「Dialogue Theater―いのちのあかし―」記憶の中の学び舎にて ~大阪関西万博 ⑨

大屋根リングに囲まれた空間の真ん中あたりに突然、現れるのが「静けさの森」だ。
森には小径が続き、お洒落なトイレや休憩スペースもあり、その一角だけは、ほっとする空気が満ちている。



森を抜けると何だか懐かしい古びた建物が見えてくる。
奇想天外なパビリオンばかり見てきたので、逆に、ここでは異彩を放っているようにも感じる。
河瀬直美氏の「シグネチャーパビリオン」のひとつ、「Dialogue Theater―いのちのあかし―」である。


建物は福知山や十津川にあった廃校になった学び舎で移築と改築を施されている。
木造の校舎は私にとっても、記憶の中の産物であるので、懐かしかったのは、そのせいかもしれない。

入場前に渡された黄色いカードには「365日の中で、あなたにとって、いちばん尊い日はいつですか?」と書かれていた。
コンセプトは「毎日が、人類史上はじめての対話」で、今回はこのテーマに沿って、いきなり、ランダムに選ばれた来場者が、スクリーンを通して初対面の人と約10分間対話し、ほかの来場者はその様子を鑑賞する。
一対一の対話を通してお互いの胸の内を打ち明けるという、実験的な展示だそうで、いったい、どんなことになるのだろう。

ぎしぎし、軋む床も再現されていた。

果たして、シアターで行われた対話は、臨場感あふれる素晴らしい内容だった。
たまたま、来場した私たちの中から、ランダムに選ばれたという方はプロの役者さんかと思えるほど、感情豊かに自然に会話されていた。
(私なら、あがって言葉も詰まるだろうに。)








HPより
どうして私たちは、わかりあえないと思ってしまうのだろう。
どうして敵と味方に分かれてしまうのだろう。
「対話」を通じて、世界の至るところにある「分断」を明らかにし、解決を試みる実験場です。
そのために、毎日異なるテーマを世界に問いかけます。 (河瀬 直美)