歯ごたえのある小説だった。嚙み砕いて心に落とし込むのに難儀するようだった。
大阪の下町で、スナックで働く母親と姉妹。小学生の頃から母親の店で洗い物をして暮らす。年上の姉は客席で働く。夏子が七歳の時、父親から母娘で逃げてきた。夏子は小説家になろうと二十歳ごろ東京へ出てくる。姉はそのままスナックでの仕事を続け、ろくでもない男の娘を育てるシングルマザーだ。
夏は38歳になる頃、子供が欲しくなる。しかし夏にはそれをかなえてくれるパートナーとなる男はいない。かつて高校生の頃から付き合っていた男とは何年か付き合って性交渉も持ったが、彼女はそれが厭でたまらなかった。その結果その男は離れていった。それ以来男はいない。子供は欲しいが男と性交渉しての妊娠は厭だ。人工授精を考える。しかし、日本では夫婦関係を持たない女性や女性同士のカップルの人工授精は許されていない。オランダでは行われていると言う。日本で行われている人工授精の精子提供者は、多くがそれを行う大学病院の医学生が多いらしい。しかし、提供者の名前は伏せられている。生まれてきた子供が父親について知ることはできない。ネットで調べていると、人工授精に関する情報が溢れている。その中に人工授精を考えると言うまともそうな集会を見つけ参加してみる。主催しているのは人工授精で生まれた子供たちだった。実の父親について知りたいと言う強い希望を持っている。しかし、今の日本でそれをかなえることはほとんど不可能だ。そこで彼らの活動の目的は日本の法制度を変えて、精子提供者の情報を生まれた子供が一定の年齢になって知ることを希望すれば可能にすることだった。
夏子の前に現れた男は医者で夏子と同じ年代。大人になるまで父親が実の父親だとは知らずに来た。ある時それを知り動揺する。結婚する予定のパートナーがいたが、人工授精で生まれたこと、実の父親を知らないことを告げると彼女の家族から大反対されて破談になる。また会の世話をしている女性は子供の頃から義父に性的虐待を受けて育っている。男は義父に大変かわいがられ幸せに育ち医学部も卒業させてもらっている。夏子の考えている人工授精については批判的だ。またネットで、精子を提供すると言う男もいるが多くがいかがわしい男ばかりだ。
命とは何か、父親とは何か、命を繋ぐとは、多くの問題が夏子の頭に満ちてくる。小説家としての夏子の周りにも、シングルマザーで娘を育てている友達もいる。彼女にとって男は単に娘を得るためだけの手段で、子供ができたらさっさと別れた。
夏子は、母娘だけの家族で貧しいがそれなりに幸せに暮らしてきた。姉と姪の家族もそれなりに暮らしている。父親の存在は必要としていない。
今週のキャンピングカー旅で使うつもりの焚火台を試してみた。多くのキャンプサイトが今では直火が禁止されている。この焚火台の下に不燃シートを敷いて火を楽しむことになる。
自動車学校横の土手に咲くヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)。北米大陸からの外来種と言う。月見草に似ているが昼に咲くのでこの名前のようだ。色は白から赤まであるようで、この群れの隣はもっと薄いピンクだった。