「とん ことり」の音がして

暮らしの中で 絵本と私

あのひの音だよ おばあちゃん

2011-04-19 14:45:59 | 書籍・絵本


  

   あのひの音だよ おばあちゃん  さく・え 佐野洋子 フレーベル館

   ふつうのおばさんとふつうのねこが暮らす家に天才ねこがやってきた。
   そうじもできて、料理もできて、手品もできる。
   でも・・・         (出版社からの内容紹介より)

   おばあさんとねこの会話が絶妙
   偏屈というか にくまれ口というか
   佐野洋子さんはこの使い方がとても巧い
   そして、そこには「愛」がある。
   この人にしか書けないセンスだと思う。
   奔放でいきいきとしていて囲いがない。

 

   『私が社会に出た時、日本は高度成長期でした。日本と共に見えない未来に
    向かって、私もやみくもに働きました。月日は夢のように過ぎてゆきました。
    日本は豊かになりました。私も今日の米の心配をしなくなりました。
    そしてこの国は豊かさと引きかえに何か蝕まれています。
    今、私は言葉をうしなっています。
    生まれた時から美しい絵本を与えられ、美食に慣れた子供たちに私は何を
    云ったらいいのだろう。私も病んでいるのかも知れません。
    「佐野さんはまだ生きているんですか」と云われた64才の私は若い時の勢いも
    野心も失って、シンプルすぎる絵本を作っていました。
    いつの時代も変わることのない願いだったのだと思います。』
                      <ねえ とうさん>児童出版文化賞・受賞式の挨拶の一部より

   

    文藝 「佐野洋子」追悼特集  河出書房新社

    谷川俊太郎×広瀬弦の対談
    一番、身近にいたお二人の会話はとてもおもしろかった。

    今、佐野洋子に言いたいこと
    甦らないでください。(笑)ぜひ。by広瀬弦
    ・・・

    あの庭の扉をあけたとき  佐野洋子

    泣かないで
    泣かないで
    強情っぱりは
    泣かないわ

    は、は、は、は
    は、は、は、は、は
    知らないの

    泣き出すと
    強情っぱりは
    強情に  泣くものよ

    日が昇り 日が落ちて
    ずっとずっと
    泣くものよ

   「そうね」と云えばすむものを
   「はい」と云えばすむのにね

  

    佐野洋子のことを思って 外を歩くと
    なぜか、ねこに出会う。
    今日は荒天候で突然、強い雨が降ってきたりして
    木々の葉っぱをゆらしています。
    「自然っていつだって、ストリップだなあ」とつぶやく
    佐野洋子をふっと感じた。


むかしむかし

2011-04-16 18:45:19 | 書籍・絵本

 
   

   むかしむかし  谷川俊太郎:詩  片山健:絵

      谷川俊太郎の詩に片山健が渾身の絵で応える
      初めての共作絵本
                 ( 出版社からの内容紹介より)


   

      吉祥寺・トムズボックスで片山健さんの原画展を観た。
      いいぞ、片山健
    「むかしむかし」という絵本を購入
      油絵の具の匂いを感じるような迫力ある絵
      むかしむかし から 繋がるいのち

   

    
      今日は調べものがあり図書館へ
      ネットで調べないで 図書館というのが なんとも私らしい。
      肝心の調べものは どうでもよくなってしまい書架を見て回る。

      確か、坂本龍一さんの音楽でドキュメンタリー映画にもなった
      「アレクセイと泉」と「ナージャ」をみつけた。
    ・・・
      いま、おきている原発の問題
      チェルノブイリとは違うのだろうが
      これから先のことは 誰もわからない。
      はやく、笑える日のくることを 願う


     

    アレクセイと泉のはなし    本橋成一 /  写真・文

   1986年 チャルノブイリ原子力発電所で爆発事故が起きた。
     アレクセイの住む村も 放射能で汚染された。
     アレクセイの村は180キロも 離れていたが、もう住んではいけないと
     いわれた。 それでもアレクセイを含む55人の人が残った。
     でも、100年かかって湧き出る「聖なる泉」の水が・・・
    
     アレクセイという青年の目を通して語られる写真絵本

  

   
   


英国王のスピーチ

2011-04-15 16:15:01 | 映画


  

    映画 「英国王のスピーチ」 を観てきた。

    現イギリス女王・エリザベス2世の父、ジョージ6世が主人公の歴史ドラマ
    吃音症を抱えながらも言語セラピストの助けをかりて障害を克服し
    第2次世界大戦開戦にあたって国民を勇気づけるスピーチを披露して
    人心を得るまでを描く

    映画では言語セラピストとの友情が中心に描かれていたけど
    ヒトラーによるポーランド侵略後 国王が対独戦線布告した際の
    スピーチに打たれた。

    『 わが国は歴史上最も重大で存亡のかかった危機に直面している。
      余はいま、一人一人の英国民の家を訪れ、自ら語りかけるつもりで話す。
      この試練の時にあたり、余は国民の冷静かつ断固たる連帯を望む
      今後、つらく暗い日々が待ち受けていよう
      戦争は戦場だけにおさまるまい。
    ・・・・ (このあたりまでしか スピーチを覚えられなかった。)
      必ずやいつの日か神のご加護により我々は勝利するだろう。』

   今回の震災後の天皇陛下のお言葉を思いだした。
      ひとに語るという事
      それはひとに寄り添うということなのだと思う。
      その言葉は希望になる。

   

      とても暖かくなってきた。
      ワンコの散歩で外を歩けば 雑草がいろんな花を咲かせている。
      保育園のこどもたちが楽しそうに遊ぶ公園
      陽射しのなかでのんびりと寝ている猫
      道ばたのあちこちに積もっている桜の花弁
       けやきの新緑 
       時間が過ぎていく

      東京ディズ二ーランドも再開だって
      スーパーには納豆もヨーグルトもあった。
      いろんなことが戻ってくる・・・


2011-04-12 14:03:22 | 書籍・絵本


 

       木  白洲正子 平凡社

      「木」の話 二十選
             日本の木と伝統と人の木に対する関わりについて書かれている。

      
         

      白洲正子 神と仏、自然への祈り

     世田谷美術館の白洲正子生誕100年特別展へ行った。
     桜咲く砧公園を抜けて美術館へ着くと掲揚されている旗は
           震災の犠牲者を悼む半旗となっている。
          「十一面観音娑坐像」など数々の文化財をみる。

     

     展示会にあった直筆の「手を合わせる」
     ・・・
     『手を合わせるというのは、古今東西を通じて、神に祈る時のかたちである。
      そこに十字架とか、マリア様とか、神像や仏像のたぐいがある時は
            わかりやすい。
      人に祈ることを教えるためにそういう目標を造ったのではないかと思うこと
      さえある。だが、盲人の場合はどうするのか。
           自分の心に対して手を合わせることしかできないだろう。
           それをイメージと呼ぶのかもしれないが、心は心が思っているほど
            じっとしているものではない。
            しじゅう妄想を生じたり、右往左往する厄介な代物だ。
           そういう時私は手を合わせる。
     手を合わせていると、右の指先から左の指先へ血が通い、その逆にも
           行くようになって、次第にバランスがとれて落ち着いてくる。
      それは気分だけのことだろうが、今もそういう風にしてこの原稿を書いた。』

     おもわず、メモをとった「手を合わせる」だけど
           恥ずかしいが 読み取れない箇所もあって正確ではないかも・・・



     

      帰りに町で見つけたポスター

      >どういうわけだろう。
              今年は一本の桜と
               じっと向き合う春にしたかった。

     「そうだ 京都に行こう」 とJRさんの電車には残念ながら乗れないけど
          こんな しだれ桜を見たらきっと圧倒されるだろうな

          目の前に何か大きな存在があるのだと思う。
          自然というものへの畏敬と感謝と・・・

          今日もまた余震を2度ほど体感する。
          歩いていたら、あちこちから携帯の警告音が聞こえてきた。
          震災で東日本の地盤が変化しているとか・・・
          福島原発、「レベル7」に引き上げられた。
          深刻度をあらわす数字らしいけど いま、その数字が
          どんな意味をもつのだろう。
          チェルノブイリと比較するけど、どれだけチェルノブイリ事故のことを
          わたしたちは理解しているのだろう。
          そんなことより、いま、とても辛い環境にいる福島の人たちに
          もっときめ細かい支援が必要なのでは・・・

          原発がなんとかなるように、と祈っていた。
          もう原発がどうなっているのか聞きたくないけど
          知らないではすまされないことでもある。
          ただただ、収束を願う
          

       
     
     

      


あなたがいる場所

2011-04-11 17:06:54 | 書籍・絵本


  

     あなたがいる場所  沢木耕太郎 新潮社

  九つの物語で呼び覚まされる、あの日の記憶
  理不尽なイジメにあう少年に前を向かせたのは、赤く染まった白い鳩
     事故で娘を亡くした父親の苦しみを断ち切らせたのは、片腕のない男
     バスを降りたその町で、人々は傷つき憂えながら、静かに痛みを超える。
                                   ( 出版社・紹介文より)

  多くのノンフィクションを書いてきた沢木耕太郎さん、初の短編集
    九つの物語に書かれている人々は ごく普通の暮らしをしている。
    彼らの暮らしはおそらく誰にでも想像が出来る。
    だからこそ、その痛みに寄り添い、彼らの時間を共有していく。
    繰り返される毎日のなかで、いくつもの気持ちの分岐点を超えて
    人は自分を再生していくのだろう・・・
    そこには九つの光があった。

    また、揺れている。
    余震・・・
    どうか、被災地に影響しませんように。

    買い物へ行った町には何百もの、こいのぼり

  

   


まるむし帳

2011-04-09 19:01:36 | 書籍・絵本


  

      まるむし帳   さくらももこ 集英社

   生きている不思議 遠い昔の思い出たち
       くるりと小さく丸まって、にこにこ笑いながら書かれた
       やわやかな言葉と あたたかい絵のハーモニー
                  ( 出版社内容紹介より)
     
     試し読みページ

   ウチでダンゴムシみたいに丸まって 「まるむし帳」 を
       読んでから 公園に散歩に出かけた わたしに
       この中の一編が  一緒に歩いてくれた・・・(笑) 

    『かぜ』

   いつか
       うれしいときに出逢った風が
       世界一周して帰ってきて
       つまらないわたしの肩を
       ポンポンたたくので
       ふりむいたときは
       ゆっくりゆっくり笑いながら
       わたしのうれしかったときと
       いろんな人のうれしいを
       おみやげに持ってたよ

       毎年、歩けないほど花見宴の人でいっぱいの公園なのに
       今年は人出が少なくて、酔っている人もいなかった。
       それでも、手弁当を広げて楽しそうに笑っている人たち
       この場所でこんな花見の宴を見たのははじめてかもしれない。
       震災後、なにが正しい行動なのか、わからなくなった。
       さくらはほんとうに不思議な木だな
       どんな花見だろうが心に沁みる・・・
      


わたしを離さないで

2011-04-08 23:11:03 | 映画


  

   映画 「わたしを離さないで」 を観てきた。

     イギリス最高の文学賞、ブッカー賞受賞作家 カズオ・イシグロの
     同名小説の映画化
     小説を誠実に映画化していたと思う。
     独創的な話なのだが 過酷な現実を受け止めていく三人の姿には
     胸を締め付けられた。
     キャリー・マリガンの静ひつ演技がとても光っていた。

   * 寄宿学校へールシャムで、幼い頃から共に育ったキャシー、ルース、トミー
     学校には厳格な規則があったが、そこで育った3人はその環境に疑問を
           持つこともなかった。しかし成長とともに、3人には過酷な使命が
           あることを知る・・・

    まず小説を読んだ時、最初は「クローン」というモチーフに気をとられてしまった。
      だが、読み進んでいくに従い、この物語はべつにクローンの最先端技術が
      どこまで進んでいるかといった話ではなく、人間とは何か?ということを
      描いているのだと。
      時を経て過去に身を投じ、3人はやがて・・・

     

   

   満開の桜
     もう花びらが散りはじめてきた。
     風に舞う花びらはうつくしい。

     薄暗い駅を通り抜けて 止まっているエスカレーター
     を横目でみながら 階段を駆け上り
     映画を観るために行った渋谷・文化村
     スクランブル交差点も109ビルの通りも
     人波であふれていた。
     ふつうは すぐにやってくる
     ふつうに すぐ慣れる
     これからもふつうであるように・・・
     ふつうだと思うから、存在できる、気がする。

     映画館は混んでいた。
     混んでいたのは同じブースでも「英国王のスピーチ」だったけど・・・
     やっと、新聞などにも映画広告が載るようになったもの、ね。
     3、4人の主婦らしいグループがこのあと どこでお茶するかと
     盛り上がっている会話が聞こえてくる。
     映画が始まるまで ひとり、ロビーでコーヒーを飲む
     せめて、おつりは「義援金箱」
     
     
   
    

  


ぼくがラーメンをたべているとき

2011-04-06 22:21:03 | 書籍・絵本


   

     ぼくがラーメンをたべているとき  長谷川義史 教育画劇

   ぼくが ラーメンをたべているとき
     となりで ミケがあくびした。
     となりで ミケがあくびしたとき
     となりのみっちゃんが チャンネルを変えた。

     となり、となりへと視点が移りゆく
     近所から隣のまちへ
   どんどん広がっていく
     
    「かぜがふいている」

   この絵本は世界ではなにが起きているか
    平和(戦争)を 考える絵本なのですが

    いま、この空の下で
    さくらの木の下で
    同じ時間のなかを
    さまざまな環境の中で
   
    なにと向き合うべきなのか
    ・・・
    

   


ふりむけば猫

2011-04-05 11:48:25 | 書籍・絵本

 
    

   ふりむけば猫   井上洋介 架空社・小さな絵本美術館

   手のひらサイズの絵本
      なつかしい路地に猫が佇んでいる。
      木版画がなんともやさしい
      「角の食堂に猫がいて」
      「時計やさんにも猫がいて」
      それとわかる姿をみつけると
      うっとりしてしまう。
   

       いつだって 私も
       猫のように町を歩きたい・・・

       テレビも観ない
       新聞も読まない
       今日は なんでもない日、そのもの

       「今夜はなにを食べたい」なんて科白を何十年も
       言い続けている日常
       鰆・納豆・春キャベツ・ピーマン・豚肉・トイレット・ペーパー
       メモを書いてスーパーへ行く日常

       デパートも 平常時間の営業となった。
       春物のシャツでも買いにいこう。
       細身のがいいな
       メタボに ご注意! ね、猫さん。。。

    
     
      
    


人の砂漠

2011-04-04 11:51:54 | 書籍・絵本


 


     人の砂漠  沢木耕太郎  新潮文庫

    もう30年前に著者が20代で書いたルポルタージュ
         8編はものすごく壮絶
    実はね、地震の日に本棚から落ちていたので・・・
         こんな状況の時、再読していると
         事実の重さと怖さを感じます。
         ギリギリの時間で人はなにができるのでしょうか


     スガ シカオ 「春夏秋冬」

    職場の開館時間が節電のために短縮されたために
        シフト入りがなくなった月曜日の朝
        お向かいの家の大きなサクラの木が風に吹かれています。
      

        スガ シカオさんの歌を聴く
        なんていい曲なんだろう

         ♪ 明日へ向かう意味を探して ぼくら立ちすくむけど
      大切なもの 守るべきもの
              やっと少しだけ わかったんだ・・・

     
     

          子どものころは サクラの葉が食べられなかった。
          いまは、この葉が美味しくてね。
          ウチにいると、食べてばかり

      

           
           近くの医院
           しばらく前から休診の張り紙
           あぁ あの先生らしい。
           ひそかに あかひげ先生と呼んであげる。
           そして おもわず、医院のドアに頭を下げる。(笑)