ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

5.重要な問題は「間」にある。

2007-02-18 | 継続的改善52
5.5.3:組織内部のコミュニケーションのための適切なプロセスを確立すること。これはトップマネジメントの責任である。

部門管理を優先する。トップダウンを優先する。顧客や親会社のいいなりになる。全ての部門は営業と設計の指示に従う。組織をだめにする方法にこれ以上の妙薬はない。
不幸にしてこの病気にかかっている組織は「間」に問題が山積されているので、その解決から着手すべきである。

管理者は自分の担当部門の成果に責任を持っている。職務分掌も部門別に書かれている。組織図も部門を縦割りに書く。部門間の壁といわれるが、部門の利益を優先させるため部門間に問題が山積される。これらの問題を是正するため部門間連携の活動が必要になる。品質保証や原価管理などの「機能別管理」は部門間連携の活動である。
また、上下の階層間の問題も大きい。この問題解決のため「方針管理」がある。方針管理はトップダウンと誤解されているが、上下間の方針や目標のキャッチボールという、すり合わせがあり、階層間の問題の調整をするから、方針や目標の達成が可能となる。
もう一つの間の問題は新製品開発の各段階、ステップ間の問題である。この解決のため、品質保証と関連する原価、量などの総合的な管理を製品別管理または機能別総合管理とよんでいる。


関係性の回復

組織のピラミット階層は誰が作ったということでなく、自然発生的に生まれたのだろう。
マネジメントの概念が生まれてから、組織の研究はされているが決めてはでてこない。
縦割りおよび階層は人間の要求が生んだもののようである。
便利だが欠陥も多い。

縦割り組織は部門間の連携に問題ができる。
同じように組織の階層は上下の意思疎通の悪さをつくる。
人の意識は自分と他者との関係性のあり方で違いが出来る。
人の噂話や特定の人に対する敵対心で成り立つ群れは、相手の成長を望まないばかりか、相手の失敗を望む。時に相手の失敗を誘うような行動すらする。「いじめ」や「派閥」はこのようにしておきる。
自分のこと以上に他者のことが気になるのである。たとえ反面教師であろうが、他から学ぶのであれば自分の成長に役立つが、他の失敗を望むような関係から自分の成長はありえない。

本当の成長は他者を愛し尊敬する関係性から生まれる。
この関係性が「間」の問題である。
人も組織も「間」に注意しなくては成長しない。

間の問題を解決するため、管理者がいてシステムがあるがそれが自覚されることは少ない。
そのため間の問題を進んで取り上げ改善すべきである。
この問題発見・問題解決の技術が品質管理技術といえる。
この方法はすでに多く開発されている。
方針管理、監査システム、統計的手法、品質機能展開・・・・ISOなど
大切なことは間の問題を自覚して取り上げるかどうかである。
願わくは品質管理技術者が人間性に優れ、問題発見能力のあることを望む。


異質の協力

QCの大先輩西堀榮三郎博士が「これからの日本には異質の協力が大切」と言われてから20年以上経つ。21世紀は平和の世紀と言われながらも戦争が耐えないのは、異質の協力ができてないからである。

同質が理解でき協力できるのは、あたりまえのことである。
人は自分との共通点を見つけると安心する。自分が理解したように相手も理解するだろうという保証が得られたと勘違いするからだが、これほどあやうい関係はない。自分の好きなようにしか相手を見てないからである。ある心理学者はこれを「ロマンチックな恋」とよんでいる。ハネムーンの甘い時期はこれでよいが、いつまで続くかは問題である。

(国際関係やQCの話をしたいのだが、もう少し脇道にそれることにする。)

大人の恋は相手の個性を重んじる。その人らしさを引き出し、ますます育てるのが大人の恋である。そのような関係性のなかに新しい自分を発見し自分を育てることができる。

さて、品質管理の話である。
今後、日本のものづくりが国際的に貢献するためには、異質の協力という能力や技術が大前提になる。高度成長気のものづくりは日本製品の購入先が無限にあるということを前提にした成長であった。重商主義との海外からの批判もあったが、この批判から何も学んでない。バブル以降の日本は、大量生産、大量消費のアメリカの尻馬に乗っただけの成長であり、その中に学ぶべきものはない。

いま大人になって、考え直す時期である。異質の協力のためにはまず、異質から学ぶことかもしれない。


顧客の力を借りて組織を見直す

事例:顧客中心の改善活動によるパラダイムシフト
改善活動は社内の成果だけでなく、顧客への直接的な成果と結びつくことが望ましい。それならば、何を改善したらよいか、顧客に直接聞いてみようということでこの活動は始まった。営業所に着任して間もない営業所長は、得意先に着任挨拶するときから、営業所を顧客要求に対応できる体制に変革することを考えていた。
そこで、①お客様中心の改善ができないか、
②営業所の全員が本気で改善に参加するには、の方針をもとに、顧客への訪問調査を繰り返すと共に、営業所内からも意見を求めた。はじめは本気にしてくれなかった顧客も、繰り返される訪問と調査結果や改善活動の報告から、営業所の活動に次第に協力的になってきた。
顧客の要求の強い点、弱い点に分け、営業所の全員にアンケートから、営業所で長所と思うこと、短所と思うことを二元表にまとめた。

この結果、顧客の要求が大きく、営業所でも長所と思っていることが、活かされてないことがあり、要求が大きくないのに一生懸命だったりしていることなどが、発見された。
さて、調査結果と改善の計画は顧客にも発表して、改善に着手した。所長のリーダシップのもとに、管理者、営業マン、女性セクレタリのQCサークル活動なども行われた。またこれらの活動は顧客にも定期的に報告しているので顧客も関心を持ち、最近よくなっているかの評価も、顧客から直接聞くことができる。    

これらの活動の効果として、売上げが2倍になった。
しかし、この前向きな所長が強調している成果は、営業やサービスにおいて顧客の要求に答えられる体制、つまり、所内の業務の全面的見直しができた。
また、顧客との定期的情報交換のためのニュースの発行、顧客との交流のためのイベントなどが行えるようになった。
一見、簡単に思えることが、本当は難しい。従来の枠(パラダイム)にこだわっている限りこのようなことはできない。
経営者の役割は必要な時期を見て、パラダイムシフトを推進することである。
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4.品質問題は氷山の一角

2007-02-17 | 継続的改善52
ISO9000 3.1:品質マネジメントシステムの用語をまとめたISO9000によると、品質とは、
本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度と定義される。
品質は、その製品やサービスの機能に対して、要求に答えられる度合いを示している。

この要求事項には、明示される要求事項、暗黙の要求事項、ISOでは暗黙と言う言葉を使うが「黙示」という言葉のほうが、約束やメーカーとしての義務を示す言葉として明確とおもう。
また、明示、黙示に関わらず、メーカーの使命をはたすためには、約束できる範囲を宣言(コミットメント)し、顧客に対して、社会に対して、また、組織内部の人々に対して、責任をもつことである。
組織として約束に対して責任を果たす程度、果たすための努力と具体的活動の程度が、最近の言葉で言うところの組織の品格である。

約束し責任を果たすためには、品質方針、品質目標を明確に示し客観的に評価できる指標がなければならない。この評価から外れる部分が問題点である。
方針、目標が明確でないと問題も曖昧なものになり、具体的な改善活動は行えないことを強調しておきたい。

問題で顕在化しているのは「氷山の一角」である。多くの問題は、潜在化していて、放置しておくと慢性化してくる。慢性的問題は、チャレンジをする気持ちをおさえる。この解決には、氷山の全体を見る洞察力と深く原因を追求する解析力が必要である。 

問題を顕在的問題と潜在的問題に分けるのは、品質方針、品質目標である。
また、ノーベル経済学賞のH.サイモンのいう標準化・システム化できる部分とできない部分で分け、顕在、潜在に重ね合わせると、問題という氷山は3つの部分に分類できる。

顕在化している部分は、目標、規格や基準があり問題の収集と報告のシステムがあるから比較的問題解決が容易である。
潜在的な部分で誰もがうすうす気付いていながら諦めている部分は慢性問題である。慢性問題の多くは組織上、管理上の問題であり、管理者が部門間連携を取りながら解決する必要がある。
氷山の一番底の部分にシステム化できない問題領域がある。これは経営上の問題であり、組織の約束事や制約条件となっている部分であり、問題解決を諦めている部分である。行動の規範や制約条件等の部分に踏み込むには経営上の英断が必要である。経営革新や現状打破というのは、この部分の改善である。この部分をリスクゾーンと名付けたら良いだろう。
中途半端な対策はリスクを伴うが、解決により得られるリターンも多い。
企業の社会的責任、コンプライアンス、クレーム隠しやPL問題など、このリスクゾーンに対する対策を放置したために起きる、取り返しの出来ない問題が起きる。
これこそ、経営者が能力を発揮する領域であり、経営者の指導力、方針や目標、ビジョンの作成と組織に伝達できる能力にかかっている。


観察力、洞察力、解析力そして情熱

企業で抱える問題を氷山に例えると、海面から出ている顕在問題は僅かだが、海面下の組織的に解決すべき大きな問題がある。
最近現場を見る観察力がなくなっている。現場を見て仕事をしているのでなく、PCのディスプレーを見て仕事をしているからである。ISO監査で現場を回るときはシステム監査と称して抽象的なシステムに置き換えて現場を見るから、本当の事が見えてない。人間の目は物理的に退化するばかりでなく、環境に影響され精神的に退化してくる。

子供の頃、驚きの目で自然を見た人も、理屈がわかってくると新鮮な疑問や驚きを忘れ、見方が偏ってくる。また、社会システムが本当に見えることを規制することもある。宇宙飛行士が宇宙から地球を見て、地球の異変に気がつくことがあっても、報道されることは少ない。NASAの訓練では見るべきことと見ないことの訓練がされ、見方の分担もされるだろうから、地球にいる一般の人間に伝わることはきわめて限定されることになる。
驚きの目を忘れてはならない。知らない目で見ることだ。
大人の目が曇っているように、組織の目も立場立場で別の目を持つよう条件付けられる。
新入社員の目と、上を目指す時の目と、自分の地位を守る時の目は全て別の目である。

次ぎに洞察力である。新鮮な「なんだろう」の驚きから仮説を作り仮説を証明するためのデータを集める。仮説の立て方で集めるデータはことなる。当然データの見方も異なる。
組織の上になれば利益でものを見る。いまここで起きている損失を見ようとはしない。
真実は何かということを洞察する力がなくなるのである。
高齢化社会を問題にする前に、組織における「若年性のボケ」の対処の方法を検討すべきである。

観察力と洞察力がなくなると将来に対するビジョンがなくなる。
手遅れにならないうちにビジョンを創造しよう。

品質管理の先輩から教えられたことは、このようなことである。
知らない目、驚きの目で現状把握せよ。
なぜという疑問を仮説に真実を洞察し解析する力を養え。
ビジョンを創造せよ。
ビジョンに情熱をかたむけろ。
活動し組織を巻き込め。
たえず謙虚に反省しろ。
反省を計画に活かせ。
これが、PDCAである。


パラダイムシフト

科学史家のトマス・クーンが、科学における偉大な発明はいかになされたかをまとめた名著がある。多くの偉大な発明の瞬間を手紙や日記などの事実に基づきまとめているので臨場感がある。アインシュタインが相対性原理に気付いた瞬間、「わたしのまわりで何がどうなっているのか、まるで理解できない。このまま喜劇役者にでもなったほうが幸せに思う」と嘆いたという。このような瞬間の変化をトマス・クーンはパラダイムが変わった、と表現している。原理、公式、世界観、信念などクーンは著書の中でパラダイムを120通りに使っているという。数える価値があると思い50近くまで数えたことがある。

組織やシステムは伝統も大切だが陳腐化しないうちに、パラダイムの転換をすべきである。
古いユニフォームを脱ぎ捨てるように新しい環境に適応するため脱皮しなければならない。
経営者とその取り巻きの老人たちは、(精神的な意味での老人であるが、)保守的で新しい環境について行けないことが多い。下位の管理者も事なかれ主義で新しいことにチャレンジしない。顧客に対して、上位者に対して、平気でうそを報告する。
一部の企業で隠しきれず事件として報道されているが、いま日本のものづくりの現場でまん延している病気である。

「守破離」の「破離」を実践すること。
毛虫がさなぎになるのは美しい蝶になるのが保証されているからそうするわけではない。
何も目的を持たず脱皮するから美しい蝶になる。
悲しいかな人間は、目的をもたないと何も出来ない。
組織のビジョンが必要なのはこの点である。
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3.組織の品質を総点検する

2007-02-16 | 継続的改善52
ISO序文:品質マネジメントシステムの要求事項は、製品の品質保証と共に顧客満足の向上を目的にしている。

組織の品質
「品質管理をすると不良が増える」。ある先輩から聞いた言葉である。
デミング賞の審査では、具体的成果が求められるが、総合効果のなかには、全社の不良の推移がある。本物の品質管理を実施した会社かどうか見分けるには、品質管理を導入した直後の不良の変化を見るのだそうである。導入初期に、潜在化していた不良が顕在化することにより始めは不良が増える。その時期がしばらく続いてから不良が減っていく。富士山のように不良が推移するのが品質管理に本当に取組んだ証拠であるという。
興味ある見識と思う。
私の知るかぎりでも、ごくわずかの経営者が隠さず不良を報告しろとの導入宣言をした例がある。その社長は従来不良の報告に対して怒るだけで原因の究明の指示を行っていなかった。そのため自分のところに不良の報告が少なくなったのを、不良が少なくなったと勘違いしていた。このようなことを反省して、不良の報告を進んで聞き、原因の解析の指示をするとともに、報告者に感謝したそうである。そのような会社は成果をあげる会社である。不良が顕在化して増えてもあわてず我慢できることがすごい。その不良の推移を隠さず公表して自慢できるのは、もっとすごい。このようなことが品質管理の本質を経営者が知っているかどうかの差となって現れてくる。

よい製品は技術が作る。
よい技術は組織が育てる。
よい組織は人が作る。
その人は、PDCAという燃える情熱がつくる。

失敗を恥じる気持ちがあっても、失敗を隠していては、技術は向上しない。
品質管理をするということは、不良を恥じて、不良の再発防止、予防をすることである。


企業の品格
今年の流行語大賞に「品格」という言葉がある。
数学者藤原正彦先生の「国家の品格」が基である。
藤原先生の本は是非読んでいただくこととして、「品格」について考えたい。

最近の企業はISOで基準化され個性がない。
言葉とか概念は好みからいうと、控えめでにじみ出るほうがよい。
文書化を騒ぐISOは自分を一生懸命顧客に伝えようとするあまり、藤原先生のいう品格に欠ける。

詩人の佐藤春夫が詩の心得として、「言葉は浅く心は深く」と話していた。
最近テレビで山頭火の句作りのコツを聞いた。
「言ひすぎは言ひ足らないよりもよくない」
最近の企業は言いすぎである。夢中に外部に向かい主張するが、内容がない。
「品格」がないのである。一流といわれる企業でもクレームやリコールはある、ましてわが社ではという発想が油断を生む。クレーム処理とは、クレームをださないようにすることだが、出しても顧客の信頼をどのように確保するかの技術のような勘違いがある。

初期のISO9000では、外部品質保証、内部品質保証という区別がされ、認証に使う規格は外部品質保証という説明がされていた。
これからは内部品質保証をもう一度検討する時期にきていると思う。
企業の品格を忘れてはならない。


自分でPDCAを実践できる人、人から学べる人、が優れている人と思う。
自分を見ているとそれがよくわかる。いつも反省しているつもりだが、そんな人間として基本的なことができてない。
宗教家はエゴを捨てろと言うが、いつも出てくる。
そのため、いつもエゴを自覚するようにしている。
エゴを自覚してまわりと接しようと心掛けて、目に付くところにそれを書いているが、いつも自覚しているのは難しい。

次のような文章を友人からすすめられた本にみた。
「少し目を覚ましなさい。自分の言語パターンから目を覚ますのだ。言葉に酔いしれるのはやめなさい。
そうすればものごとはとても簡単になる。ものごとは本当に易しい。ものごとは非常に単純だ。真理は単純そのもの、あなたが複雑なだけだ。真理はいまここにある。あなたが遠く離れ、言葉、経典、理論、体系、哲学のなかに我を失っているだけだ。」
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2.現状の強い点を集め、強い経営基盤を作る

2007-02-15 | 継続的改善52
ISO9001序文:組織に品質マネジメントシステムを取り入れるか否かは、経営上の戦略的決定で行うべきことである。

戦略的とはどのようなことだろう。
他社との競争優位に立つことだろうか。そのためにISOを取得したというだけでは、すでにISOは普及しすぎている。
文書やシステムが整備されているということは、基盤が出来ていることの一側面を示しているに過ぎない。
方針や目標があっても、それが一般的なら戦略的とはいいがたい。

何をどうすればよいのか。
具体的行動として今日から何をするのか。
組織全体のベクトルをどこにあわせるかが明確に示され、これが達成されると何が、どう変わるのか明確でなければならない。

「改善とは強い点をより強くすること」という日本の改善についてのドラッカーの定義がある。日本流マネジメントを研究し、改善の本質をとらえた定義である。従来の不良、不具合、問題点を認め、反省し、飽くなき品質の追求といわれる改善の繰り返しを通して、不良の原因究明を行い、技術を向上させ、弱点を強い点にした努力を忘れてはならない。本当の強さは、弱点を強い点にしたことで生れる。これが日本の品質管理であり、次のように言えるだろう。
 
品質管理は不良の再発防止からはじまり、改善を繰返すことにより、弱点を長所に変え、強い品質文化を創りあげる活動のプロセスである。

 人間は「ホモ・サピエンス」という定義があるが、単に生きるために考えるということなら、程度の差はあるものの、人間以外にもそのような生き物がいることは今の科学でわかっている。「ホモ・ネガンス」という人間の定義について考えたい。社会心理学者のE.フロムによれば、多くの場合人間の行動は「イエスマン」であるが、生存や利益を度外視して、真実や誠実、愛のため「ノー」と主張することで、人間は他の動物とは区別される存在である、という。
合理性を超えた不良や問題点低減の取り組み、「飽くなき品質の追求」は、「ホモ・ネガンス」の特性があるからできる。これは、日本の製品が安かろう悪かろうといわれ海外の輸出先から返品の山ができた当時の危機感を背景に、先輩たちが作り上げた品質文化でもある。

最近、ポジティブに明るく考えることが良いとされるが、表面的な明るさのみでは、問題の原因を深く考える改善には役に立たない。目標や希望を持つことが大切である。自分の人生にビジョンを持ち前向きに生きる特性を、ホモ・エスペランス(希望する人)という。
まず、正しい現状把握をおこない、組織の強い点を引き出す。つぎに、ホモ・ネガンスの洞察力を使って、改善したい問題点の中から、近い将来強くしたい問題を選び出すことから始めよう。

現状把握のポイントを整理しておこう。
(1) 組織の風土、文化など、どんな強い点があるかを整理するため現状把握する。できるだけ多くの人にアンケートをとると良い。「わが社の自慢できる事は何ですか、改善すべき事は何ですか」これらをまとめるとよいだろう。自分の強い点や良い点を自覚してない事が多い。自覚してないなら、どのような事が強い点か強くしたいかを示せばよい。これが方針である。どこにどんなボールを送ればゴールできるか、瞬時に判断できるのは、強い点を理解して、それを訓練しているからである。組織で勝つためには、強い点を育て、勝つための訓練を繰り返すことである。
(2) 顧客の要望、クレーム等、顧客満足や不満に関係する情報を集め、顧客満足の向上のため何をするかまとめる。現状で何が出来ているか、何が出来てないかまとめる。
(3) 次に、対策のための整理をする。何をどうよくしたいのか、特色をどう打ち出していくのか、顧客からどう評価されたいかなどをまとめる。客先に訪問して聞くのもよいだろう。
これら(1)(2)(3)を一覧表にまとめると現状が理解しやすい。    
鳥が空から見たらどのように見えるかを表した絵を鳥瞰図などと呼ぶがそんな気持で全体を見ると良い。



「人の振り見てわが振り直せ」
改善すべき課題を設定する、目標を決める、など前向きに進みたい時、実施することは、現状把握である。
「いま自分はなにをしたいのか」を確認する。
そのうえで、強い点はなにか、強くしたい点はなにか、あるいは問題点は何か、目標達成の障害となっていることはなにかなど、「いま自分はどこにいるのか」を考えることが、現状把握である。

現状把握のコツは、意味ある比較をすることである。
従来と比較して、いまはどうか。
同種、同業と比較してどうか。
目標や理想と比較してどうか。
高い目標があり、自分の現状(実力)を自覚するためには、異種、異業と比較してもよいだろう。昔の剣豪のやった道場破りである。
このように、どのような意味ある比較ができるかは、現状の実力にかかっている。

「人の振り見て、わが振り直せ」という言葉がある。
人の批判なら誰でもできる。
いまの自分と比較してどうか。
自分の目標と比較してどうか。
前向きに考える人は、前向きに人からも学ぶことができる。
いまの自分を評価して欲しいと考えるなら、相手を選ぶべきである。
決して自分より実力の低い人を選ばないこと。能力の高い人はよりよい点を見抜いてくれるだろう。
「人の振り見て、わが振り直せ」は能力であり、技術である。これができれば、一人前である。
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1.PDCAはマネジメントの基本

2007-02-14 | 継続的改善52
今回から、従来の文章を編集してまとめにはいります。
多少、文章が長くなりますが、ご勘弁ください。



ISO9001の序文0.2にはPDCAの説明がある。
PLAN:顧客要求、組織の目標、現状把握などから目標を設定し、実施計画を作成する。
DO:実施計画、実施プロセスにそって実施する。
CHECK:目標と実績を比較し反省と評価をする。
ACTION:反省や評価をもとに原因を解析し、処置をとると共に、計画に反映させる。

ISO9001、環境マネジメントのISO14001はPDCAで構成されている。国際規格であるISOがマネジメントの基本をPDCAにおいていることには大きな意義がある。


PDCAの原動力は「燃える情熱」
PDCAの起源を紹介したい。今ではあたりまえになりすぎて、忘れられていることである。PDCAという品質管理の基本的考えができるまでには次のような歴史がある。日本の品質管理の基礎ができたのは60年前のことであるが、デミング博士の功績は大きい。博士によると品質管理は、品質を重視する観念と品質に対する責任感という基盤の上に設計、製造、販売、調査・サービスの各部門が協力して行う活動である。品質に対する責任感とは「自分がつくった製品の裏書をすること、品質を保証することである。」とデミング博士は説明した。そしてこの根底に、良好なかつ均質な製品をつくろうという「燃える情熱(a burning desire)」が必要であることを繰返し強調した。このデミング博士の情熱が当時,セミナーに参加した経営者、技術者、学者の心を動かし、「燃える情熱」になり、日本の品質管理の基礎を作ったことを忘れてはならない。1950年7月のことである。

始めの講義でデミング博士が紹介したのは、恩師シューハート博士の考えを取り入れたサイクルである。
統計学者で市場調査の専門家のデミング博士は、顧客の満足を重視した。「マーケティングという言葉はただ販売だけでなく、それは、毎月毎月製品を買う人が生産品について何を考え、またそれを再び買うかどうかその理由などを知る一つの科学なのであります」
そのマーケティングの考えを含めて全社的活動を整理したものが、日本における品質管理のはじまりである。

デミング博士の日本製品を育てようとする献身的な講義に感激して、全社的な品質管理への取り組みを始めた企業は少なくない。


日本には古くからものを大切にする文化があり、ものづくりの名人、職人芸を尊敬する気風があった。その点、設計と製造にはっきりした格差のある欧米の文化とは対照的である。その日本が欧米と圧倒的な力の差を見せ付けられたのは、戦争であり戦後の輸出製品に対する返品の山であった。

この現状を打破すべく産学協同で品質管理の研究に取組んだグループがあった。
戦後、壊滅的打撃をうけた日本が立ち直るためには「ものづくり」しかない。
もともと資源の少ない日本が戦争で資源を使い果たしたので、海外から原材料を輸入して製品に仕上げ海外に輸出する。クレームによる返品は最大のむだである。品質を良くしないと日本は生き残れないと考えた。その試みは、成功への確信より危機感のほうが強かった。品質管理を勉強するうちに危機感は希望に変化した。希望は情熱になり品質管理という活動となった。

当時JHQのスタッフとして来日していた統計学者のデミング博士に日参し講義を依頼した。日本人の情熱に動かされたデミング博士は講義の冒頭に全社で協力し品質をよくする活動の根底に「燃える情熱」がなければならないことを話した。日本人の情熱に動かされデミング博士の講義が続いた。講義には当時の多くの企業の技術者や経営者、学者などが参加した。用意された講義料をデミング博士は受け取ろうとしなかった。「日本の産業の発展に役立てて欲しい」という博士の友情を基金としてデミング賞がつくられた。

この講義に関係した不思議がある。
全社で協力して品質を作り上げる概念をデミング博士は恩師シューハート博士の考えをもとにデミング博士の哲学を加えてシューハートサイクルと名付けた。
その講義から多くの示唆を受けたある日本の学者がPDCAというサイクルとして、デミング博士の経営哲学を紹介した。いまいわれるPDCAである。当然のことデミングサイクルと名付けられた。これらの根底には国を超えた学者の信頼と友情がある。このデミング賞が日本の製品の品質向上に貢献したことは言うまでもない。


新しい自分になるため心がけること

もうだいぶ前のことです。
小澤征爾の子供向け音楽番組で、ゲストのモダンジャズの巨匠ウイントン・マルサリスに質問がありました。
「どうすれば音楽がうまくなるの」
小さな女の子の質問にマルサリスは、「それには練習が大切だよ」と答えます。
「ただ、練習/PRACTICEはモンスターにチャレンジするようなもの。ただ、繰り返し練習すれば、楽しくなる。楽しくなれば人を感動させ、自分もやってみようという気になる。そのためには、プラクティスが大切だよ」
なんとも愛情のあるやり取りに、質問した少女の顔が明るくなったのをよく憶えています。
これに続いて、クラシックとモダンジャズのジョイントセッションがあり、その後、小澤征爾が子供に変わって質問を繰り返します。
マルサリスはプラクティスを12のポイントに分けて紹介します。

1.助言を求める人をさがす。
2.毎日実践する基本練習の予定表を作る。
3.いつどこまで進むかという進歩の目標を決める。
4.集中する計画をたてる。
5.じっくり練習する。リラックスしてあわてない。
6.苦手な部分は反復する。
7.全力をかたむけて全ての音を歌わせる。しらけた考えをしない。
8.失敗を気にやむな。失敗から学ぶ。
9.ひけらかさない。受けねらいは底が浅い。
10.自分で工夫する。もっといい方法がないか考える。
11.楽観的になる。明るく考えれば楽しい。
12.共通点に注意、皆の力が出る。

ここには、音楽だけでなく全てに共通する向上や進歩のための方法があります。
マルサリスがPDCAを知っているかどうか定かではありませんが、こんな見事なPDCAに始めてお目にかかったように思います。さて、多少、蛇足しておきます。PDCAという活動は他の人も巻き込んでいきます。「自分もやってみようという気になる」というわけです。これが組織全体に広がり波及効果を生むことになるのです。

もう一つ追加します。PRACTICEには、単なる練習というより、実践するという意味もあります。「夢中になって繰り返すこと」そんなものが、あなたにはありますか。


守破離

システムの不具合を発見してそれに手を打つためには、システムを作成する以上の創造性が必要である。継続的改善というが自分のつくったシステムを改善することは難しい。システムをつくる時は後で改善することなど考えてない。いまできる最善のものをつくっているはずである。自分が努力して作り上げたことを直せということである。

「守破離」という日本古来のプロセスで考えると、システムを作るのは「守」の入り口の段階である。その先に、努力して身につける段階を経て、「作法」が一通りできるようになる。ただしこれで本当に自分の身についたわけではない。これを次の段階で破れといわれるわけである。大部分の人はこの「破」の段階には進めない。自分の覚えたことに執着するからである。
「創造的破壊」と言ったのはシュンペーターだと思うが、これが難しい。
創造できることがわかって破壊するのではないから、破壊には勇気が伴う。
しかし「破」のプロセスを通して予想以上の成果が得られることがある。これが現状打破であり、革新である。制約条件を捨てて前に進む発想が必要である。

いままで自分が大切にしているものを捨てるのは難しい。
人間も脱皮しなければ成長しないと前に書いた。
聖書にも「親兄弟を捨てて私についてきなさい」とキリストは弟子に要求する。
「金持ちが天国に入るのは、駱駝が針の穴を通るより難しい」というのも、執着を捨てられない人間の弱さを例えに言っている。親兄弟、お金という形あるものから自由にならなさい、執着を捨てなさいというのが「道」を極める極意である。

「守破離」にもどる。
多くのISOの失敗は、「守」を繰り返すに過ぎないからである。
「守」から先に進むためには、現状を把握することが大切であり、その一つの手段として、データが必要になる。データを分析することは「道」の入り口を見つけることである。
そのため。どのようなデータを収集するか、どのように分析するかは人に関わることである。
願わくは創造性のある人に品質管理をまかせたい。

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便利さの裏側

2007-02-13 | ISO外論
以前ある会社にクレーム処理課という部門があった。
クレームが増えたためその対応に追われたため、専門部署を作ることになった。
社内から優秀な人材を集めたその部門の活躍はめざましく、クレーム処理が効率的にできるようになった。その部門があるおかげで、設計や製造も安心してしごとができるようになった。そのうち「後ろ向きの仕事はあの部門に任せて、前向きの仕事をしよう」という考えが蔓延した。その結果、その会社のクレームはなかなか減らなかった。

仕事を一箇所に集めて効率的にすること自体は間違いとはいえないが、その仕事が本来必要な仕事かどうか考えないと、無駄を組織化することになりかねない。
客先に対応するためになら致し方ないが、ISOのための書類作りのため部門が出来るのはおかしい。一時しのぎの便利さのため、本来減らしたい仕事が増えてないか、見直す必要があろう。
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技術の標準化

2007-02-12 | ISO外論
技術はたえず発展するものだから、最新の技術を記録して関係する人に伝え普及させ見直すことを繰り返さなければならない。つまり技術の標準化が必要である。標準化は文書に留めるだけでなく必要に応じて、機械化し、システムとしてソフト化するなどの工夫がいる。
標準化の「化」というのは、標準を徹底するプロセスととらえられるから、標準についてのPDCAである。つまり、標準を計画し、確実に実行し、実行結果を反省し、反省の結果を計画に反映させる全体をいう。

ものづくりに関係する多くの技術は製造現場で結果が形になって表れる。例えば、設計と言う技術は図面として製造に伝達される。製造は図面どおりの製品をつくる。製品になって初めて設計の意図したところが具現化する。生産技術も設計の意図したことを具体化するために設備、加工方法、作業者の技量などを組み合わせるが、出来た製品から技術の結果が評価できる。作業にしても、正しく作業できたかどうかは結果である製品を測定することにより把握することができる。

このように標準の目的とその結果の評価ができて、技術は客観的に評価できる。このようなPDCAが出来てない技術はまだ適応範囲の少ない半人前の技術である。ある会社で「にんべんのついた固有技術(個人有技術)ではだめだ」という言葉があるが、標準化が出来てない技術に対する警告である。
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批判を超えて

2007-02-11 | ISO外論
批判だけなら誰でもできる
知っていること、出来ると思っていること、実行していることには、大きな差がある。
以前、といっても大昔のことであるが、仙台出身の祖父から、「知るとする」は東北弁では同じ「する」だが、大きな違いがあると教えられた。
多くの批判は、実行している人に対して、知っているレベルで文句を言うのだから無責任極まりない。そういう人に限って、本当に知っているのでなく、知っているつもりになっているに過ぎない。学者の父から学んだことは、知っていることと知らないことを区別することことだった。いまでも、借り物の知識には注意するよう心掛けている。生兵法は大怪我の基とは、自分に対する戒めである。

ISOは注意しないと、借り物の知識を並べただけになる。
文書化というものも実行していることをまとめるのでなく、実行できたらいいと思うことを文書にする。書かれたものは実行していると解釈するのが建て前だから、文書と実行には大きな差ができる。ISOは注意しないとうそを作るシステムになる。

話が横道にそれた。
知るとするを区別しておかないと大きな誤りの元になる。
特に品質管理のように、「あたりまえのことをあたりまえにする」ことについては細心の注意が必要である。
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コミュニケーションギャップ

2007-02-10 | ISO外論
言葉の問題がコミュニケーションギャップの原因になっている。
最近の生産現場は外国人労働者がおおい。その人たちを派遣社員が指導している。
当然文化の違いもある。派遣社員と社員では評価の基準が違うから、意識しないでも気合の入れ方が違う。派遣社員としては同じ使われている立場から、外国人労働者に対しては好意的にみる。信賞必罰なんてことは、派遣が外国人労働者に対して実行するのは無理なことだし、そこまで要求されてない。

そのような状況で正しい作業を教えるのは難しい。
現場は生き物である。多くの変動要因の影響で不良が発生し、製品の出来栄えはばらつく。
作業の意味、管理や改善の意義を身につけてもらう教育など皆無といえる。このような教育の必要性を自覚している組織は少ない。人材を人財と言ったのはつい最近のことであるが、今や人は使い捨ての時代である。

このような中で品質の良いものを作るためには、改善という共通語を理解して、コミュニケーションをとるべきである。特にQC7つ道具の開発は日本に現場を強くしたことから考えても、これを活用すべきである。グラフや図は言葉以上に多くの情報を教えてくれる。
品質の良いものを作るよろこびは、言葉の通じない人々に共通の目標と価値観を与えてくれる。今こそ日本の退化した品質文化を立て直すために、改善の教育を徹底すべきである。
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管理と調節

2007-02-09 | ISO外論
管理するためには、平常の状態を理解しておいて、平常との比較で何か問題が発生しているか、そのままで良いか検討する。我々が扱う多くのものはばらつきがあるので、平常の状態を理解しておくことが大切である。体温を測って風邪を引いたかどうか見るためには、健康な状態の体温を知ってなければならない。健康に関心のある人は一日の体温の変動がわかっている。製造工程においても、設備の調子、材料のばらつき、作業方法など多くの原因の組み合わせが結果である特性値にどう影響しているか、平常の状態を理解しておくことが大切である。結果と原因の関係を理解できていれば、結果が大きく変動した異常時に原因を解析する手がかりとなる。

結果から原因がわかった時、対処すべきことは、次の3点である。
同じ原因で結果が変動しないように原因の再発防止をする。
原因の再発防止には多大のコストがかかるため、原因の影響がでないような処置をする。
あきらめて放置する。
3番目は論外として、1番目の再発防止を一般的に管理という。
原因の再発防止はしないが、影響がでないように修正処置をすることを調節という。
原因の再発防止が出来てないと定期的に調節がいるので、調節の標準化が必要である。
調節の標準化が出来てないと、過剰な調節:オーバーアジャスメントをして工程を必要以上に乱す危険がある。
このためできることなら管理された状態にしたいが、それが無理の場合は調節すべきである。
大切なことは、解析により原因を突き止めたうえで、再発防止するか、調節するか、の判断が出来ていることである。
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