ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

16.経営資源の再配分

2006-12-21 | 継続的改善52

経営資源は経営者が予算申請に対して出す資金だけではない。
現状の組織の「宝のもちぐされ」のほうに大きな問題がある。
役に立たないシステムなどは無駄を次々に生産している。
自分の金だから自分の好きなように使うと勘違いしている人は生産的に金を使うことはできない。

現状把握から出発するPDCAを使い経営資源の点検をすべきである。
まず、無駄や不良があるから改善する。
「不良による損失金額は、改善のための予算である。」と考えた経営者がいた。この会社では経営者が改善活動に積極的な支援をしたため、得られた成果も大きいものであった。

改善を進める原動力になるのは、改善した結果をどこまでイメージできるかで決まる。
想像力である。改善には7つ道具といわれる手法がある。手法も想像力があると有効に使うことができる。

経営資源の提供というのは「金をかける」ということだけでなく「豊かな職場」「意義ある仕事」を提供することでもある。
そのためには、現状の総点検をすべきである。
「宝のもちぐされ」が改善のための予算である。
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15.マネジメントレビューの目的

2006-12-20 | 継続的改善52
ある会社では社長監査が定期的に実施され、社長は「自分に手伝える事は何か」をかならず聞くという。また別の社長は自分の方針がどこまで浸透しているか調べ自分が反省する場にしているという。
経営者が自ら確認する場がマネジメントレビューであるから、あまり形式的な場をつくるべきではない。

上下のコミュニケーションではまず、安心して話せることが大切である。
上の人に対して、気後れがあっては、意見を堂々と述べることができない。
安心感を意味するSECUREは気後れ(CURE)のない(SE)こととデミング博士は説明する。
話す側が気を遣って話す内容を変えるようでは、本当のコミュニケーションはできない。
理解し易いように配慮することは大切だが事実を歪めて話すようでは、「裸の王様」を作ることになる。

近代的経営においては、情報開示と説明責任は当然のことである。ジュラン博士が日本の品質管理を指導された1950年代、責任という言葉は説明責任(ACCOUNTABILITY)を強調していた。
その経営者の責任を果たすため、経営者、経営幹部の管理項目を決めておく必要がある。マネジメントレビューはその手段である。
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14.コミュニケーションと責任権限

2006-12-19 | 継続的改善52
責任権限を明確にすることはコミュニケーションを良くすることである。
自分の仕事の前工程、後工程がわかり、仕事の関連や目的が明確になるからである。
「後工程はお客様」というのは品質管理の基本である。お客様のことを考えて仕事をするのであって、自分の都合で仕事をするわけではない。責任権限を組織に周知することはコミュニケーションを良くするため行うことであり、仕事の基本を教育することでもある。
この基本が理解されてないから、部門間の壁が厚く、部門間連携の悪い組織になる。
くどいようだが教育の不足である。

システムを長い間放置しておくと、責任権限を必要以上に複雑にして自分の責任を曖昧にする組織になる。システムの官僚化である。この原因は経営幹部の思いつきの組織いじりである。組織を細分化しておいて、指示命令を徹底させるために、どんな細かいことでも報告しろと指示する。「報連相」という古臭いシステムである。これが時に、秘密警官のような機能を果たす。信頼によって組織が成り立つのではなく、不信感が蔓延する。経営幹部の器量と恐怖感がそのまま組織に反映されるからである。ドラッカーがこのことを指摘していたと思うが、組織がだめになる前兆である。これにもう一つ品質問題隠しが追加されれば、悪循環が組織に蔓延する。

ISOは本来このようなことをなくすために、システムの継続的改善を要求している。
システム作成段階から、成果のあがるシステムを考えるべきである。
1+1を2にするだけならシステムはいらない。システムとは部分の和より全体を大きくすることである。シナジー効果をあげるのがシステムの目的である。

たとえば中小企業、少ない人員で仕事をオーバーラップしているから、うまくいく。
組織が複雑になり、責任権限が細分化されたのでは、うまくいくはずはない。こんなあたり前のことが理解されてない。
文書化のみ考えて、取り付かれたように文書を作ると、硬直化したシステムになる。システムは両刃の剣であることを忘れてはいけない。
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13.責任と目標

2006-12-18 | 継続的改善52
責任とは達成すべき目標であり、権限は目標達成のための条件である。
この定義は非常に明快である。
責任を自覚するためには自分が達成すべき目標が明確でなければならない。
目標のあるところには目標達成の障害となる問題があるから、目標意識と問題意識は同じである。問題意識のない人は目標意識もない。

組織で自分の目標があることは、自分の役割や使命感を自覚していることである。
「人間は自分の欲するところのものになる」という言葉があったが、欲するところという目標を持つべきである。しかし、高すぎる目標をかかげるあまり目標の達成をごまかすことのないようにすべきである。自分自身を偽ることは、自分の品位を失うことである。
最近の企業ぐるみのうそは自分自身を偽ることが原因である。
逆に目標がいつも未達成で敗北感を感じないためには、自分に合う目標を設定すべきである。
「自分の欲することを為し得ぬ者は、おのれの為し得ることを欲せよ」とはダ・ヴィンチの言葉である。

目標の設定について上位者の指導と支援が必要である。
上位者は部下の能力をいつも把握しており、能力に応じた目標を与えるべきである。
責任の重要性を自覚するには、責任権限の委譲が正しく行われなければならない。
たとえば「誰も手が空かないので穴埋めに頼む」という仕事と「君の能力を見込んでこれを頼みたい」というのでは、責任の重さが違う。責任の受け取り方が違うのである。
誰でも普段見せないが、大きな可能性、潜在的な力を持っている。
いざという時、力が出せるのは俗に言うところの「火事場の馬鹿力」である。

ほんの少しの思いやりと動機付けで、人の能力を引き出すことができる。
このためには、人の気持ちを感じそれに答える能力が要求される。
応答(Response)できる能力(Ability)がRESPONSIBILITY(責任)である。

方針管理や目標管理というものは人を動機付け、人と人の気持ちをつなぐ為にある。
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12.方針と目標

2006-12-17 | 継続的改善52
方針が当り前のスローガンであり、目標がいつも未達成なのになにも手が打たれてないようなら、方針や目標をすぐに撤去すべきである。
方針や目標は、ないよりある方がいいというものではない。
ある方が悪い場合が多い。このことに気付くことは大切である。

わずかな進歩であっても、望ましい方向に進んでいることが実感できる場合は、人はその方向を目指そうとする。このためには、方針、目標の設定のため現状を良く見極め(現状把握)、目標が達成できる実行計画に展開されなければならない。実行計画はたえず確認されよい方向に向かうための処置がとられなければならない。成果のあがったことは評価され、よい点は水平展開することにより成果をあげることができる。このようなPDCAのプロセス全体を方針管理や目標管理という。

人は正しい道が示され、動機付けられると想像以上の力を出す。
動機付けというとすぐ教えることを考えるが、良い点を引き出し(教えられ)それを評価して、水平展開することが何よりも大切である。
組織のリーダーは動機付けの名人であって欲しい。

「実現に程遠く、困難な、はるか離れた微かな光を、情熱の炎に燃え上がらせることができる、これは疑いもなく人間の生命源泉における大きな力である」 オルテガ
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11.要求と技術

2006-12-16 | 継続的改善52
顧客の要求から組織の経営資源を点検してみる。
顧客要求の達成を目的として、その手段を考える。その手段を目的とするとその目的を達成する手段に展開できる。このように顧客要求を展開するとその目的を達成するための技術に展開できる。技術が多くの目的と関連する場合は技術も展開するとよい。
顧客要求の展開を「要求品質表」と名付けた。
一方、技術の展開を「技術表」とよぶ。技術を設計技術と生産技術に分けて、「技術表Ⅰ」「技術表Ⅱ」のように区別しても良いだろう。

また、要求品質と技術のマトリックスを作ると自社の技術の分布がみえる。
顧客要求の中で今後の動向を予測した場合、自社の保有技術は十分か、不足している技術はなにか。今後の技術開発の重点はどこか、などが整理できる。
ポートフォリオも市場と技術のマトリックスだが、顧客要求、要求品質はもう一段階技術の中に入り込んだ指標である。
このように意味ある比較をすることにより今まで見えなかったものが見えてくる。

設計が図面だけでは表現できない品質保証上の重点をまとめたものを、QA表とよぶことがある。
自動車のような組立て業の場合は「部品QA表」「組立てQA表」と区別する場合もある。
ついでこのQA表を製造工程に展開したものが「QC工程表」である。

このような展開を品質管理では品質機能展開:QFDとよぶが。これらは問題発見の道具として、まず活用すると多くの問題の発見に役立つ。
蛇足しておこう。QFDは始め問題発見や問題の予防のために開発された道具である。
しかし、それを形式的に真似るだけでは役に立たないばかりか、余分な仕事が増えるだけのことである。形を作って魂を入れることを忘れてはならない。
「仏作って魂いれず」ではご利益が得られない。
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10.事業を品質で見直す

2006-12-15 | 継続的改善52
事業で利益を追求するのは当然のことであるが、なぜ利益が必要かを考えてみる必要がある。利益は事業に配分されて目的と結びつく。
最近の事件を考えてみよう。本来手段であるべき利益が目的となり、得られた利益は事業の推進に結びついてない。

ISOでは資源の運用管理という項目がある。人的資源と作業環境・インフラが運用管理の対象であるが、品質方針の達成のため、質の高い運用管理をめざすべきである。
事業活動の結果として利益が得られるが、この事業プロセスを品質で管理するのが品質管理である。ついで品質とは顧客のメリットだから顧客の利益としての顧客要求、顧客満足を重視したシステムがISOである。

品質で事業を見直すことにより、今まで見えてなかった「宝の山」が見えてくる。
利益は定量的に処理できる便利な指標だが、結果の指標である。
品質は利益の先行指標または代用特性として優れている。
不良の多い製造工程からは利益は得られない。
「仏作って魂入れず」という言葉がある。製品という形を作っても、心である品質がその中に込められてなければ、魅力ある製品とはいえない。市場でのクレームやリコールは品質を忘れた設計や製造が原因である。

このような単純なことが理解できてないのは、欲深い裸の王様が自分の貯金通帳を見る時間に追われ現場を見ていないからである。
品質管理をするということは、品質をしっかり見ます、現場から学びますというコミットメントをすることである。これが出来て初めて「事業を品質で見直す」ことが出来る。
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9.文書化の世界

2006-12-14 | 継続的改善52

「口角泡を飛ばす」というような言葉がある。
これでもかというくらいに議論する、言葉や文書にこだわる。欧米の特徴である。
むかし友人の映画監督に教えられた。シナリオを読む。日本の会話は全てを言いきらないそうだ。余韻があるというか余韻を残さないとシナリオにならない。
そこで、韓流、すべてを話してくれるから楽しい。異性からこう言われたいと思っていることを聞く心地よさがある。
詩人の佐藤春夫が詩を書く心得は聞かれて「言葉は浅くこころは深く」とこたえた。
山頭火「言ひすぎは言ひ足らないよりもよくない」。このことは最近書いた。

また、日本人は形と心を別のものとは考えない。
長年かけて心を形に変える。茶道、華道などはそれにあたる。
ISOでやたらに文書を作っても決して形はできない。形のないものには心はない。
ではどうしたらよいだろうか。
日本には「守破離」という形を学ぶプロセスがある。
まず、形から学ぶ、次ぎに形を破る、そして全てから離れてみる。その後、自分なりの形を作りそのくり返しをするというプロセスである。

このような考えが日本の品質管理にも生きている。
改善のプロセスを考えてみよう。現状把握して問題の原因を見つけ、それに手を打って成果を確認してから、歯止め標準化する。
当然標準化とは、良い点や問題の再発防止の標準を作ることと、その教育訓練をしてよい状態を維持することである。これが出来たら次の問題を探し改善を繰り返す。

さて、ISOを作ったEUのように外国人労働者の多い国では、作業者の訓練のための作業標準のような文書は必要である。スタッフは苦労して標準をつくり、徹底して守らせ、また守る努力をする。最近のように、海外の労働者の多い日本で学ぶべきことも多い。
ただし、日本のよさを生かした標準化に取組むことが大切である。
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8.品質マネジメントの構造

2006-12-13 | 継続的改善52

品質を重視した経営:品質経営、品質マネジメントの構造は次のように説明することができる。
経営者は品質方針を設定しその実現のため組織全体への展開、実施のプロセスを確立する。
品質方針が単にスローガンで終わることがないように、全てに人を教育訓練し、また実現のため必要な経営資源を投入する。
事業の実現、顧客要求を満たす製品の実現のためのプロセスを構築して、その継続的改善を実践する。当然このプロセスは品質方針実現のため機能していることを確認する。
品質問題の予防と顧客満足のため測定と管理、是正と予防を含む継続的改善のプロセスを確立すること。
これらのプロセスが総合化され全体で機能するようにシステムを構築すると共にPDCAを実践する。

ISOが規格として出来てから、品質管理・品質経営のような概念も容易に説明できる。
これが規格化の利点である。
この規格を下敷き(テンプレート)にして、組織の強い点や特色、顧客に強調したいことをまとめたものが品質マニュアルをはじめとする文書である。
またISOの便利なところは審査登録のしくみが出来ているので、お金を払えば審査して定期的にフォローもしてくれる。このしくみをいかに戦略的に使うかは、企業に任されていることであるが、経営者の理解の程度と自社の経営のビジョンをどこまで前向きに出せるかの器量にかかっている。
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7.診断と治療

2006-12-12 | 継続的改善52
品質管理は数あるマネジメントの手法の中でも診断に重点をおいた実践的活動である。
ISO以前の品質管理の特色はトップ診断が実施され、経営者が自ら診断することにより、PDCAをまわしたことである。誰しも「自分の体のことは自分が一番良く知っている」と思っているが、「医者の不養生」の例えがあるように、過信は禁物である。
もともとマネジメントの専門家である経営者が科学的かつ客観的な診断をするので自社の実力を正しく評価することができる。
もとより「診断」は、自社の強い点や改善すべき点を明確にすることである。多くの経営者が自分のPDCAについて反省をし、「宝のもちぐされ」ともいえる自社の強い点を発見することができる。
当然のこと、このためには周到な準備と品質管理の手法が使われる。

品質管理の草創期には日本ではコンサルタントとよばれる人がいなかったから、大学の先生方が経営者の助言役になった。コンサルタントのプロでもない人が助言するので、遠慮もなく、日本の製品の品質をどう高めるかに重点がおかれた。デミング賞も大いに貢献した。
デミング賞の審査は、二つのスケジュールで運営される。
Aスケジュールとよばれる審査は受診側から品質管理による成果が発表され、その範囲での質疑が行われる。この発表は主に品質保証のような部門間連携の活動の成果を中心に発表する。組織の特色である強い点をアピールしてそれをより強くするためのアドバイスをするわけである。
もう一つの審査の方法は、Bスケジュールという方法で、これは審査側からの質問を中心におこなわれる。Aスケジュールが機能別であったのに対し、部門別に現状把握するのが目的である。

さて、ISOの監査である。経営者自ら審査するのでなく、内部監査員が監査してその結果を報告するしくみである。経営の実務を知らない監査員がISO規格を基に監査するので、経営という側面より、規格の解釈に追われる。注意しないと形骸化したシステムを作る可能性がある。

正しい診断がされて、正しい治療がされる。
診断と治療はバランスがとれてなければならない。
診断のみ名人になっても、治療が不十分ではよくならない。
診断の出来ない医者はやぶ医者である。ただし、治療があってこそ診断も役に立つことを忘れてはならない。
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