警視庁町田署は14日、家庭内暴力を振るう長女(21)を殺害したとして、殺人の疑いで東京都町田市の佐久間忍(50)と妻の加代子(50)を逮捕した。2人は「長女の家庭内暴力がエスカレートし、将来を悲観した」と供述している。
由香さんは今月に入って家族や友人関係への不満などから、両容疑者に暴言や暴力を振るうようになり、頭部を殴られた忍容疑者が6針縫うけがを負ったこともあったという。調べに対し、両容疑者は「長女を精神科で診察させたところ、統合失調症と診断されたが、それが誤診だったため長女が不満を募らせ、暴力を振るうようになった。診察を受けさせたことへの負い目などから、長女の暴力に抵抗できなかった」と供述しているという。
両容疑者は13日午後、山梨県警富士吉田署に、「娘を殺害した」と自首。通報を受けた町田署員が自宅で由香さんの遺体を発見した。両容疑者は「富士山の樹海で心中しようと思ったが、怖くなった」と供述している。
この新聞記事を見る限り、いかにも殺害に至った経緯が短絡に思える。暴力が長期間続いたようでもなく、たかが女の力、両親が抗し得ないものでもなかろう。「診察を受けさせた負い目があった」というが、親が子どもに負い目を感じる必要がどこにあるのか、そういう親の態度が娘の暴力をエスカレートさせたのではないかとさえ思える。我が子を殺害するに至るまで親も苦しみ、万全の対策を講じたその行き着く先がこれしかなかったと言えるのだろうか。
しかし、これは実際にその状態を知らない第三者の無責任な批判である。きっと愛する我が子を自らの手で死に至らしめた親の苦しみは、とうてい分かるわけがない。家庭内暴力はよく聞く話であり、過去にもこれに似た事件がたくさんあった。思いあまって親が子を殺す場合、暴力がエスカレートして子が親を殺めるに至ったケースなど、いずれにしても家庭内だけで対処することは不可能に近いことだ。親が子を押さえつけるだけの威厳も力もなければ、ただ嵐の通り過ぎるのを待つだけという無力さに苦悩の日々を重ねたことだろう。事件が起きて警察を始め、関係機関は事の重大性をいうが、結局何の解決策も見出せないでいる。
天童荒太原作の「家族狩り 第1~5部完結」という本がある。主人公は高校教師、刑事、児童相談所女性職員の3人である。連続して発生する一家皆殺し事件の捜査を軸に、捜査の過程で登場する事件関係者や捜査官とその家族を中心とする様々な人々の抱える心の問題を浮き彫りにしていく。会話の無い夫婦、親子、幼児虐待、不登校、ひきこもり、家庭内暴力、二重生活、児童相談所、孤児院、電話相談室…などなど崩壊しかけている家族とそれをとりまくいくつもの社会問題、久しぶりに読み応えのある本であった。
『東京で一家の惨殺死体が発見される。かねてから家庭内暴力をふるっていた息子が両親と祖父を、残忍極まりない方法で殺害した後、自殺を図ったものと考えられた。しかし、刑事の馬見原は「子供が親をこんなふうには殺せない」という信念のもと、捜査結果に疑念を抱く。一家惨殺死体の第一発見者は高校教師の巣藤浚介……そして彼の学校の生徒の家族が似たような惨殺死体で発見される。児童相談センターで心理職員として働く氷崎游子は、駒田玲子の問題で心を痛めていた。彼女の父は普段は普通だが、酒を飲むと娘に暴力を奮う、みかねて保護したのだが、父親は何とか取り返そうとしつこい。しかも玲子はあれだけされても父を求める様子……』。新潮社から単行本でも出版されている。ぜひ一読をおすすめする。
由香さんは今月に入って家族や友人関係への不満などから、両容疑者に暴言や暴力を振るうようになり、頭部を殴られた忍容疑者が6針縫うけがを負ったこともあったという。調べに対し、両容疑者は「長女を精神科で診察させたところ、統合失調症と診断されたが、それが誤診だったため長女が不満を募らせ、暴力を振るうようになった。診察を受けさせたことへの負い目などから、長女の暴力に抵抗できなかった」と供述しているという。
両容疑者は13日午後、山梨県警富士吉田署に、「娘を殺害した」と自首。通報を受けた町田署員が自宅で由香さんの遺体を発見した。両容疑者は「富士山の樹海で心中しようと思ったが、怖くなった」と供述している。
この新聞記事を見る限り、いかにも殺害に至った経緯が短絡に思える。暴力が長期間続いたようでもなく、たかが女の力、両親が抗し得ないものでもなかろう。「診察を受けさせた負い目があった」というが、親が子どもに負い目を感じる必要がどこにあるのか、そういう親の態度が娘の暴力をエスカレートさせたのではないかとさえ思える。我が子を殺害するに至るまで親も苦しみ、万全の対策を講じたその行き着く先がこれしかなかったと言えるのだろうか。
しかし、これは実際にその状態を知らない第三者の無責任な批判である。きっと愛する我が子を自らの手で死に至らしめた親の苦しみは、とうてい分かるわけがない。家庭内暴力はよく聞く話であり、過去にもこれに似た事件がたくさんあった。思いあまって親が子を殺す場合、暴力がエスカレートして子が親を殺めるに至ったケースなど、いずれにしても家庭内だけで対処することは不可能に近いことだ。親が子を押さえつけるだけの威厳も力もなければ、ただ嵐の通り過ぎるのを待つだけという無力さに苦悩の日々を重ねたことだろう。事件が起きて警察を始め、関係機関は事の重大性をいうが、結局何の解決策も見出せないでいる。
天童荒太原作の「家族狩り 第1~5部完結」という本がある。主人公は高校教師、刑事、児童相談所女性職員の3人である。連続して発生する一家皆殺し事件の捜査を軸に、捜査の過程で登場する事件関係者や捜査官とその家族を中心とする様々な人々の抱える心の問題を浮き彫りにしていく。会話の無い夫婦、親子、幼児虐待、不登校、ひきこもり、家庭内暴力、二重生活、児童相談所、孤児院、電話相談室…などなど崩壊しかけている家族とそれをとりまくいくつもの社会問題、久しぶりに読み応えのある本であった。
『東京で一家の惨殺死体が発見される。かねてから家庭内暴力をふるっていた息子が両親と祖父を、残忍極まりない方法で殺害した後、自殺を図ったものと考えられた。しかし、刑事の馬見原は「子供が親をこんなふうには殺せない」という信念のもと、捜査結果に疑念を抱く。一家惨殺死体の第一発見者は高校教師の巣藤浚介……そして彼の学校の生徒の家族が似たような惨殺死体で発見される。児童相談センターで心理職員として働く氷崎游子は、駒田玲子の問題で心を痛めていた。彼女の父は普段は普通だが、酒を飲むと娘に暴力を奮う、みかねて保護したのだが、父親は何とか取り返そうとしつこい。しかも玲子はあれだけされても父を求める様子……』。新潮社から単行本でも出版されている。ぜひ一読をおすすめする。
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