の肩を抱いて
 並んで腰かける
 見上げる夜空
 潮騒は遠い星座に
 吸い込まれ
 時がとまった
 南十字星

 夢は天の川を流れ
 さらさらと
 こぼれる滴が
 ふたりの愛になる
 僕の腕に甘えて
 くすくす笑う君
 胸のふくらみが
 息づくから
 僕はまた
 くちづけてしまう

  ふたりでいると
  なにもかもが静か
  ふたりでいれば
  なにもかもが
  やさしい
  澄んだ風よりも
  素敵な君の瞳

 月の吐息を
 両手ですくい
 真珠を一粒
 そっと入れてみる
 まぶしい光があふれだし
 穏やかな砂浜から
 海の向こうまで
 光の道がつながる

 僕らの愛の道
 世界で一つだけの道
 燃えるように
 燃えてしまうように
 光が跳ねるから
 このまま君を
 さらってしまいたい


とけちゃいたいね

2018年07月09日 06時45分45秒 | 詩集

 暑いねえ
 ソフトクリームみたいに
 とけちゃいたいねえ
 ぐったりしなって
 とろけちゃえば
 思いっきり
 リラックスできそう

 つまらないことで
 けんかはよそうよ
 どうせ仲直りするのだから
 けんかしてもしなくても
 おなじことだよ
 つかれるだけだもん

 ぼくたちは
 二本ならんだ
 ソフトクリーム
 ぐにゃっと曲がって
 もたれあって
 たおれそうで
 たおれない

 たおれるかわりに
 ひたすらとける
 とければとけるほど
 きみとぼくの境目が
 なくなる
 こころの境目も
 消えてゆく

 暑いねえ
 ソフトクリームみたいに
 とけちゃいたいねえ
 とろとろにとけて
 もうすこしだけ
 もうひとつだけ
 愛しあおうよ




あるように

2018年07月02日 06時45分45秒 | 詩集

 僕を濡らす
 梅雨の雨は
 しとしとと
 穏やかな顔をして
 あるように
 降り続ける

 植え込みの
 紫陽花は
 あざやかな青紫を
 まき散らしながら
 あるように
 咲き続ける

 焼き板塀の
 かたつむりは
 ゆったりと
 雨雲を見上げ
 あるように
 這い続ける

 世界は
 あるように
 あり続けるのに
 ぎこちないのは
 僕ばかり
 不自由なのは
 僕ばかり

 愚かさの束縛を
 一つほどいては
 一つ増え
 二つほどいては
 二つ増え
 なかなか
 減ってくれない
 そんなことの
 繰り返し

 届かない憧れが
 ささやくように
 雨は降る
 紫陽花は咲く
 かたつむりは這う
 あるように
 ある姿の
 時の静けさ

 僕も
 あるように
 ありたい
 ただあるように
 ありたい
 いつの日にか


時のしずく

2018年06月23日 05時15分15秒 | 詩集

 時のしずくがわたしにしみる
 時のしずくが蒼い海になって
 わたしは自由に泳ぐ魚になる

  命の泉からわたしは生まれた
  限りない喜びや夢を
  たずさえて旅立ち
  癒せない悲しみを抱きしめながら
  いつの日か澄んだ泉へ還る

  はるかな時の流れを
  命は巡りめぐり
  繰り返し旅に出る
  命を清めるために
  命をまったきものにするために
 
  星々のまたたきは夢の道しるべ
  月の灯りは真理のささやき
  静寂に冴えた夜空は
  かわることなくとこしえに
  わたしを見守ってくれている

  与えられた命のために
  わたしは生きたい
  ほかのなにかのためにではなく
  ただひたすら
  この命を抱きしめるために

 時のしずくがわたしにしみる
 時のしずくが蒼い海になって
 わたしは自由に泳ぐ魚になる



地下鉄の片隅で

2018年06月15日 06時15分15秒 | 詩集

 満員電車
 朝の地下鉄
 四方八方から
 押されるのはつらいから
 僕は少しずつ位置を変え
 扉の脇
 ドアと座席の間の
 わずかな隙間へもぐりこむ

 僕は小さくため息をついて読みかけの
 サン=テグジュペリを開く
 誰にも邪魔されないよう背中を丸め
 少年そのままの
 詩人の息づかいに耳を澄ます

 電車がホームへ滑り込むたび
 どこかへたどり着きたい人たちが
 降りては乗ってくる
 どこへもたどり着きたくない人たちも
 どっと降りては乗ってくる
 濁った空気がかき乱れ
 僕はことりと咳をする

 どこかへたどり着きたいと
 心の奥底で切に願いながら
 心静かに熱い祈りを捧げながら
 どこへもたどり着きたくない人たちにも
 愛想笑いの日々
 時は手持ちぶさたに過ぎていく

 奪い合いをしているなどとは
 思いたくもないけれど
 生活の糧を得るためには
 奪い合いをしなくてはならないのが
 人間の性
 冷徹な眼で己を見れば
 譲り合いをして生活の糧を得ることなど
 到底できないとわかるから
 肉体を持つ人間の限界
 逃れられない生存本能
 つまりは闘争本能

 こんな僕は
 ほんとうの自分ではないんだと
 誰かに向かって思い切り叫びたいけれど
 ほんとうの僕はここにいる私
 向かい合わなければ
 どこかへたどり着くことはできない
 誤魔化してしまえば
 どこへもたどり着けなくなってしまう

 人の渦に巻き込まれながらも
 人の渦に飲まれないよう
 いささか神経質に
 人混みをすり抜ける日々
 いつか必ず
 どこかへたどり着けますように
 愛で満たされますように
 朝の満員電車
 地下鉄の片隅で


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