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ワンダースター★航星記

写真を撮るとは、決して止まらない時間を止めること。旅や日常生活のインプレッシブな出来事を綴ったフォトエッセイ集です。

ツバメ・キッドの旅立ち ~深草

2014-06-14 | 心の旅
   ツバメ・キッドの旅立ち ~深草

               

 藤森から伏見稲荷を目指して、歩き始めた。
 かつて、鳥羽街道と云われた深草の古い町並みを行く。
 京都には縁があり、さんざん、歩きまわっているのだが、この地だけは初めてだ。
 
 初めてなのに、何故か懐かしく感じるのは、気のせいだけではない。
 この地は私、出生の地。
 正確にいうと、ここの病院で生まれたというだけの話なのだが、何故か、この地を歩いたことは今まで一度もなかった。

             

             

 家ヶの軒先をツバメたちが猛スピードで飛び交っていた。
 それなのに、一匹のツバメが思案気に停まっていたので、声をかけてみた。

             

 「やあ、ツバメさん。みんな、忙しそうに飛び回っているのに、あなただけ、じっと、停まっているね。どうかしたの?」
 
 「人間なんて、わたしらには気にも留めないと思っていたのに、あんたも変わっているね。」

             

 「いや、何だか、悩んでいるようだから、ちょっと、気になってね。」

 「そう、見えるかい?」

 「見える!見える!」

 「子育てのことでね。」

 「子育て!?人間だって、子育ては大変さ。よかったら、話してごらんよ。」

               

 「うちの子さあ。すっかり、大きくなったのに、いまだに親のすねかじりばっかり、してねぇ。困ってるんだよ。」
 
 「こりゃまた、人間とおんなじ!ほんとに、ここまで育てたんだから、早く、一人前になって欲しいと思うよね。」

 「ほら、奥にいるだろ!」

               

 「確かにでかい!親より、でかいかも・・・」

 「でしょ!それなのに、餌ばかり、ねだるんだよ!」

               

               

 ところが、次の瞬間だった。
 ツバメ・キッドは巣から身を乗り出したかと思った途端、新幹線のようなスピードで何処かに飛び去っていった。
 鮮やかな親ばなれ!発つ鳥、巣だけを残す。

 唖然とする親ツバメは、少し淋しそうにみえた。

               

               
 「あなたが“青い鳥”だってことに、今、初めて、気が付いたよ。」

出生の地で親のことを思った。



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