S.Boy blog

いかに生きるか いかに撮るか

木村伊兵衛 昭和を写す~よみがえる都市  田沼武能

2007-07-20 | 写真の本
木村伊兵衛 昭和を写す~よみがえる都市  田沼武能
ちくま文庫 1995年5月 ¥840+税






文章はほとんどなく、モノクロの写真集。昭和の貴重な記録写真だ。これを見て、記録写真について考えた。今まで作品としての写真しか撮ってこなかったが、写真の原点である「記録」というものの重みに興味が出てきた。何十年後か、自分の撮った街風景が貴重な記録になる。考えるとゾクゾクしてくる。報道写真は巷にあふれているが、自分が見た光景を自分のために残す。こういう写真も自分のなかにあっていいのではないかと思った。これから、作品だけでなく、記録という視点でも写真を撮っていこうかと思う。自分の写真での幅が広がるのではないか。


うたたね   川内倫子

2007-07-20 | 写真の本
うたたね   川内倫子
リトル・モア 2001年10月 ¥3000


純粋な写真集。淡いトーンの川内ワールドが広がる。単純な絵なのに、何か正視できない。そんな感覚に襲われた。
事実、ストレートに死を見つめる写真もあるのだが、その写真だけでなく、全体的に人間の弱さを誘因しているかのように思われて恐ろしい。妻に見せると「この人、病気だわ」
それを聞いて、逆に安心してしまった。
自分の中では批判で終わっているわけではない。いろいろ考えさせられる写真集。



ヒロシマ万象   江成常夫

2007-07-17 | 写真の本
ヒロシマ万象   江成常夫
新潮社 2002年7月 ¥6500



写真群の中心は原爆である。各写真には、爆心地からの距離が記されている。
この写真集は「戦争はいけないことだ」と単純に読者へ訴えているだけのものではないと思う。あの原爆が投下された日から、我々日本人は何を感じ、どのように生きてきたのか。そんなことを考えさせられた。
この写真集から感じたこと。
「ヒロシマ万象」は、戦後人々が原爆にまるわる何某かを、それぞれに思いをこめて過ごしてきた、その思いの断片を写真群に表現しているのではないかと感じた。


アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクション

2007-07-17 | 写真の本





アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクション
大阪芸術大学 2006年3月 2000円



 決定的瞬間で有名なブレッソンの写真展が2006年3月、天保山のサントリーミュージアムで開催されるのを知り家族で見に行った。ブレッソンが世界各国をまわって撮影した写真が数多く展示されており、その会場で販売されていた写真集。
 氏は芸術性よりも好奇心が撮影の原点だったようだ。その素直なカメラアイと、好奇心を持ち続けることの喜びなどが詰まっているように思えた写真集だ。

たからもの 深井 美貴子

2007-07-17 | 写真の本
たからもの 深井 美貴子
新風舎 2005年11月 2500円(税別)



著者の3人の子供さんの成長を記録した写真集。関学の写真部に所属していたとのことで、作品と記録が両立しているところが素晴らしい。すべてモノクローム。小細工などがなく、素直なカメラアイがいい。自分の写真を思い返すと、コンテストを意識しすぎたきらいがある。結果、いやしい写真になっていたような気がする。子供は、もっと素直に撮るべきだったと意識させられた本。


ペンタックス・フォトアニュアル2007-2008届く

2007-07-08 | 写真の本
少し前ですが、ペンタックス・フォトアニュアル2007-2008が届きました。
ペンタックスファミリーに入会していると届けられます。

このような年鑑はキヤノンやニコンにもありますが、中判カメラを作っているペンタックスはネイチャー系の写真割合が多いように思います。
逆にニコンはスナップオンリーといっていいほどです。
キヤノンはサロン調が多いという感じでしょうか。


2冊の写真集

2007-01-14 | 写真の本
年末に2冊の写真集を買いました。
ひとつは、横木安良夫氏の「あの日の彼、あの日の彼女 1967-1975」。



掲載されている写真は自分が生まれた頃なので当時のことはリアルに知っているわけではありません。よって懐かしさとかはなかったのですが、団塊の世代の方々は感慨を持って見ることができるのでしょう。
私が印象に残ったのは若々しいカメラアイだということです。
瑞々しい感性に技術は勝てないこともあるのですね。自分はもうこういう写真を撮ることができないと「気づいてしまった」せつなさがありました。
価格はちょっと高めで3,990円ですがページ数も多いです。


もうひとつは、小野啓さんの「青い光」。



17歳の高校生をテーマにしたポートレート集です。彼ら彼女らの、ときには強い意志、ときには行き場のない喪失感のような、この年代特有の複雑な心境が写し込められているように思います。
ひとつのテーマに撮り続けるすばらしさを感じます。
2100円でこのボリュームは安い価格設定だと思います。


東京人生 SINCE1962 荒木経惟

2006-12-26 | 写真の本
裸を撮る荒木氏であるが、これは氏が心を裸にして撮った写真集。そのように飾り気なくストレートに撮っている写真は、こうも見る者に伝わるものかと気づく。妻の陽子さんが亡くなる前後の写真はせつなすぎる。亡くなってから氏が「空ばかり撮っていた」というページは、文字通り空だけの写真がある。思わず胸が熱くなる。
オールモノクロだがこのボリュームで1500円というのも凄い。間違いなく買い得。
おすすめです。

バジリコ 2006年10月 

脱「風景写真」宣言 宮嶋康彦

2006-11-01 | 写真の本
脱「風景写真」宣言 宮嶋康彦
岩波書店 2006年3月 2200円(税別)

以前、本館サイトで紹介したものを再度アップします。
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 自然をテーマに撮影をしている宮嶋氏の写真論。自然というとネイチャーフォトと短絡的に捉えがちだが、それこそ写真の世界を狭く閉ざしている悪しき先入観と述べておられます。氏の自然観とは、人間や街もその範疇に含まれており、そういった世界観で作品を作るアドバイスはとてもためになりました。氏が日光に通う理由も書かれていて印象的。

 作品制作に取り組む上で、とても参考になる本。記録ではなく、表現として写真を撮る人に特にお薦めします。私は何度も読み返しています。

宮嶋氏のサイト:Nature Photographs

旅の途中   瀬尾明男

2006-10-29 | 写真の本
旅の途中   瀬尾明男
ピエ・ブックス 2004年10月 ¥1900(税別)

津軽の写真で有名な瀬尾氏の写真集。ただし、ページの半分はフォークソングの歌詞。個人的には純粋な写真だけで構成してほしい、そう思わせるだけの内容がある写真ばかり。津軽地方を中心に北海道など、北国の冬がメイン。しかし、写真だけでは本として売れない時代なのでしょう。

上質な紙と豪華な表紙といったような、いわゆる重厚的な写真集というのは売れない時代なのだと思います。写真の質が相対的に軽くなっている感は正直否めないし、デジタル時代、インターネット普及によってより一層その傾向は強くなっているような気がします。このあたりの続きはまた今度。

ぼくたちは気持ちのいい写真が撮りたい 

2006-10-26 | 写真の本
昔、キヤノンのCPEカタログに紹介されていたと思う。購入したくても高くて中学生の自分には少し手が出しにくかったが、大学生の頃どこかの古本屋で発見。その頃は写真休止時期だったが懐かしくて購入。

写真技術よりも当時の流行などが感じられることが嬉しい。デジタル時代になって古くなった記事もあるが、写真に取り組む気持ちは変わらないはず。現在でも10代の人に読んで欲しいな、と思う本。

ただし、かなり古い本なので入手は困難。オークションなどで物色するしかないかも。





ぼくたちは気持ちのいい写真が撮りたい 宮崎洋司
れんが書房 1977年5月 定価1700円


天才アラーキー写真ノ方法 荒木 経惟

2006-09-27 | 写真の本
天才アラーキー写真ノ方法 荒木 経惟
集英社 2001年5月 740円(税別)

 荒木氏の軽快な口語を文章化した本。氏の撮影方法が万人に当てはまることはない。荒木氏は天才だから。けれど、発言の内容は一見思いつきのように思えるが、実は深いものがあると思います。
 この本を読んでみて、今まで自分が作り上げてきたスタイルを一度壊してみようかと強く思い始めました。そうしないと、自分の写真がこれ以上進歩しないような気がするので。