
川上は2008年に芥川賞を受賞している。このとき読んでいるかもしれないが記憶にはない。本作が初めてだと思う。かなり読み応えのある小説だった。最近読んでいる作家の本のようにすらすらと筋を追って読み進めると言うようにはいかなかった。台詞一つ一つが重い。読み終わるまで3・4日掛かった。彼女の作品は英国などでよく読まれているようだ。最近の英国における翻訳本の中で日本作家の占める割合は4割近くになっていると言う。それに彼女も大きく貢献している。
筋は、主人公花がネット記事で、黄美子という女性が未成年の少女を監禁しケガさせたことで裁判にかけられたことを知る。その黄実子は凡そ20年前女子高生だった花が一緒に暮らした女性だった。黄美子は母子家庭だった花の家に時々滞在し知り合った。その後母親が男と暮らし始めたため、黄美子と同居し始める。黄美子の始めるスナックで一緒に働く。その内同世代の未成年の少女二人も加わる。しかしそのスナックが火事になり全員の生活に必要な稼ぎができなくなる。黄美子も発達障害的なところがあり、二人の少女も指示待ちで、花が一人で方便を考えねばならなかった。そこで黄美子の知り合いのヤクザ映水に仕事の紹介を頼む。彼の持ってきたのが、クレジットカードや銀行カードのキャッシングだった。大きな稼ぎになった。しかし最後には四人の関係が崩れる。
表題の『黄色い家』は黄美子が風水に凝っていて、ある方角にお金の色の黄色を祀るとお金ができると花に聞かせ、それから花は家の中に黄色のものを集め並べ始め、最後には壁まで黄色く塗り始めるところから来ている。
川上未映子の他の作品も読んでみたくなった。最近は英国のブッカー賞の候補になった『ヘブン』なども話題だ。