つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

『高齢者は弱者ではない?』・・・

2008-03-02 | 怒っています

 先日、地方紙にお茶の水女子大名誉教授・袖井孝子氏の時評『高齢者は弱者ではない?』という記事があった。『高齢者は弱者ではない?』と、このクエスチョンマークが微妙で、読んでいくうちに高齢者にとっていかに生き辛い世の中であるかを再認識させられた。(長文なので一部省略)


 ―前略―。日本経済が好調なころには、高齢者は社会的弱者であり、福祉の対象とみなされた。しかし、景気がいっこうに回復せず、社会保障財政が逼迫するようになると、「高齢者は弱者ではない」という言説が政府の手によって流されるようになった。現役世代にかかる負担を軽減し、若者が将来に対して抱く不安を解消するためには、高齢者も応分の負担をすべきだ、ということである。
 たしかに高齢者のすべてが社会的弱者というわけではない。―中略―。総務省「平成17年家計調査」によると、世帯主年齢が65歳以上の世帯の平均貯蓄額は2484万円で、全世帯平均の1728万円の1.4倍。貯蓄額4000万円以上は、高齢者世帯では19.6%だが、全世帯平均では10.7%とほぼ2分の1。―後略―。
 高齢者にも応分の負担をという方針が具体化されるようになったのは、2000年に発足した介護保険制度からである。介護保険制度では、年金受給者が年に18万円を超える高齢者からは、保険料が年金から天引きされることになった。年金から保険料を徴収するのであれば、逃れることはできない。同じ方式が、来年度から実施される75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度にも適用されることになっている。かくて高齢者自身の手に渡る年金は、ますますやせ細っていく。
 これまで既に受給している年金には手を付けないのが原則であったが、2004年の年金改正によって、人口構成の変化や景気変動に合わせて、受給中の年金にも調整が加えられることになった。同じ年の税制改正によって、年金に対する課税の強化と年収1000万円に満たない高齢者に対する一律50万円の所得税の老年者控除が廃止されることになった。
 また、2005年の介護保険法の改正によって、それまで無料であった介護老人福祉施設や介護老人保健施設における部屋代や食費などのいわゆるホテルコストが徴収されるようになった。介護保険法の改正にともなって、各地において介護保険料の値上げが行われ、要介護度の低い人へのサービスが抑制されるようになった。さらに、医療費の自己負担分の増額や生活保護費における老齢加算の廃止・減額など、これまで高齢者が享受してきた特権が奪われるようになった。―後略―。
 日本経済の苦境にある今日、高齢者への支出をある程度抑えるのはやむを得ないだろうが、高齢者の多様性に目を向けることなく、一律に負担を増やし、給付を削減すれば、かえって生活保護受給者を増やし、医療難民や介護難民を増やすことになりかねない。「寝ている病人の布団をはぐ」ようなことは、絶対に避けるべきである。


 これをみると、2000年に発足した介護保険制度以降、毎年毎年、何かしらの法改正で高齢者への締め付けが厳しくなっていることがよく分かる。高額所得者や資産を保有して悠々自適に暮らしている人はほんの一握りである。また、夫が健在なら年金もそこそこあるが、寡婦になればそれまでの6割にも満たない額に減る。それも高齢化・少子化が続けば、やがては5割を切ることもあり得るという。資産を保有しない低額所得者は、国にも家族にも頼れないとしたら、早く死ねといわれているのと同じである。こんな世でも、長生きしたいと思う人がいるだろうか。

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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (うらら)
2008-03-02 23:20:15
≫これまでの人生で一番不幸に思う事は長生きし過ぎた事
と以前にも書いたかも知れませんが、あるお年寄りが嘆いたとのこと・・・
私の両親を見ていても、年老いて、どうしてもやれない事が次々と起こります、
でも健康でおれさえすればせめて楽しい老後は送りたいものですわね~それさえ奪われかねない事態が起こっています、今までの手厚さから手のひらを反す事態。
政策の貧弱さが露呈してそして老人にシワ寄せと来たものですね(悲)
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弱者ですとも (ばーば)
2008-03-03 01:00:15
弱者ではない方も居られるとは思いますが、基本的には弱者にならざるを得ないと感じます。
その中でも税制が変って、収入が無い所、或いは少ない所からもむしり取るようになってきたのには驚愕です。 高額年金を保証されている政治家や官僚たちが作る税制なのですから人の痛みの解りようも無いのでしょう。
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Unknown (オールドレディー)
2008-03-03 09:13:23
♠うららさま
≫これまでの人生で一番不幸に思う事は長生きし過ぎた事
まさにそれです。全く同感ですと声高に言いたいです。
私の母方の叔父叔母が高齢になって娘の世話をうけていますが、聞けば聞くほど大変な状態です。
もう親だけでは暮らせないのに、施設に入れたくてもどこも満員で入れません。有料ホームなんてとんでもない。
その状況を聞くにつけ、おのれの未来が不安になります。
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Unknown (オールドレディー)
2008-03-03 09:35:20
♠ばーばさま
今の物価でゆけばなんとかなるが、20何年先には物価は1.5倍になるとか…。
あと30年近く生きるとするとどうなるのでしょうかね。
収入は増えることはないが、負担は増える一方、そして物価は上がるとなるともうお手上げですね。

唯一お金の入る可能性のあるのが宝くじ。売り場では高齢者の姿が多く見られます。
だれも思うことは同じで、わずかな期待をかけて宝くじを買うのでしょうね。

私ものほほんとしていられない思いです。でも寿命は分からないのに今から節約して楽しみもない老後ではつまらないし…。
今のうち少しだけ楽しんで、70歳過ぎたらおとなしくみみっちい暮らしをすることにしました。
宝くじが当たるか、罰が当たって死ぬるか、どちらでもいいです。
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Unknown (はなはな)
2008-03-03 15:38:09
こんにちは!
とても素敵なテンプレートですね!!
誰でも歳は重ねていく訳ですから、携わってる方々には、我が身に置き換えて、ご高齢の方々の気持ちにそった対応を、早急にして頂きたいものです。
明るく生きたいのは、誰もが望むことですし、先への希望を失わせる様な事を、同じ人間なら、してはいけないと思うのですが・・・。
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Unknown (オールドレディー)
2008-03-03 18:42:56
♠はなはなさま
メルヘンチックでしょう。すっかり季節は春になりました。
季節は春でも、なかなか「この世は春…」って気持ちにはなれませんが…。

国のお偉い先生方には庶民の暮らしなどどうでもいいのでしょう。自分たちは国会で好き勝手に言い合っていればお金になるのですからね。
誰でも政治家になりたがるのがよく分かります。

お役人の無駄遣いのニュースを聞くたびに、はらわたが煮えくりかえる思いです。
もっと国民が怒ってもいいのでしょうが、日本の人々は気のいい人たちですね。

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今日はこれから (ヒキノ)
2008-03-04 08:48:54
確定申告に行ってきます。何もないので簡単です。10分もかかりません。ネットで申告する方法を教わってきます。
何もないというのは収入がしれてるという事です。
背伸びしない生活をと考えていますがなかなか改まりません。各種の控除がなくなり丸裸。物価だけは上がっていきます。
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Unknown (オールドレディー)
2008-03-04 09:59:44
♠ヒキノさま
e-Tax は市役所へ行って手続きをしなければならないので面倒だし、ごくわずかなので普通の確定申告コーナーで作成します。それを2部印刷し、必要な添付書類を貼って普通郵便で送付します。
2部と切手を貼った封筒を同封すると受領印を押した控えを送り返してくれます。
打ち込むところが限られていて、勝手に計算してくれるので簡単ですよ。
私は2月19日にもう済ませました。4万2千円還付されます。得した気分です。
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受け入れた時が弱者。 (テニーズ)
2008-03-04 11:00:19
 こんにちは。

 年齢を基準に法律が決め付け、色んな制約が
あり、それに呼応して周囲も年寄り扱いをし、
私達もそれに応じたりする場合があります。

 私は3、40代の男性としばしば腕相撲を取り
ますが、勝率は80%です。そして仕事も含め
現役です。
特にテニスは一般の部でレッスンを受けています。
ですから、テニススクールでは決して年寄り扱い
はしないのです。

 そんな事もあり、私自身高齢の実感が無く、弱者
なのかとも思う事も時々ありますが、論じられる
弱者に納得し難いのですよね。

 法制度は仕方が無いにせよ、後は健康体と心の
持ちようなのではと思っていますが、無理があり
ますかね・・・。




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Unknown (オールドレディー)
2008-03-04 13:27:51
♠テニーズさま
要するに経済的な弱者というのではないかと思います。
健康ではテニーズさんのように若い者にも負けないお元気な方はたくさんおられます。
昨夜のテレビで80何歳の現役ウエイトリフティング選手を取り上げていました。
また100歳の現役司法書士、84歳の助産婦など、ご立派に社会に貢献しておられる方がいます。

欲を言えば、肉体的にも経済的にも恵まれたいと、弱者と呼ばれたくないと誰もが思っているでしょうね。
私もそう願っています。
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