つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

映画「子ぎつねヘレン」を見ましたか?・・・

2007-03-24 | いい話ですね
 21日午後9時から、テレビ東京系で放送された映画「子ぎつねヘレン」を見ましたか。これは昨年春に劇場公開され大好評だったそうだが、最近映画を見ない私は知らなかった。同夜は見たい番組もなくて、子ども向け映画だろうと思いながら何気なく見ていたのだが、いやいや、見るほどに感動の涙が止まらなくなってきた。
 春の北海道の大自然を舞台に、視覚・聴覚・嗅覚を失い、“ヘレン”と名づけられた子ぎつねと少年との触れ合いを描いたもので、実話から生まれた物語だという。原作は「子ぎつねヘレンがのこしたもの」で、北海道在住の竹田津実獣医が道路わきで拾った子ぎつねを、妻とともに介護した日々の記録だそうである。だが、映画化に際しては、伝えるメッセージはそのままにオリジナル・ストーリーを創作し、主人公を少年にすることで大人から子どもにまで伝わる感動物語が出来上がったという。
 目がほとんど見えず、耳も聞こえない上に、母親と離れ離れになってしまった子ぎつねのヘレンと、多忙な母親にほっぽり出されて、いきなり東京から北海道にやってきて寂しさを隠せない少年、どこか境遇の似ている少年と子ぎつねが出会うところから物語は始まる。そして、互いの存在に信頼を寄せ合うようになり、やがて固い絆で結ばれ、後半はヘレンの残酷な運命と、太一がヘレンの母親代わりになって、強く、そして優しく慈しむ姿には感動して涙が止まらなかった。声を出すことはできないといわれていたヘレンが、母親を呼ぶように太一の姿を求めて泣くのである。ヘレンの最期を花で飾ってやり、冷静に死を受け止め、悲しみをこらえる太一の姿には泣かされた。障害、安楽死、母と子、自然環境、ペットとの共存と、かなり重いテーマを秘めているといわれるが、とても暖かい、ほのぼのとさせられる映画である。
 監督は、「警部・古畑任三郎」「白い巨塔」など、数々の人気ドラマを手掛けている河野圭太。動物診療所の医院長には大沢たかおが扮し、その恋人の女性カメラマンで、太一の母親を松雪泰子が演じている。太一役の深澤嵐少年がとても新鮮で愛らしく、大自然の中でヘレンと戯れる場面は絵のようでもある。また、子ぎつねは、動物とは思えない素晴らしい演技? を見せている。脳の障害から、発作を起こし転げまわる場面など、どうやって撮影したのかと不思議である。この子ぎつねに助演賞を与えたいくらいだという人もいたそうだが、本当にそう思う。
 この映画で「どんな命でも精一杯生きること」を教えられた。また、「ヘレンは辛いことばかりだった」という太一に、矢島医師は「辛」の上に一の字を書くと「幸」なるという。「太一の一だ」と喜ぶ太一に、「そう、太一がヘレンに幸せを与えたのだよ」のあたりは、男同士の絆が生まれつつあることがわかる。また、微妙な年頃の矢島の娘美鈴と、自由奔放な太一の母親とのわだかまりも少しずつ解けて、2つの家族が1つになっていく。ヘレンの存在を通して、新たな人間関係が作られていくのである。
 「子ぎつねヘレン」の、何とも新鮮で心温まるこういう映画を、親と子ども一緒にぜひ見てほしいと思う。昨今、命の大切さを忘れかけている大人や子どもに、この映画から命の大切さ、一生懸命生きることを感じて欲しい。
 それに引き換え、同夜の裏番組、日テレの2夜連続ドラマ「愛の流刑地」はどうもいただけない。ベッドシーンばかりで何ともつまらなくて、前編を少し見たがすぐにチャンネルを変えた。渡辺淳一の原作本では、1968年札幌医科大学の和田教授による日本初の心臓移植手術を題材にした『白い宴』(ドラマでは「無影灯」と改題)は読み応えあるものだったが、最近はどうも「愛」がテーマとはいえ、「失楽園」にしろ、どうも性的描写が多くていやになっている。
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4 コメント

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Unknown (うらら)
2007-03-24 17:28:01
渡辺淳一作品は彼の思い込みとしか思えない性的描写が多すぎて、
違う世界を知らないのか?と知的でない私は思います
ソージャないやろ~ッタク女知らんヤッチャなァと
思うのは私ばかりではない様で、よかった!
高い評価が私は解らん、と友達にぼやいていたら
こんな良い本も書くのよと友達が感動したと言う本を
持ってきてくれましたが…
良いという人、気持悪いという人、評価は真っ二つ!!
人間って生理現象も2つに分かれるのですね
私って淋しい人間なのでしょうか~
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Unknown (lohashatoyama)
2007-03-24 18:44:57
原作の趣旨といかに違わない様にするかは、プロデューサー・監督の力量ですね。白い巨塔も平成版では原作と終わり方が違いますが、原作を尊重しつつも時代に合わせた内容になっていると思います。
しかし、原作者の山崎豊子さんはかなりリアルです。すごい考証をしています。
それにつけ渡辺さんは...。??。鈍感力?
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見ましたよ (ヒキノ)
2007-03-24 21:35:31
イイですね。心洗われるドラマでした。お母さんを評して「地軸だ 自分の周りにみんながあると思ってる」笑っちゃいました。そういう人いるんです。
「あいルケ」最初から見る気は無かったです。問題外
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Unknown (オールドレディー)
2007-03-25 09:00:10
★うららさま
 私がもう枯れてしまったせいかと思っていましたが、どうも過剰な性描写はイヤですね。
 昔の渡辺作品はよかったと思うのですが、かの先生も高齢にしたがって、あからさまになったような気がして最近はどうもいただけません。


★lohashatoyama
 お元気になられましたか。予後には十分気をつけてくださいね。
 原作とドラマ・映画の違いは、原作を読んでいるとかなり失望することが多いのですが、先日「亡国のイージス」という映画を見て、原作が読んでみたくなりました。


★ヒキノさま
 よかったですね。あの母親にしては子どものできのよさ、「親はなくても子は育つ」でしょうか。
 動物と人間のふれあいのドラマはいいですね。
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