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マレーシアにロングステイする”マレーシアマイセカンドホームプログラム”の情報と解説のブログ。最新更新 2017年4月

マレーシア政府が実施する/した、中高級住宅不動産市場に対する3つの過熱抑制策

2013年11月06日 | マレーシアの住宅不動産ニュース

新築住宅不動産市場における価格上昇傾向はもう何年も続いていることが、頻繁にニュースになってきました。
1ユニット(住宅1戸)RM 50万以上の高級な住宅から、RM 20万から40万前後の中級住宅まで、その値上がり方に差はあれど、値下がるようなことは起きていません。

この住宅市場のいささか急こう配過ぎる値上がり傾向を受けて、政府と中央銀行Bank Negaraは、不動産過熱抑制策を今年(2013年)後半になって導入しました、または近々導入することになります。

なおユニット(1戸)価格RM 10万位までの低コスト住宅は、国のいわば公共住宅政策として行われています。住宅デベロッパーは中高級住宅開発に伴って、一定数の低コスト住宅を建設する義務があります。いずれにしろ中長期滞在する外国人にとって、購入はもちろん賃借にも全く関係がないのでここでは触れません。

注:マレーシアの住宅に関しては、これまで様々な情報を20編近い記事にして掲載してきました。当ブログのカテゴリーから 『マレーシアの住居知識と情報』 をクリックしてご覧ください。

中央銀行Bank Negaraはまず、デベロッパー側を対象にした抑制策を打ち出しました。いわゆるデベロッパーによる利子負担販売法を禁止する処置を講じました。これによって投機的傾向を持つ住宅購入者を減らすことになつながるそうです。

一般論として、中央銀行の抑制策は各市中銀行の住宅ローン方針に影響を及ぼすので、それが顧客つまりローンの借り手に及ぶことで、顧客の過熱した投資または投機傾向を抑制する効果を生むことになるのはどこの国でも同じではないでしょうか。

【2014年度予算案で発表された、3つの住宅不動産市場の過熱抑制策】

マレーシアでは例年10月頃に翌年度予算案が発表されます。ナジブ首相は2013年10月下旬に発表した2014年度予算案の中に、次の3つを盛り込みました:
・不動産デベロッパーによる利子負担方式の禁止
・不動産利得税率の改定

さらに外国人が購入できる住宅不動産の1ユニット最低限価格をRM 100万に引き上げるとの措置も含めました。これまではRM 50万でしたから、最低限価格が倍になったわけです。 この実施は2014年1月初めからです。

【外国人が購入できる最低限価格がRM 100万に引き上げられる】

そもそも住宅不動産の1ユニット(1戸)価格RM 50万というのは、既に高級住宅の部類であり、低所得層には全く購入不可能な価格です。
一般的な中所得階層の購入する住宅価格は、RM 35万-40万位までと言われており、RM 50万を超えると、まず手が出ないことになります。

ですから、外国人の購入できる住宅最低限価格のRM 50万は、以前から国民の大多数の購入住宅価格とは競合しない価格でした。
ユニット価格RM 50万以上の住宅を買える層は、間違いなく十分な所得を得ている人たちか資産がそれなりにある人たちとなる。

最低限価格RM 100万に引き上げられる以前から、ユニット価格がRM 100万以上の住宅の購買層は富裕層に限られます。例え少々高給を得ている勤労者クラスの人たちでも、この価格帯の住宅には手が出ません。

通貨に関する注:マレーシアの通貨は Ringgit Malaysia です、その記号 RM は紙幣はもちろん、至る所で使われている。Ringgit Malaysia を英語表記にしたものが、マレーシアリンギットです。なおマレーシアドルなどという通貨は存在しませんよ。

それではなぜ政府と中央銀行Bank Negara はこういう住宅不動産過熱に対する抑制策を打ち出してきたかの背景には、次のような事情があります。
イントラアジアの「マレーシアの新聞の記事から」ブログの記事を引用しておきます

【住宅不動産市場でバブルが起きるか起きないか】 2013年8月28日付け

国立Putra大学の住宅リサーチセンターの教授は述べる、「最近の政府の取り組みは、住宅価格の上昇問題に取り組むというものです。しかしそれだけで十分かは明確ではない。」 「意識的に作り出された価格の上昇はバブルにつながる。所得と不動産価格との間には不一致がある、とりわけクアラルンプール圏においてです。」 

「このことが次のことを示している:手に入れやすい価格の住宅が一般向け市場に供給するために建築されていない、クアラルンプール圏の多くの購入者は投資者かまたは投機家であろう。」
「市場の不動産価格は修正局面に向かっており、投機は減っていくことで、ユニット価格 RM 55万以上の住宅は供給過剰になるかもしれない。」

都市福祉・住宅・地方自治体省の大臣は第16回全国住宅と不動産サミットの開会演説で語る、「政府は不動産市場での行き過ぎた投資と投機活動を軽減しなければなりません、そうして不動産のバブルを防ぐようにします。」 「前に進みながら、政府は不動産投機を抑えるために金融政策をさらに引き締めることをちゅうちょしません、そして確かに適当で手の届く範囲の不動産価格になるようにします。」
「昨年不動産利得税が5%から15%に上がったが、不動産利得税の低いことが住宅価格の上昇を防ぐことに効果的ではありませんでした。」

不動産コンサルタント CBRE Malaysia の最高経営責任者は述べる、「選ばれたアジアの豪華住宅価格に比べれば、クアラルンプールは東南アジアでそれらが最も安価である都市の1つです。」 「香港では豪華住宅は平方フィートあたりUS$3,000 (RM10,200) であるのに、クアラルンプールでは平方フィートあたりUS$250 (RM850) です。」

その時点でIntraasia が加えたコメント:
大中の不動産デベロッパーは、ほとんど毎週と言えるぐらい頻繁に首都圏での高級住宅開発の開始と売出しを行っていることが、それを知らせる広告の多さからわかる。一体どれぐらい需要があるのだろうかと思えるのだが、実態は実際に住むのではない投資者と投機家がかなりの比率を占めるから、これほど多くの新規高級住宅の開発ができるわけです。
こういう住宅は低所得層はもちろん中の下層にも全く縁のない価格帯、つまりRM 50万以上のものばかり。 投資者と投機家に国外からの者が少なからずの割合を占める、筆頭はシンガポール人ですね。近年は台湾、中国、香港、インドネシア、韓国、日本などからも増えていると、不動産デベロッパはしきりにこの点を語る。つまり需要は固いと言いたいのでしょう。

新聞界にとって不動産広告の多さから不動産業界は大事な顧客、従って多くの不動産記事はデベロッパーの楽観的見方を主にした形で載せている。 海外からの投資者と投機家はしょせんマレーシアの住民の実態などどうでもよくて、要は儲かればいい、バブルが起きそうになればどこで売り逃げるかだけが彼らの関心でしょう。 

上記コンサルタント会社の発言は典型的な一つです、クアラルンプールの何々はどこどこの国と比べてまだ安いので、お買い得であるまたはまだまだ値上がりするという論法です。
以上

住宅不動産に関しては、利害関係者である業界関係者及びリサーチ会社・アナリストの論がマスコミに現れる分析の主流を占める中で、掲載された数少ない非主流の主張として次のような論がありました(2013年中頃)。デベロッパー筋からの情報ばかりに頼る人たちは、ここに紹介するような観点も知っておくべきでしょう。

【投機家と偽りの住宅購入者について全国住宅購入者協会は訴える】

非政府組織である全国住宅購入者協会の事務局長は主張する:
全国住宅購入者協会はいつも政府に要望してきました、「マレーシアの若い世代が持家なしにならないように、政府が介入すべきである。そうして若い世代が、新興地とりわけ都市部と準都市部で持ち家を購入できるようにする。」

政府は持ち家を増進しようと、購入時の印紙税率を下げて、初めての住宅購入者を奨励しました。
しかし投機家は、こうした状況を利用していろんな不動産所有を貯めこみ、手持ち現金の不足している狡猾なデベロッパーと共謀して不動産価格を操作してきた。
作られた需要及び容易な銀行ローン・貸付金と低い不動産利得税率が火に油を注いでいる行き過ぎた投機があることから、政府は住宅価格の急上昇を止めるために適切な対策を取る必要ががあります。

国民の大多数を構成する、裕福とは言えない人たちは取り残されてきた、一方裕福層の人たちは必要以上の不動産を蓄積してきた。

都市福祉・住宅・地方自治体省の大臣が、ごく最近開催された第16回全国住宅と不動産サミットで行った開会演説の中に次のような一節がある:
「(政府の)最大の心配点としてあげるのは、住宅価格の上昇に見合って所得が伸びてこなかったという事実です。 2012年に実施した統計庁の世帯収入調査は、マレーシア国民の約 80%が月収 RM6,954以下である。 住宅ローンにおいては、純収入の30%が貸付け基準になること、現在の基本貸出し金利は 6.60% ということから、国民の80%であるこの層の人たちにとって手の届く範囲である住宅価格の最高は RM 30万かそれ以下の価格である。」

住宅市場では、自称”投資者クラブ”なるものが次々と出現していることで、こうした状況はより悪化している。 こういう”投資者クラブ”は、階層化された不動産において多くのユニットを一括購入する、例えば100ユニット、200ユニット、ことで、住宅市場を人為的に操っている。こういう風に多数のユニットを一括購入することによって、投資クラブはその住宅不動産や商業不動産開発における全体の半分近くを支配することになる。

投資クラブを運営する者たちの手口は、一括購入者として手持ち現金の不十分なデベロッパーと交渉して、開発開始前に大量ユニット購買することへの値引きを要求する、例えば公称販売価格の25%といったように。 投資クラブ運営者はそのクラブ会員の間に、早期購入者向けの値引き 15%のようにお知らせを回す。こうして運営者は 10%の利益を収める。 さらに投資クラブ会員は 購入した住宅が完成して受け取るとそこに入居することなく他者に転売して儲けるのです、とりわけ現在の様なインフレ市場においてはです。
”いかにして億万長者になるか” とか ”保証金不要の投資” といったセミナーが若い世代の者たちに大金持ちへの近道と思わせることにつながっていく。
だまされやすく、欲張りな投資者はそんな手口に誘惑されてたちまち餌食になります。 
インターネットで“Investors Club”ということばで検索して、こういうクラブの手口とクラブに協力している住宅デベロッパーの名称を知ることもできる。さらにどういう者たちがこのプログラムに参加しているかもわかる。 またこういう投資クラブに参加するには、加入費としてRM 300から 5,000が必要なこともある、そうすればセミナー参加費とアドバイス料は一生涯無料となる。中には無料で会員になれる投資クラブもある。

デベロッパがその建築するプロジェクトにおいて、その半数以上を販売完了(売買契約済)することを、デベロッパーへの貸し付けの条件にしている金融機関もあります。
Intraasia 注:自己資本の少ないデベロッパーは無理してでも事前に半数を販売しなければならないということでしょう。
以上


ところで、中級以上の住宅不動産市場の過熱を呼んでいる主因の一つと言われている、デベロッパー利子負担プログラムの禁止に関しては、中央銀行Bank Negaraが予算案発表以前に既に指示を出していました。
2014年予算案がなぜそれを再度規定したのかは知りませんが、いずれにしろ、デベロッパー利子負担プログラムは廃止です。

【’デベロッパー利子負担プログラム’が廃止されたことで起きる、不動産市場の変化】-2013年10月末に新聞に載った記事を抜粋翻訳

(住宅購入者ではなく)住宅開発するデベロッパー自身が利子を負担する’デベロッパー利子負担プログラム’に関して、2014年度予算案は禁止としました。

デベロッパー利子負担プログラムがあることで投機家は新規売出し不動産に投資するのが都合よくなります。このプログラムはマレーシア不動産市場で2009年から行われていました。こういう投機家は、支払いの仕組みが多少複雑になる下位不動産市場での問題を軽視しました。
しかしこのデベロッパー利子負担プログラムを廃止することで、不動産市場での購買傾向に変化を呼ぶことになりそうです。

デベロッパー利子負担プログラムは、本当に住宅を所有したいという人には有益であると言われていますが、不動産投機の機会も作り出してしまいました。

このプログラムが導入される前は、不動産投機は真に十分なる経済的余裕ある者だけが行う活動でした。しかしデベロッパー利子負担プログラムの手軽な支払方式によって、投機家が不動産の建設中にまたは完成後の短時間の間に再販する買い手を見つけて売ってしまえるようになります。

デベロッパー利子負担プログラムを利用することで、投機家は少額のお金をあらかじめ出すだけでよく、数年以内に大きな利益を得ることになる。

それ故に、デベロッパー利子負担プログラムの廃止は、確かに投機活動を抑えるでしょう。なぜならその支払い方式はもう手軽ではありませんから。その効果を政府はまさに期待しています。デベロッパー利子負担プログラムの禁止はまた、不動産の一次市場が下位市場に持つ有利さがなくなります。デベロッパー利子負担プログラムが人気を呼ぶようになってから、下位市場はぱっとしませんでした。

 Propwall の発表する’不動産市場傾向’を見れば、不動産の一次市場は二次市場よりも好まれることが明らかです。

確かに不動産一次市場には買い手を引き付ける他の特質もありますが、一方’デベロッパー利子負担プログラム’が購入者を引き寄せる要因であることは否定できません。
この数年の間デベロッパー利子負担プログラムは、購入者が不動産を買う場合の経験的な常識を補完するものになっていました。要するに、場所が全てです。

デベロッパー利子負担プログラムなしにはこれ以上新規不動産開発を魅力的にはできない、下位市場が本来の場に戻ったのです。

不動産下位市場の良い特性は、デベロッパー利子負担プログラムによってこれ以上暗い影を投げかけられることはないでしょう。投機家である、ないに関わらず、依然として不動産を取得したい人たちは二次市場へ視野を広げることになるでしょう、なぜなら、’デベロッパー利子負担プログラム’は住宅の選択においてもはや得られない要因だからです。
デベロッパー利子負担プログラムの売り込みは非常に激しかった、時には人を欺くことでさえあった。そのため人々は不動産下位市場の寿命の長さと良き特性を見過ごしていました。下位市場となる物件は一般的に、成熟した住宅地にあり、定着した設備と公共施設を備えている。さらにその住宅地にあるコミュニティー意識の強さは、開発の質と将来的繁栄の指標でもあります。

今後不動産下位市場に目を向けるのは価値ある選択といえるかもしれません。しかし、もし住宅と地方自治体省が、”建築してから販売する”方式を2015年に導入すると決めれば、下位市場は再度後ろに下がってしまわざるを得ないことになるかもしれません。

Intraasia注:この記事で使われている、多少日本語に馴染みにくい不動産下位市場という表現は、新規開発の不動産を購入するのが一次市場で、それを転売する二次市場といった意味合いで使われている、と理解されます。


【不動産利得税率の改定内容】

上段で言及しました、不動産市場過熱抑制策 3つの内の最後の1つである、不動産利得税率の改定に関する説明を載せておきます。

住宅購入をしてその住宅を売却する場合にその利潤に掛かる不動産利得税 -2014年1月1日から実施

購入から3年以内
マレーシア国民及び永住者:30%,  外国人:30%,
購入から3年を超え4年まで
マレーシア国民及び永住者:20%,  外国人:30%,
購入から4年を超え5年まで
マレーシア国民及び永住者: 15%,  外国人:30%,
購入から5年を超える(6年目から)
マレーシア国民及び永住者: 0%、 外国人:5%

購入と売却主が会社の場合は、マレーシア国民と同じ、ただし6年目からだけは5%になる。

【イントラアジアのコメント】

前にも書きましたように、マレーシアマイセカンドホームプログラムの日本人参加者の間では、住宅を購入する人よりも賃借する人の方がずっと多いことは明らかです。この傾向は今後も基本的には変わらないと言っても間違いではないでしょう。ただしマレーシアマイセカンドホームプログラム当局はこういう住宅購入・賃貸を統計することは行っていません。

一方プログラム参加者は銀行の住宅ローンを組むことが認められていることもあり、中には住宅購入を考慮される方もいらっしゃるはずです。
さらには、マレーシアに住むことなく純粋に投資または投機目的で住宅を買う外国人がいることは、新聞などがしばしば強調しているところです。

新規建築の中高級住宅の販売数中、どれくらいの割合が外国人購入者であるかの統計は、マレーシア政府の部局がつかんでいるはずです。恐らく購入者の国籍別統計もあることでしょう。
しかしイントラアジアの知る限り、この種の統計は一般人が簡単に閲覧できるような形では公表されていません。

2013年度予算案で発表された、上記の3つの住宅不動産市場の過熱抑制策によって、2014年の中高級住宅不動産市場には間違いなく変化が現れるだろうと、観られています。この変化が中期的に続くのか、それとも短期的なものに終わるのかは、評する立場と人によって違うようです。

当ブログをご覧になる方の内で住宅不動産購入に興味ある方は、知識としてここで紹介したような情報を知っておかれることに越したことはないはずです。



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