マレーシア マイセカンドホーム  -シニア世代の海外ロングステイ-

マレーシアにロングステイする”マレーシアマイセカンドホームプログラム”の情報と解説のブログ。最新更新 2017年4月

マレーシアで暮らすには World Englishes の英語力が必要です

2013年08月24日 | マレーシア生活の案内と知識

【はじめに】

当ブログは以前から記事内で次のように時々強調しています:
”ロングステイ地ではその地のスタイルにできるだけまたはある程度は馴染もうとされる方、日本人コミュニティーと付かず離れずに暮らしたい方”、 ”マスコミや業者が創り出している海外ロングステイのイメイージにこだわらない人” を応援します。
”日本人コミュニティー内だけで暮らすつもり、暮らしたい”場合のことは扱いません。
21世紀の現代は携帯電話、スマートフォン、ネット接続パソコンを使えば、(隣近所ではない)離れている在マレーシアの日本人とも容易につながりは持てますよね。以上

イントラアジアはこういう方たちを念頭においてまたは対象にしていますから、読者の皆さんもできるだけ自立したマレーシアロングステイを目指される方、自分で行動することを良しとする方、例え業者を利用してもそれに依存しない方、だと思っています。
マレーシアにロングステイされる方、したい方、興味をお持ちの方、のどれくらいの割合がこの範疇に入るのかの推定は難しいですが、多数派ではなくてもかなりの割合は占めるだろうと期待しています。

さてこういう範疇の方々ですから、外国であるマレーシアで日本語だけで暮らそうと考えていらっしゃらないはずですし、現実にそれは二律背反となって不可能です。

マレーシアの国語はマレーシア語です。といって当ブログの読者の方に、マレーシア語を使って暮らしましょう、などと呼びかけることはしませんし、そのつもりもありません。国語である以上、多少なりともマレーシア語を覚えてください、と呼びかけます。

イントラアジアは決して愛国語主義、ここでは愛マレーシア語、という立場に立つことなく、1990年代初期に習って以来日常的にマレーシア語を話し、聞き、量は多くなくても読んでいます。日本人が国語である日本語を大事にするように、外国人として住む国ではその国の国語への敬意を払うべきである、という観点に立ち、それを実践しているからです。

【マレーシアで非常に通用力の高い英語は避けて通れない】

そこでほとんどの日本人にとって最も馴染みのある外国の言語は英語ですから、話は英語に絞ります。マレーシアにおいてたいへん通用力の高い言語は英語です。元英国植民地であるという歴史が決定的にこの英語の通用性を高め且つ英語に相当依存した社会を作っている。

この場で詳しいことは一切書きませんが、イントラアジアは長年、世界における言語支配つまり英語支配を批判する論を書いて発表してきた、且つ実践してきた反”英語帝国主義”者です。
しかし言語としての英語に反対しているわけではありません。英語も1つの言語である、しかも非常に通用力の高い言語である、という事実を認め、1970年代中頃から今日に至るまで、旅行、生活、ビジネス、交際、読み物、調査、娯楽といった諸面で日常的に使っています。現実に20歳以降のイントラアジアの人生は英語を無視して成り立ちません。一方多言語主義者として、日常的に4つ、5つの言語を使います。

当ブログをいつもから時々までご覧になる読者の方であれば、英語をほとんど使わずにマレーシアで暮らしていくことはできないはずです。逆に言えば、英語をほとんど使わずに暮らすのであれば、当ブログの想定する範疇のマレーシアロングステイ者には成りえない、ということです。

もちろんどうやって暮らそうとその人の自由です。当ブログはあくまでも想定した範疇の方たちに向けて書いていますから、範疇外の人たちに、当ブログでこれまで数年間延々と書いてきたようなことを勧める意図は最初からありません。

残念ながら現在ほとんど英語がわからないという方は、マレーシアに住むまでの準備期間中に、少なくとも1年位はあることでしょう、しっかり英語を学習しておきましょう。
次に重要な点を説明します。その前にあらかじめ一点おことわりしておきます。イントラアジアはこの記事を書く際、できるだけ平易な表現を使い、専門用語は極力抑えましたが、それでも内容上意味を正しく伝えるためにどうしても使わなければならない表現と用語はあります。

【標準アメリカ英語/イギリス英語を至上目標にした価値観に捉われないこと】

学習する英語は、標準アメリカ英語または標準イギリス英語である必要はありません。ただし強調しておきます、英語とは呼べない段階の英語もどきを使えればそれで構わない、ということではありません。
注:ここで表現した”英語もどき”とはピジン英語とクレオール英語のことではありません。簡単な説明書きを最下段に載せてあります。

現在世界で使われている英語は既に World Englishes (複数形です)の方が多数派を占める。標準アメリカ英語または標準イギリス英語から離れた様々な英語が使われており、その話者数は、英語を母語とする米国人と英国人の合計数よりはるかに多い。
注:母語と母国語は似て非なるものです。言語と国は必ずしもイコールに結びつきませんから、母語が母国語ではない人は、母語が母国語である人並みに多い。

それぞれの母語と地域語に根差した様々な英語が使われており、それで十分事足ります。
マレーシアにロングステイされる方は、国際会議で通訳をするわけではありません。米国に住むわけでも、日常的に英米人だけとビジネスをするわけでもありません。マレーシアの地で、マレーシア社会の中で暮らすことになる。

マレーシアで使われる英語は一般に Malaysia English と呼ばれますが、多民族社会ですから例えば、マレー人はマレー語的な Malaysia Englishであり、華人は中文(漢語)の匂いを残した Malaysia Englishを話し、インド人はタミール語発音を感じさせる Malaysia Englishを使うのが一般的であり、圧倒的に多数です。
ごく一部のマレーシア人は確かに典型的な British English を話しますが、その人たちでも日常の中では Malaysia Englishに切り替えるのが普通です。

日本では未だに標準アメリカ英語または標準イギリス英語を至上目標にしている傾向が強いので、それ以外の World Englishesを否定的に捉える言語価値観にとらわれています。しかし世界の多くの地で、日常的に World Englishesがビジネスを含めて使われているのです。

英語の中で日本人は氏名をわざわざ逆にして表記したがる。日本国パスポートでは既に1980年代に、現在の記載順:姓先、名後の順序に変更された。中国人、台湾人、韓国人、ベトナム人は英語の中でも、ちゃんと本来の姓先、名後の順序を保っているではないか。日本人は不必要に欧米基準観に捉われ過ぎている、それが日本人の英語観に典型的に現れている。


【必要かつ十分である世界英語World Englishes 】

World Englishes(複数形)は決して崩れた英語でも英語変種でもありません、英語のバラエティーの広さの中に生まれた種々の英語です、従って言語として英語の統辞構造に基づくのは当然です。語彙や発音の面で民族性と地域性が十分に感じられ、文法面で標準アメリカ英語またはイギリス英語の規範から多少のずれが許容されている。

繰り返します。当ブログの読者の皆さん、つまりマレーシアでロングステイされる、されたい方は、アメリカ英語またはイギリス英語のプロになる必要はありませんし、米国で、英国で、オーストラリアで生活するわけではありません。口語American English の表現を覚えなければならない、Scottish English の発音に慣れなければならない、なんてことは全くありません。

英米人はそうは言わない、英米人の発想と表現はこうこうであるといった、ある種愚かで英米崇拝主義に満ち満ちた書籍が、日本の書店にはいっぱい並んでいますよね。 
そんなものに金と時間を使うなら、マレーシア語の単語やMalaysia Englishの表現を一つでも覚えた方がよっぽどためになります。

必要なことは、非日本人に理解できる World English(日本人の場合その多くはJapanese Englishになることでしょう)をそれなりに使えるようにするということです。英語もどきではだめです、あくまでも英語でなければならない、しかし標準的なアメリカ英語またはイギリス英語である必要はない。

”必要はない”ということは”いけない”ということではありません。私は昔から標準アメリカ英語を話してきた、という方であれば、もちろんそれで結構です。Intraasia 自身、1970年代、80年代の頃はできるだけアメリカ英語風に話していました。が今ではそういうことに捉われないようになりました。中立的な英語を話すようにしています。

【日本人は英語が読めるという神話のうそ】

昔から日本には、日本人は英語は読めるが話せないという、神話がありますね。これはあくまでも神話であり、英語を知らない人たちの思い込みです。これを主張しているのは、何もイントラアジアだけではない。(下段の参考資料も参照してください)

イントラアジアは、長年海外での日本人の言語状況を見聞してきたし、1990年代半ばからウエブ上でホームページ、ブログなどを主催してきましたので、日本人一般の英語読解力のなさをよく知っています。例えば、ごく基本的且つ初級英語で書かれている出入国カードの書き方さえ読めない人、つまり書かれた内容を理解できない日本人旅行者が少なくない(マレーシアは昨年出入国カードを廃止しましたが)。
注:だから日本の英語教育は不十分であり、小さいうちからもっと英語を勉強させる必要がある、という英語教育優先主義には賛同しません。イントラアジアは、人生のほとんどを日本国内で送る人たちに英語学習を強制する思考とあり方には強く反対します。(英語を学習することに反対しているわけではない)

マレーシア社会に暮らせば、日常としてあらゆる面で書かれた英語がついてまわる。もちろん国語マレーシア語も同じようについてまわるが、この記事で最初に書きましたように、プログラム参加者にマレーシア語文を是非読めるようになろうとは、ここでは呼びかけません。英語に絞ります。

【英語の指示文・説明文はマレーシア生活のいろんな面で関わってくる】

例をあげます、誰にでも関係する銀行の場合です。店舗に並んでいる、ATM機の指示言語はマレーシア語、英語の2言語から選択します。さらに華語が加わっている銀行が多い、よって2または3言語から選択する。各画面は単語だけの場合が多いですが簡単な指示文も表示される。

現在はネットバンキングが盛んですから、マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者もネットバンキングを使えば、ぐっと銀行利用が便利になります。いちいち窓口に並ぶ必要もないし、銀行の商品とサービスについてほとんどの情報が得られる。

マレーシアの2大銀行の1つで、イントラアジアも口座を持っている、CIMB 銀行のウエブサイトのアドレスを掲げます。個人顧客用のページです(左部分をクリックしてください)
その中から誰にも最も縁があるはずの、普通口座の説明をご覧ください。
手順:そのページにある Daily Banking をクリックして、プルダウンメニューから Saving Accounts をクリックする。

例えばそこに表示される短く簡単な説明文:
A savings account that pay you higher interest when you save more

この一節を一読して意味が取れなければ、その方は基本的英語力がないと言えます。

また別の例をあげます。
マレーシアで携帯電話、スマートフォンを買って利用される方がほとんどでしょう。当然、機器の説明からネットワークの使用説明まで全て、マレーシア語か英語(加えて華語でも提供される場合がよくある)のどれかを読むことになる。

マレーシアの3大電話ネットワーク会社の1つ DiGiが提供している指示・説明文からほんの一つだけ例をあげます。Q and A の形になっている:

Can I use my mobile phone to perform talktime credit reloads for another DiGi Prepaid™ mobile number?

Yes, you can. Just key in *123* <your 14 or 16-digit reload PIN> * <your mobile phone number># and press SEND/CALL.

Example:
To reload a voucher with a 16-digit PIN (e.g. 1234567890123456) into a DiGi mobile number (e.g. 0161234567) you would key in *123*3456789123456*0161234567#.

中学生にもわかる基本的な単語だけの簡単な構造の平叙文です。何ら複雑な構文でも、難しい単語もありません。これはいわゆる指示文ですから、誰にでも理解できる程度になっている。
購入や使用における条件・規定を記述した契約文章では、持って回った表現や法律表現などがちりばめられるので、初級程度の英語力ではよく理解できないのが当たり前です。しかしここに例を挙げた指示文は初級程度です。

以上はほんの3例です。このような指示文、説明文は日常生活のあらゆるところに関わってくる。

【英語読解力の必要性をよく認識する】

こうした英文をわからないままでまたはわかろうとしないで暮らすこともできる。マレーシアで働く数百万人の外国人労働者の内、非英語国からの人たちの中には、全く英語を解さない人たちも少なくない。彼らは仲間内だけの世界に暮らしています。

日本にいる外国人でも日本語の指示文が全く読めない者が少なくないことは、皆さんもご存じですよね。わからなくても暮らせるし、わかろうとしない人もいる。なぜなら仲間内だけの世界に住んでいるからです。

しかし、何回も繰り返しますように、当ブログの読者の皆さんはできるだけ自立したマレーシアロングステイを目指される方、自分で行動することを良しとする方、例え業者を利用してもそれに依存しない方、のはずです。 

そうであるためには、日常生活で目にする、出会う、対応しなければならない、英語の説明や指示文をきちんと理解できるだけの英語読解力は最低限必要です。この現実を理解されるものだと期待しています。
当ブログは明記しているように、”日本人コミュニティー内だけで暮らすつもり、暮らしたい”場合のことは扱いませんから、そういう人たちに説得するような意図は最初から全くありません。

【日本での準備期間中に基礎英語力をつけておく】

基本的英語読解力を身につけるためには、これは相手がいなくても自習できるので、日本にいる間に学習しておくべきです。日本の書店にはあらゆる種類と言えるほど様々な英語学習書が売られている。その中から、きちんとした基礎英語力を学習できる書籍を選ぶことです。

聞くだけでわかるだの、苦労せずに覚えるなどといった商業主義に満ち満ちた書ではなく、基礎をきちんとつける学習書です。上記で説明しましたように、アメリカ口語表現を解説したり、何々試験・検定で点を取るための書は不要です。皆さんは試験のために英語を学習するのではないし、米国で暮らすための英語学習ではありません。

とにかく1年間きちんと自習してください。そうすれば英語の基礎力がつきます。

【英語の会話力をつけるのは多少後回しでも仕方がない】

英語の会話力、これは自習だけではなかなか難しい。とりわけ聞き取り力は一朝一夕につきません。
現在の英語学習書は多くがCDが付いているでしょうから、それを毎日聞き、必ず声を出すことです。そのためには、英語の発音ができるようにする。この意味は、例えばアメリカ人のように巻き舌でなければならない、[th] は絶対に舌をかまなければならないということではありません。Malaysia English では [th] を舌で挟む人は絶対的に少数です。

要は、英語発音の基本を身につけ、且つ相手に理解される英語を話すということです。ですから、日本的イントネーションが残っていてもいいのです。マレーシア人一般の発音を聞いてみればすぐわかるように、誰も American English のようには話しません。それが World Englishes なのです。

英語の基礎力をつけた後で、マレーシアの地で日々英語を話す試みをしながら、1年間ぐらい街の英語塾に通って会話を向上させるのがいいでしょう(必ずそうするべきだということではない)。

【何事も基礎をいい加減にしては向上できない】

スポーツであれ、何らかの技術であれ、基礎を無視してその後の進歩はありません。テレビの野球やゴルフ番組でプロ選手の試合を何百時間も見たからといって、それだけで野球、ゴルフの技量が向上することがないことは、誰でも知っています。プロ選手が人前でその素晴らしい技量を発揮するのは、体力と基礎をしっかり身につけた後、長い長い時間をかけた練習をこなしたからです。

英語基礎力のない人が、いくら会話を習っても英語力の向上には結びつきませんよ。非文的な英語もどきが話せるとの錯覚を持つだけです。”赤ん坊は本で言葉を習わない”などというごまかし文句に騙されないことです。大人は赤ん坊時の脳と環境・状況に戻れません。

商業主義に毒されていない、英語を含めた各種言語専門家や言語の教育者は誰もこの種のインスタント学習法を推奨しません。

英語だけに絞って論じましたが、それは上で書いたように、日本人にもっとも馴染みある言語だからです。 
英語ではなくマレーシア語でももちろん構いません。例えば、バスに乗ったり、店で買い物したり、官公署を訪れる時、相手がマレー人である場合が多く、マレーシア語で会話した方がずっとスムーズにいくことが多い。

注:マレーシア語に関しては、『マレーシア生活に多いに役立つ言語: オランウータンにもわかる、超入門マレーシア語』という記事があります。左のカテゴリー欄にある「その他と未分類」をクリックしてご覧ください。


【まとめ:World Englishes の1つとしての Japanese English】

ここで説明した World Englishes という捉え方は既にかなり前からあるもので新概念ではありません。少なからずの学者や専門家がこれを論じています。ただ一般大衆にまで周知されていないのは確かですから、初めて目にされた方もいらっしゃることでしょう。

読者の皆さんは、英語の通訳や翻訳家になるわけではありません、高度な英語力を必要とする仕事に就くわけでもありません。従って目的と目標の違いだけでなく、学習過程にも違いがあって当然です。
あくまでもマレーシアで暮らすための英語読解力と会話力をつけるのが目的であり、そのための英語学習です。巷で喧伝されている”英語脳”を作らなければならない、といった英語絶対視思考、楽して英語ができるようになる、といった英語商業主義に惑わされずに、まじめにコツコツと1,2年間学習してください。

まず一般英語(English for general purposes) を学んで身につけ、それに長期滞在のための英語(English for long-stay purposes) を上乗せします。滞在地がマレーシアですから、長期滞在のための英語は Malaysia English になる。要するにマレーシア的な発音や表現に慣れる、知っておくということです。Malaysia Englishを話さなければならないということではありませんよ。
読者の皆さんは日本語を母語とする日本人ですから”相手に通じる Japanese English”を話して何らかまいません。どちらも World Englishes なのです。

英語を絶対視、崇拝視せず、英語は言語の1つである、という観点に立ちながら英語を使う滞在者が少しでも増えることを、イントラアジアは願っています。

 

上段注の説明書き
”崩れた英語”であると差別的に捉えられている言語としてピジン英語とクレオール英語があります。これらの英語は劣った言語であり、英語ではないという差別的言語観が幅を利かせていますが、言語は変化し多様性を持つという言語の本質を受け入れることが大切であり、言語を経済的価値からだけ眺めないことです。
当ブログはこの種のことを論じる場ではないので、読者の誤解を避けるためだけに説明書きしておきます。



参考 -数多い参考文献の中から抜粋して紹介

世界英語に関する論、日本人の英語に関する論は、いろんな論者が本にして書いています。その中で説得力のある論を展開している1人として、鳥飼玖美子氏の本から抜粋引用しておきます。彼女は有名な会議同時通訳者で日本通訳翻訳学会の会長も務めた、また大学で異文化コミュニケーションを教える英語教育専門家です。

『国際共通語としての英語』鳥飼玖美子著 講談社現代新書 2011年4月刊

私たちは、英語支配がもたらす弊害をきちんと直視し、危惧や懸念や憂慮や批判を十分に理解し、多言語共生という理想を追求しながら、同時に「普遍語となった英語」を活用するしかなさそうです。

事実上「世界の共通語」となった英語は、世界中の人々が活用するものであり、英語を学習した日本人が、その英語を使って意思疎通をはかる相手は、英米人とは限らず、英語を第二言語もしくは外国語として使用する非母語話者である確立の方が高い。
そうなると、「外国の文化」としてアメリカ文化を教えることは果たして妥当なのかということになります。

発音やイントネーションだって、英米人の真似をする必要はないわけで、「きれいな英語」よりも「わかりやすい英語」が大切になります。これを守らないと英語に聞こえないという音を精選して教えれば良い。

これからの英語教育は、英米文化を理解することが目的ではない、英語母語話者をモデルとして到達目標にするのではないと覚悟すれば、そのことを意識するだけでも違いは出てくるのではないでしょうか。

少なくとも、目に見える表層的な文化を無自覚に教えることを避け、英米文化の真似を強要することを排除できます。これがなぜ重要かというと、現在の英語が置かれた「共通語」という位置、もしくは英語支配の現状、英語帝国主義的覇権という不幸な状況下では、英語の文化を教えるつもりでいながら、結果的に英米文化の優位性を児童や生徒に刷り込むことになりかねないからです。
以上

『TOEFL・TOEIC と日本人の英語力』鳥飼玖美子著 講談社現代新書 2002年4月刊

英語を書く際には、文法・構文の知識なくしては、相手に理解されるような英文を書くことは無理である。
文法構文の知識なしにむやみに暗記だけしても、応用が聞かないので、実際には使えないことになる。

日本人のTOEFLスコアが低いのは、一般に考えられているのと違い、リスニング力や会話力がないせいではない。
日本人は文法には強く英語を読むのは問題ないけれど話せない、という前提は、過去のものである。実際は、文法も自慢できるほどではなく、読む力が乏しいから、結果として、全体のスコアが低い

読解力に関してTOEICの平均スコアを見ると、やはり低い。日本人は英語を読むことは問題ないという通説は、もはや幻想にすぎない。

日本人の読解力欠如がTOEFLスコアに現れていることは、じつは何年も前から、専門家の間では指摘されていることである。しかしなぜかこの点に関する一般の認識は低く、TOEFLスコアが低いことイコール会話がダメ、という図式になっているのは,まこと不思議である。
以上

他にも、菅原克也著『英語と日本語のあいだ』、本名信行著『国際言語としての英語』などでは、全面的に賛成ではないがかなり参考になる論が展開されている。



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