
Aさんから電話があった
前に顔を合わせたのは いつ頃だっただろう・・
半年以上? いや もっと前の事だったかもしれない
同じ町内に住んでいるけれど 我が家との間には山坂があるので 用事がないと間遠になってしまう
私が以前 畑をしていた時 その近くに家があるAさんにはよく教えてもらった
釣りが趣味のAさんと夫は 何度か一緒に釣りに行ったこともある
「 どうしてますか? 」という私の問いに
「 それが 歩けなくなっちゃったんだよ 」と Aさん
話し方はのんびりしているが その言葉の持つ意味を 私は頭の中で分析してしまう
年齢は夫よりもずっと上だが Aさんも慢性腎臓病だからだ
いつも季節のもの フキノトウやら ミョウガやらを持って来てくれるのに
ここしばらく間遠になっていたのは 脚が悪くなっていたからだったのだ
「 ほら あの白いアジサイが咲いたんだけど 持って行けないんだよ 」
ああ そうか・・
ずっと前に 私があげたアナベルの花株を Aさんは自分の庭に植え 毎年花が咲くと我が家に持って来てくれていたことを思い出した
「 明日 頂きに伺うわね 」
翌日は 前日の肌寒い雨の日からは一転し すっきりと晴れ渡った爽やかな初夏の日
Aさんの玄関のチャイムを押したが 鳴っていないらしい
ドアをトントン叩き 声を掛けると やっとAさんが現れた
「 庭が草だらけで・・ さっき 少し片づけたんだけど・・ 」
Aさんにとっての一番の気になる問題は 庭が荒れ放題だということなのだ
玄関の外の石段に腰を掛け Aさんの話を聴いた
寝たり起きたりの奥さんと Aさんと 息子さんの三人家族
危なっかしいが微妙にバランスが取れていて 日常生活は何とか過ごせているらしい
Aさんは介護認定を受けているので ケアマネさんが1ケ月に1度は来てくれるそうだ
前よりも顔色が悪く 表情が乏しくなっているAさんが気になるが
治療方針は本人が決めている事なので余計なことは言うべきではない
私の為に切っておいてくれたアナベルの花を貰って帰ることにした
花を手渡しながら「 水に入れて置いたのだけど 萎れてしまったね 」と Aさん
「 アジサイって意外と水揚げが難しいのよね でも生き返らせる方法を知っているから大丈夫 ! 」
家に帰り アナベルの茎を切り 熱いお湯に数分浸ける その次に冷たい水に!
これで 首を垂れていたアナベルはシャキッとしました
今 咲いているこの花を 最高に美しい状態にして記憶に留めてあげること
それが私にできること
庭の手入れもままならなくなって…家族の絶妙なバランス…。それでもアナベルが咲くとMONAを思い出して連絡をくれるのは嬉しいことですね。
今読んでいる本が、200万年前からの人間の進化の過程という内容なので、それだけの間にどれだけの人間が生まれて死んだの?という果てしない時間の流れ…
これを読むとすぐ眠くなります
アナベルの白には合っているかな?