仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

短命 / 立川生志

2022年03月27日 | エンタメ
落語『短命立川生志
噺は、「これから弔いに行き、"いやみ" を言ってくるので、どう言えばいいか教えてほしいという八。どんな恨みがあるかはしらないけれども、弔いで "いやみ" なんかは言わないほうがいいと諭すご隠居。しかし、これは "くやみ" の間違い。何とも物を知らない八だが、誰が亡くなったのかとご隠居に聞かれ、 "世話になってるお店(おたな)の旦那がまた死んだ" と、さらに分からないことを言い出し・・・」という内容。
八は「弔いに行って "いやみ" を言うのは人として当たり前のことじゃないんですかね」と自信満々だったが、ご隠居に間違いを指摘され、「あぁあぁ、そのやみ」と、あっさりと間違いを認める素直な男だ。
さて、演者の立川生志師匠は、七代目立川談志(1936年~2011年)師匠の弟子。
大学卒業後、企業で営業マンを経験したあとに入門したのだという。
平成21(2009)年に大病を患い、生死の境をさ迷った経験から、以後は「出来ることはしよう」と、一年に二回、時間を作って海外旅行をしているとのこと。
「名前だけ聞くと、皆さんに幸せを振り撒くような病名なんですが」と、そこを笑い話にしてしまうのだから、やはり何かと前向きな人なのだろう。
(^_^)

猫と金魚 / 立川談笑(六代目)

2018年06月02日 | エンタメ
落語『猫と金魚立川談笑(六代目)。
噺は、「隣の家の猫に金魚を食べられてしまった旦那さん。隣の家と揉めたくないので、縁側に置いてある金魚鉢を高い所に移してくれと番頭に言う。ところが、この番頭は湯殿の棚に金魚鉢だけを上げ、新しく買ってきた金魚を中から取り出してしまった。金魚鉢を移してくれと言われたから中の金魚はそのまま縁側に置いたままにしたのだという。何とも困った番頭を諦め、今度は鳶職のトラに猫退治を頼むのだが・・・」という内容。
頭は大丈夫か?と心配になるほどに頼りない番頭だが、猫を相手にした時の旦那さんもまぁ似たようなもので、猫に引っ掛かれて悲鳴をあげてしまう。
隣の家の猫は随分と大きな猫のようだ。
(^。^)
この演目は、昭和初期に漫画『のらくろ』で一世を風靡したという漫画家・田河水泡(たがわすいほう/1899年~1989年)が原作とのこと。
漫画家になる前に落語専門の作家として活躍していた時期があるのだという。
才能のあるクリエイターというのは、どんな方面でも活躍できてしまうものなのだろう。
素晴らしい。
さて、演者の立川談笑師匠は、七代目立川談志(1936年~2011年)師匠の弟子。
身長180センチを超えるなかなかに大柄な落語家さんだが、身体に似合わずとても怖がりな人だというのが面白い。
(^_^)

目黒の秋刀魚 / 春風亭一朝

2017年12月06日 | エンタメ
落語『目黒の秋刀魚春風亭一朝
噺は、「秋。殿様が目黒まで遠乗りに出掛けたが、突然のことだったので供の者は弁当を持ってきていなかった。辺りは田園風景ばかりで何もない。一同が腹をすかせているところに、どこからか、煙と共に旨そうな匂いが漂ってくる。"あれは何の匂いか"と聞くお殿さま。家来が、"秋刀魚という下魚でございます。高貴なお殿さまが口に召すものではございません"と答えたものの、百姓が"隠亡焼き"にした十匹の秋刀魚をすべてたいらげてしまい・・・」という内容。
"隠亡焼き"とは、網を使わず、真っ赤になった炭の火の中に直接秋刀魚を突っ込んで焼くという焼き方のことらしく、これが一番美味しいのだとか。
魚は鯛しか食べたことがないという殿さまが初めて食べた秋刀魚がこれだったのだから、その美味しさによほど驚いたはずだ。
あまりの美味しさから家来には分け与えず、全部一人で食べてしまい、これには家来衆もガッカリしたということだが、その際の上目遣いの演技が何とも雰囲気が出ていて良かった。
(^。^)
「いっちょう懸命頑張ります」と言う春風亭一朝師匠は、五代目春風亭柳朝(1929年~1991年)師匠の弟子。
東京都の出身ということもあって、テレビドラマの江戸ことば指導を行なったこともあるらしい。
さて、枕では、かつて落語協会で行われていたという"真打昇進試験"のことを話されていた。
落語協会柳家小さん会長の自宅道場につくられた即席の高座で、五代目柳家小さん(1915年~2002年)師匠、三代目三遊亭円歌(1929年~2017年)師匠、四代目三遊亭金馬師匠、十代目金原亭馬生(1928年~1982年)師匠、五代目春風亭柳朝(1929年~1991年)師匠、古今亭志ん朝(1938年~2001年)師匠、七代目立川談志(1936年~2011年)師匠、五代目三遊亭圓楽(1932年~2009年)師匠、十代目柳家小三治師匠といった名人たちを前にして一席やらされたのだという。
「誰も笑わない。噺を直されたやつもいる」というような興味深い話で、これも面白かった。
(^_^)

死神 / 立川志らく

2017年11月12日 | エンタメ
落語『死神立川志らく
噺は、「江戸のとある長屋。三両のお金を用意することができず、嫁に罵倒された挙句、家を追い出されてしまった男。いっそのこと死んでしまおうとした所へ、汚い身なりの爺さんが現れ、自らを死神だと名乗った。金儲けの方法を教えてやると言うその死神から、首にかけていた数珠と、ある呪文を授かった男。長患いをしている病人の足元に死神が座っていれば、まだ寿命があるということだから呪文で助けることができる。しかし、枕元に死神が座っている時は、どんなに金を積まれても余計なことをしてはいけないという死神。さっそく家に帰り、言われた通り、"いしゃ"の看板を出してみると・・・」という内容で、これは、幕末期から明治期にかけて活躍した初代三遊亭圓朝(1839年~1900年)が、グリム童話の一編を基に創り出した落語だという。
男は死神から「あじゃらかもくれん、〇〇〇、てけれっつのぱぁ」という呪文を教えてもらうのだが、中身は演じる噺家によっていろいろ工夫されるようで、この志らく師匠は「あじゃらかもれん、談志が死んだ、上から読んでも下から読んでも、談志が死んだ、てけれっつのぱぁ」と自分の師匠である立川談志(1936年~2011年)の名前を使っていた。
また、"下げ"にも多くのバリエーションがあるので、この噺は何度聞いても最後まで飽きることがない。
これから年末にかけて演じられる機会が多くなる、仁左衛門的には結構好きな噺だ。
(^_^)

山崎屋 / 柳家さん喬

2017年11月02日 | エンタメ
落語『山崎屋柳家さん喬
噺は、「江戸時代。日本橋横山町のべっこう問屋・山崎屋。道楽者の若旦那・徳三郎は、吉原の花魁(おいらん)に入れあげて幾度となく店の金をごまかしていたが、ある日、番頭に三十両融通してくれと頼む。番頭が隣町に女を囲っていることを知っていた徳三郎は、脅すようにして話を進めようとしたが、番頭は花魁と所帯を持ちたいという徳三郎の気持ちを確認し、一緒になれる策があるからと、逆にとある話を持ち掛け・・・」という内容。
11歳の時に奉公にあがったという番頭は、「私は女の人が大嫌いで、傍に寄せたこともありません。女のお客さんが来た時には若い者に任せるくらいですよ」と言うが、"堅物で通っている"という自己申告とは裏腹な実態が明らかになってくると、徳三郎の口から出る言葉が、「お前は野暮だねぇ」から、「お前は悪党だねぇ」に変わっていって面白い。
(^。^)
江戸幕府の時代は、1603(慶長8)年から1868(慶応4/明治元)年まで265年間もあるので、その間の貨幣価値は随分と変わったのだろうが、この噺の頃の"一両"は平成時代の10万円くらいの価値なのだそうで、花魁と一晩遊ぶために必要だった金額の"三分"とは、7万5,000円ほどだったようだ。
それを一晩で使ってしまうのだから、若旦那とはいえ、それを何度ともなると、店の金をごまかすにも限度があったわけだ。
(^_^;)
演者の柳家さん喬師匠は、人間国宝となった五代目柳家小さん(1915年~2002年)師匠門下で、七代目立川談志(1936年~2011年)師匠、十代目柳家小三治師匠、十代目鈴々舎馬風師匠、九代目入船亭扇橋(1931年~2015年)師匠などの弟弟子。
この噺も、さん喬師匠のその穏やかな語り口にどんどんと物語に引き込まれていく。
若旦那が戸を開ける時の"ガラガラガラ"という音と、お妾さんが戸を開ける時の"カラカラカラ"という擬音の使い分けなど、その言葉から場面が想像できて楽しく聞けたのだった。
(^_^)

喜劇・いじわる大障害

2014年02月25日 | ムービー
『喜劇・いじわる大障害』(1971年/藤浦敦監督)を見た。
物語は、「1970年代。田舎で何不自由なく生活していたおぼっちゃん・猪狩次郎(岡崎二朗)は、"東京で一旗あげてやる!!"と決意し、従兄弟の談次(立川談志)を訪ねる。しかし、到着早々電車でスリ被害にあってすっからかんになり、警察署内で偶然居合わせた女詐欺師(宮城千賀子)にもカモられてしまう。挙句の果てにはインチキ産婦人科に担ぎ込まれて法外な請求をされる等まったくツキに見放されてしまったようだったが、そこに電車内で見かけた春子(夏純子)が現れて・・・」という内容。
立川談志監修とあって、三遊亭圓楽(五代目)、三遊亭小円遊林家木久蔵三遊亭円歌毒蝮三太夫といった『笑点』のメンバーや林家三平(初代)が出演している。
そして、"インチキ産婦人科医"といえばもちろん漫談のケーシー高峰であり、さらに、見るからに怪しく最もインチキ臭い登場人物(不動産屋)を演じているのが喜劇俳優の南利明である。
話し方も態度も着ている服ですら、何もかもすべてがインチキに見えるから凄い俳優さんだ。
(^。^)
主役の俳優よりも脇役陣のほうに存在感があって楽しいのだが、物語全体ではそのような素晴らしい要素を活かしきれていないのが残念だ。
ただ、廃坑になったなった炭鉱からダイヤモンドの鉱脈が発見される等、映像以外の発想は面白い。
そういったところは落語家が監修してくれているだけのことはあるのだが、期待をして見始めてしまった分、内容には少しガッカリしたのだった。

歓喜の歌

2010年02月01日 | ムービー
『歓喜の歌』(2008年/松岡錠司監督)を見た。
物語は、「大晦日を控えた"みたま文化会館"では、直前になってホール使用のダブルブッキングが判明した。同会館の主任・飯塚正(小林薫)が申請団体の"みたまレディースコーラス"と"みたま町コーラスガールズ"を混同してしまい、半年も経ってから部下・加藤俊輔(伊藤淳史)の指摘で明らかになったのだ。ミスを加藤に押し付ける等マッタク反省する様子が無い飯塚だったが・・・」という内容。
両団体の代表者に事態の説明をする等して話が進展してからも、"レディース"と"ガールズ"を間違ってしまう飯塚は、仕事に対するひたむきさを持ち合わせていない、何ともいい加減な人間のようで、私生活ではロシア人ホステスに入れ込んでいたことから、妻・さえ子(浅田美代子)にも愛想を尽かされている。
どうしようもなく救いの無い話の連続だが、そのロシア人ホステスの名前が"シャラポワ"だったり、飯塚のあだ名が"ロンリーチャップリン"だったり、また、電気ストーブを横に倒してトーストを焼こうとする婆さんに「私機械には強いんです」と言って、何とかそれで焼いてあげる"みたま町コーラスガールズ"のリーダー・五十嵐純子(安田成美)等、のほほんとした小さな笑いや設定も散りばめられていて、全然深刻さを感じさせない。
(^o^)
住職役で立川談志が出演しているのが不思議だったが、この物語は弟子・立川志の輔の新作落語が原作だったということで納得だ。
なかなか面白い物語だった。