私みたいなカメラヲタクは、往々にしてエントリーモデルを避けて通る傾向があります。
ウデより見栄によるところが大きいのですが、そんな事はさておき。
中でもダントツに忌避されているモデル(と私が思っているモデル)が「EOS kiss」シリーズです。
なぜかって?
だって名前が「キス」ですよ?
小学生風にいえば「チュウ」ですよ?
漢字で書いたら「接吻」ですよ?
嫌ですよ、こんなネーミングのカメラは。
「接吻」の上位モデルは「愛撫」ですか?
その上位機種は...阿呆くさいのでそれ以上は考えるのを止めよう(笑)。
さて、そんなEOS kiss Digitalの借り物が私のところにやってきました。
モデルは、1世代前にあたるEOS kiss Digital X(以下、キスデジXと略)です。
現行モデルはX2に進化しています。
Kiss Fなんていうカメラもあるらしいですが、黒歴史になっていますのでスルー。
さっそく我が愛機 EOS-1Dsと並べてみました。
ハイエンドとローエンドの競演。
冗談みたいに別世界の物体ですね(笑)。
同じシリーズのカメラとは思えません。
最初に述べたように私はキスデジシリーズとは真剣に対峙したことがありませんでした。
店頭でちょこちょこっと触ってみて「あー進化してるねぇ、良く出来てるねぇ」くらいの感覚で見ていたのです。
ここでいう「良く出来てる」は決して心底褒めている訳ではないですね。喩えていうならば、100円ショップで買ってきたお得感溢れる雑貨を見て言う「良く出来てるねぇ」に近い感覚です。
要するに、「しょせんパパママ&初心者向けの“まやかしデジタル一眼レフカメラ”だろ?」と高をくくっていた訳です。
しかし。
実際に使ってみて、驚きましたね。
なんじゃあこりゃあ!?
凄ぇ充実度じゃねぇか!!!
一眼レフに普通に要求される機能性能が恐ろしくコンパクトに凝縮されているぞ!!!
カメラヲタクな私が日頃注目していた40Dや50Dや5D MarkⅡにはまったく「本気」が感じられなかったのですがそれも道理です、キャノンのアマチュア向けカメラの「本気」は、キスデジに集約されていたんですから!!!
定番中の定番ともいえるキスデジに対して「何をいまさら!」という感じですが、とにかく「写真を撮る」のには必要十分な内容のカメラです。
現代版“A-1”とでも呼びたいくらいです。
「そこまで言うテメェはどんな写真撮ってやがるんだヨ」という方、実写画像はひとまず
12/20のエントリをご参照ください。
ショボくてすみません、こんな写真ならキスデジでも充分ですよええ。
簡単にインプレ。
ボディはプラの良さを生かした造りで、値段を考えたら上々の質感だと思います。ホームビデオカメラを見る感覚であれば◎です。
立て付けも想像以上にしっかりしています。マウントも金属製です。ただし大口径レンズを使うにはちょっと華奢、高さ方向のサイズの関係もあって扱いづらいです。
大きさは、男性には小さすぎるのではないかと思います。特にグリップ部は気になりましたね、手の大きい私には合いません。かといって縦位置グリップを付けるのも格好的に宜しくないので難しいところです。まあ私はもともと「一眼レフは大きくて重くあるべし!」が信条のカメラ変態なので、ここら辺はちょっと辛口にならざるを得ません(笑)。
ファインダーは必要充分なレベル。上位機を知る身としてはチョット辛いところですが、コンパクトデジカメからの移行組の初心者さんのハートを掴むには充分な出来といえましょう。
シャッター音は「シャコ」という感じでした。40D/50Dの「パコパコ」とも5D MarkⅡの「カッポンカッポン」ともまったく異質ですが、共通していえるのは「激しく萎えるシャッター音である」という点。キャノンのアマチュア向けカメラに良質なシャッター音を望んではいけない事を再認識しました。
連写速度はスペックでは約3コマ/秒。2.8コマのEOS-1Dsと並べて連続シャッターを切ったら感覚的には互角でした。立派なもんです。
画質は、必要にして十分。
キスデジはエントリー向けだから必要以上に“くっきりはっきり”のメリハリ路線かと思いきや、案外と落ち着いた発色でした。シチュエーションによっては、フルオート&JPEG撮って出しだと地味に感じるかも?という感じ。
EOS-1Dsと比べると奥行き感とか透明感がだいぶ違う気がしますが、一般的には問題になるレベルではないでしょうね。ブラインドテストをやったら、私は余裕で間違えそうです(笑)。
気になったのは、露出がはっきりとアンダー傾向な点。EOS-1DsもややアンダーですがキスデジXはそれ以上に目立ちます。Webで情報収集したところ、個体差という訳ではないようです。ここはひとつ積極的に露出補正をしてやると良いのかなと思いますが、キスデジの使い方として正当かどうかは気になったり。
高感度は、私の基準ならISO 800までは常用出来ます。1600にしてもEOS-1Dsの400程度(私のいい加減な感覚ですが)。優秀っす。
機能的には、昔風にいえば「フルスペック一眼レフ」、普通に考えられるあらゆる機能が網羅されています。
特に驚いたアイテムが3つ。
1.視度補正機構!
2.A-DEPTH(深度優先AE)!
3.絞り込みボタン!
...エントリー機にまでこんな機能が付いてんのかよ!?(笑)
もちろん、深く使い込む事を考えると不足を感じる点も多々見受けられます。
ざっと書き出してみますと、以下のような感じかと。
・バッファ容量小。
・スポット測光がない。
・露出補正範囲が±2EV
・シャッター速度上限が1/4000秒
・サブ電子ダイヤルがない。
・ファインダーが見づらい。
・シャッターのキレが良くない。
・連写速度が遅い(?)
・AEがアンダー気味。
・サーボAFのヒット率がイマイチ。
・大口径レンズを装着するにはボディが華奢。
...うーむ、なんか言いがかりみたいだなぁ。
私としてはこの中で本当に困るのは、スポット測光とバッファ容量くらいではないかと思います。
それ以外はウデで、もとい使い方の工夫で(笑)カバーできる可能性がありそうだし、だいいち売価5万円程度のエントリーモデルに求めるべき要素ではありませんわな。
私なんかが撮るには実はキスデジで十分なことがよく分かりました(^_^;
そんなわけで、EOS Kiss Digital X、けっこう気に入りました。
奥さんも気に入ったらしいです、なにせわが家においては「デジタル一眼レフ=EOS-1Ds」ですからねぇ、さすがにアレを使うママはちょっとどうかと思います。
で、キスデジX、絶賛しつつもやっぱり私はあんまり買いたくないんですよねぇ。
なぜって?
致命的な欠点が。
それは、やっぱり名前です。
「接吻写真機」はイヤなんですよ。
ファインダーに口紅が付いていそうで...あぁそれはそれで良いか(笑)。
日本でも「REBEL」にすりゃいいのに、と切に思いました。