ツバメ・キッドの旅立ち ~深草
藤森から伏見稲荷を目指して、歩き始めた。
かつて、鳥羽街道と云われた深草の古い町並みを行く。
京都には縁があり、さんざん、歩きまわっているのだが、この地だけは初めてだ。
初めてなのに、何故か懐かしく感じるのは、気のせいだけではない。
この地は私、出生の地。
正確にいうと、ここの病院で生まれたというだけの話なのだが、何故か、この地を歩いたことは今まで一度もなかった。


家ヶの軒先をツバメたちが猛スピードで飛び交っていた。
それなのに、一匹のツバメが思案気に停まっていたので、声をかけてみた。

「やあ、ツバメさん。みんな、忙しそうに飛び回っているのに、あなただけ、じっと、停まっているね。どうかしたの?」
「人間なんて、わたしらには気にも留めないと思っていたのに、あんたも変わっているね。」

「いや、何だか、悩んでいるようだから、ちょっと、気になってね。」
「そう、見えるかい?」
「見える!見える!」
「子育てのことでね。」
「子育て!?人間だって、子育ては大変さ。よかったら、話してごらんよ。」

「うちの子さあ。すっかり、大きくなったのに、いまだに親のすねかじりばっかり、してねぇ。困ってるんだよ。」
「こりゃまた、人間とおんなじ!ほんとに、ここまで育てたんだから、早く、一人前になって欲しいと思うよね。」
「ほら、奥にいるだろ!」

「確かにでかい!親より、でかいかも・・・」
「でしょ!それなのに、餌ばかり、ねだるんだよ!」


ところが、次の瞬間だった。
ツバメ・キッドは巣から身を乗り出したかと思った途端、新幹線のようなスピードで何処かに飛び去っていった。
鮮やかな親ばなれ!発つ鳥、巣だけを残す。
唖然とする親ツバメは、少し淋しそうにみえた。

「あなたが“青い鳥”だってことに、今、初めて、気が付いたよ。」
出生の地で親のことを思った。

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藤森から伏見稲荷を目指して、歩き始めた。
かつて、鳥羽街道と云われた深草の古い町並みを行く。
京都には縁があり、さんざん、歩きまわっているのだが、この地だけは初めてだ。
初めてなのに、何故か懐かしく感じるのは、気のせいだけではない。
この地は私、出生の地。
正確にいうと、ここの病院で生まれたというだけの話なのだが、何故か、この地を歩いたことは今まで一度もなかった。


家ヶの軒先をツバメたちが猛スピードで飛び交っていた。
それなのに、一匹のツバメが思案気に停まっていたので、声をかけてみた。

「やあ、ツバメさん。みんな、忙しそうに飛び回っているのに、あなただけ、じっと、停まっているね。どうかしたの?」
「人間なんて、わたしらには気にも留めないと思っていたのに、あんたも変わっているね。」

「いや、何だか、悩んでいるようだから、ちょっと、気になってね。」
「そう、見えるかい?」
「見える!見える!」
「子育てのことでね。」
「子育て!?人間だって、子育ては大変さ。よかったら、話してごらんよ。」

「うちの子さあ。すっかり、大きくなったのに、いまだに親のすねかじりばっかり、してねぇ。困ってるんだよ。」
「こりゃまた、人間とおんなじ!ほんとに、ここまで育てたんだから、早く、一人前になって欲しいと思うよね。」
「ほら、奥にいるだろ!」

「確かにでかい!親より、でかいかも・・・」
「でしょ!それなのに、餌ばかり、ねだるんだよ!」


ところが、次の瞬間だった。
ツバメ・キッドは巣から身を乗り出したかと思った途端、新幹線のようなスピードで何処かに飛び去っていった。
鮮やかな親ばなれ!発つ鳥、巣だけを残す。
唖然とする親ツバメは、少し淋しそうにみえた。

「あなたが“青い鳥”だってことに、今、初めて、気が付いたよ。」
出生の地で親のことを思った。





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