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片雲の風に誘われて

自転車で行ったところ、ことなどを思いつくままに写真と文で綴る。

4/4 町田康『実録・外道の条件』読了

2025-04-04 21:46:58 | 読書
 芥川賞受賞ご第一作と帯にある。1998年から2000年まで雑誌に連載したものらしい。先日の受賞作は読むのに苦労してなおかつ何がメインの筋なのか理解できなかった。しかし、町田が最近出した『俺の文章修行』を読み始めたら分かりやすくスッキリした文章だった。内容は独特ではあるが読み応えありそうだった。そこで一緒に借りてきた上掲の小説を先に読み始めた。著者が文筆家としてやっていこうとしているところへ持ち込まれるそれに関するオファーについて書いている。その中に如何に常識と懸け離れた要求や条件があるか。またその話を持ってくる人たちの異常さなどだ。さもありなんと思えるが、それにしても少し極端に過ぎるのではと感じた。また彼の小説を読んでみようと言う気になった。


 孫たちはこの家が気に入ってくれているのか終始テンションが高いままだ。老人ばかりの静かな暮らしに浸っていたところへ、さらにパワーアップした男の子が出す声や動きは近くにいることさえしり込みしたくなるほどだ。そこで海に連れ出した。風もなく穏やかな天気で、少し離れたところに座って遠くから眺めているとあの騒乱が嘘のようだ。エリーは時々離れた私のところに駆けてきて、様子を見てまた孫たちのところへ戻ってゆく。孫たちも広々とした海岸は落ち着くようだ。
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3/26 町田そのこ『星を掬う』読了

2025-03-26 22:41:57 | 読書
 現在は眼鏡が出来上がるのを待っているため遠くへは行くことができない。かといって庭や畑の仕事もする気になれない。確定申告も途中までやり始めて、マイナンバーカードで各種の証明書を取得するのに手続きが必要で、その申請をしたところで止まってしまっている。そこで読書の一日になった。読みかけの本もあったが、簡単に読むことのできる本として掲示した本を選んだ。この作家の本はまだたくさん残っているので適当に選んできたのだ。
本作は母娘の相克の話だ。基本的に女性が生きにくい社会の中で、女性にかかる圧迫を描いている。幼い時に母親と引き離され、自分は母親に捨てられた娘だと思い続け、誰にも愛されていないと思っていた主人公が、やっと巡り合えた最愛の男と思った男が独占欲の強いDV夫で、その男から逃げながら人生に絶望してゆく。話としてはあまり好きな筋ではないが、作家の巧みなストーリーテリングで一気に読み終わった。確かに着想も話の展開も巧みだ。中には少し無理付けではと思うところもあるが読まされる。一日楽しい読書ができた。
エリーの散歩で東の堤を歩いた。各地で桜が開花したとの知らせが来る中、ここの堤では何時もの早崎の木が少し桜色になりかけている他は全く蕾も膨らんでいない。
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3/19  町田そのこ『宙ごはん』読了

2025-03-19 22:40:32 | 読書

 かなり奇妙な設定の小説だ。生みのお母さんと育てのママがいる少女宙の成長物語だ。父親違いの姉が生んだ宙を、姉には育児する能力がないと妹が引き取り育てている。しかし、宙はお母さんを月一ぐらいで訪ね親しくしている。ママには宙より二歳上の従妹がいる。宙が小学校に入るころママの亭主がシンガポールに赴任することになる。ママ家族とシンガポールへ行くか日本に残りお母さんと暮らすか、宙の判断に委ねられ、宙は日本に残りお母さんと暮らすことを選ぶ。お母さんは絵を中心としたアーティストで複雑な人間関係の中にいる。その一人に高校生の頃から彼女にあこがれを抱いている後輩の男性がいる。彼は料理人をしている。この料理人が宙の父親代わりのように面倒を見てくれる。宙もこの男の料理が好きで小さい時からその指導を受けて育つ。この宙、お母さん、料理人の周りに、訳ありの母子や同級生の女の子が絡み合ってくる人情噺だ。人情噺と言っても登場する多くの女性たちは夫や父親から圧迫されてかなり極限に近い状態に置かれている。これを料理の力で解決してゆく。よくこんなシチュエーションを思い付くなと感心する。また語りも上手い。町田は大した書き手だ。

 最近どうも視力が落ちてきたようだ。伊豆を走った時も信号機の下の地名表示や分かれ道での案内表示が瞬時に判読できず戸惑った。そこで、白内障が進行したのかと思い眼科の診断を受けた。すると、白内障は未だ病的の範囲に入るところまでは進んでいない、手術の必要もない。視力の衰えは加齢によるもので、レンズで矯正すれば1.2まで回復できるから眼鏡を使えと言われた。そこで眼鏡屋に行き一番安い眼鏡を注文した。右目は遠視と乱視、左は近視と言われ、片方は見えるものを大きくし、反対派小さくする必要があると言われた。あまり見えるようにすると顔を動かしたとき風景が揺れて気分が悪い。そこで妥協して0.9の眼鏡を調整した。裸眼では0.6だった。運転の時だけ使うようにする。
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3/18 万城目学『悟浄出立』読了

2025-03-18 11:16:37 | 読書

  著者が少年の頃から愛読している中島敦の作品には古代中国の歴史に着想を得た作品が多い。その中に『悟浄出世』と『悟浄歎異』の二つがある。彼が高校生の時現代国語のテストにこれらの中から問題が出題された。その面白さに引き込まれたという。中島はこの二編を『わが西遊記』と題して残している。しかし彼は33歳の若さで没し、この続きを残していない。そこで万城目がその続編をと書いたのが表題の『悟浄出立』だ。私は中島の二編を読んだ記憶がないので、万城目作が続編たり得ているかは判断できない。
 この文庫は、中島にインスパイヤーされて、中国古典に基く短編が収められている。中で印象的だったのは『父司馬遷』だ。語り手の司馬遷の娘栄が12歳の時、父司馬遷は匈奴に寝返ったとして非難された李陵を宮廷で独りだけ擁護した。それを罪に問われ皇帝より死を賜った。しかし、宮刑を受け入れ死を免れた。そして3年後解放された。しかし宮刑を受け入れてまで生に執着した司馬遷を家族は恥じ、息子は名を変え、妻は別の男に嫁いだ。釈放され昔の家に戻った司馬遷は独りだ。しかし娘栄は父を確かめたくて訪ねた。髭も亡くなり、顔も丸くなって男らしさが失われた父の姿に驚いた。驚いて家を飛び出した。家に帰る途中兄を訪ねると、兄も釈放された父を訪ねていた。兄はその父を、あれはもう人ではない、抜け殻だと唾棄するように言う。その夜寝について、昔、父に自分の名前の栄とはどんな字かと聞いたことを思い出す。教えてくれながら、なぜこの名にしたかも話してくれた。
 3百年前の斉の国に義に篤い男がいた。主に命じられた暗殺を行い、自分の身元が知れると関係者に類が及ぶと己の顔を潰し自ら死んで身元を隠した。その屍は街に晒された。その話を伝え聞いて、男の姉が街に来た。弟の屍をかき抱き、「士は己を知る者のために死す!」と叫び、弟は義に篤く、己を信頼してくれた人のために命をささげたこと、姉の自分に類が及ぶことを恐れてこのような無残な姿で死んだことを周りに告げた。そして弟の名前が人知れず埋もれることを悔むと天に向かって呼びかけ自ら命を絶った。この姉の名が栄だった。父がこの国で一番尊敬する女性の名、誰よりも真実を貫く勇敢さを持った女性だ。
 その後栄は司馬遷が立ち直るきっかけを与え、その結果司馬遷は『史記』を残すことができた。
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3/8 町田そのこ著『52ヘルツのクジラたち』読了

2025-03-07 18:16:31 | 読書
  最近同著者の新刊『月とアマリリス』が書評界でたびたび取り上げられていて彼女の名前を知った。どんな作品を書いているのだろうと図書館の書架を探した。当然新刊はなく既刊が数冊並んでいる中から借りてきた。2021年本屋大賞受賞の帯に釣られて。
読み始めてみると、書名や筋書きに何となく聞き覚えが感じられた。24年春に映画化されて公開されていた。そのCMがどこかに残っているのだろう。
余り幸せとは言えない育ち方をした数人の女性が何とか立ち直り社会性を取り戻してゆく話だ。確かに映画化されるだけあって、人情噺として大変よく構成されている。話の展開も快適だ。
 朝早く今までの車に取り付けられている保険会社のドラレコを取り外してもらうため磐田の車屋に行った。そこで待っている間に読み始めた。帰ってからもそのまま読み続け夕方エリーの散歩に出る前に読み終わった。
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