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歴史から見るコンゴ民主共和国・大統領選挙2018の行方(5)〜結末は闇の奥・・・

2018-09-27 06:30:48 | アフリカ情勢
12月23日に近づくコンゴ民主共和国の大統領選挙、混迷するコンゴの政局に国際社会が注目している。今回の選挙戦のポイントがよくわかる、コンゴ選挙史シリーズ。きょうは第五回目、最終回。

最初の2回は、それぞれ2006年、2011年の選挙の振り返り。
第一話 2006年、初の民主的選挙
第二話 2011年、象牙ショックに揺れた選挙

第三回目は「幻の2016年選挙」、つまり遅れに遅れて今年末に予定される選挙をめぐる大きなテーマについて述べた。
第三話 2016年、幻の選挙とアフリカの憲法問題

そして前回から、現政権が繰り出す対立候補への対抗策について、ンボテの観察を述べている。特に前回は伝統的野党UDPSのフェリックス・チセケディとモイーズ・カツンビについてご紹介した。

第四話 ライバルを消せ

第四話では、カツンビに対し、現政権があらゆる手を使って影響力行使を妨害してきたことについてお話しした。そして彼がいつ逮捕されるか、いつ無力化されるか。そこでお話を止めていた。続きをみていこう。

(独立選挙管理委員会本部 Matininfo.netウェブサイトより)


ンボテの見立てのとおり、2015年、刑事捜査当局はカツンビに対し、「土地取引にかかる詐欺事件」の容疑で逮捕状を発給。また2016年5月の政治集会では、「傭兵を動員しクーデターを企てた」として側近、支持者十数人を逮捕する事態が発生した。

カツンビはコンゴの法のもと、勇気をもって出廷するが、身に危険が及ぶこと幾多であった。そしてベルギーに逃れる日々を過ごすこととなる。

幾多の困難を乗り越え、2018年1月、カツンビは大統領選挙への立候補を正式に宣言した。そして立候補届けの締め切りが迫る8月、空路から、あるいは陸路ザンビアから、コンゴ領への帰国を試みるが、コンゴ政権はあらゆる手でカツンビの入国を阻んだ。そして大統領選挙の届出期日は過ぎていった。カツンビは大統領に立候補することはできなかった。冗談のような話である。


最後のもう一人の対立候補は、前出UDPSと並ぶ大きな野党勢力、MLCのジャン・ピエール・ベンバである。

第一話でも述べたが、同氏は西部リンガラ語圏・赤道州の出身。移行期時代の四人の副大統領の一人。そして2016年の大統領選挙では決選投票を戦った。西部の多数の有権者はベンバを支持したが、最終的には当選は果たせなかった。

新政権発足直後の2007年3月には、キンシャサ市内で「大統領警護隊」とベンバ私兵が対峙。首都大銃撃戦に発展、ベンバはコンゴ河畔にある南ア大使館に退避。南アフリカ経由でヨーロッパに亡命。療養先で国際刑事裁判所(CPI)の訴追を受けて公判を受ける身となった。

その間、MLCはベンバ待望派と新路線派に分派し、野党としての求心力を失っていた。2011年の選挙も振るわなかった。

選挙が近づく2018年6月8日、事態は急転する。ベンバがCPIから釈放されたのだ。そして7月には大統領選挙に立候補する意思を表明した。カビラ陣営にとっては一難去ってまた一難、まさかの大物復帰である。ベンバの元に野党の勢力が結集するリスクは推し量ってあまりあった。

ベンバは大統領候補を届け出た。しかし独立選挙委員会は8月24日、同氏の届け出を棄却した。ベンバがCPI公判において証人の買収をおこなったとする科に問われていることを理由に、候補資格がないと判断を下したのだ。憲法裁判所も9月6日にこれを確認し、立候補は最終的に棄却された。


こうして野党大物ふたりの対立候補は、選挙戦から外れていった。その経緯はさながら魔女狩りのように見える。残った野党有力候補は、カリスマ野党党首の実子、フランソワ・チセケディ。元国民議会議長のヴィタル・カメレ。元首相のアドルフ・ムジトなど。あとは票が割れてくれればいい。なぜなら前述のとおり、2011年の修正憲法により、一発投票で大統領が決まるからだ(第二話参照)。野党の票が割れれば、もともと候補を一本化している与党が有利になるからだ。

逆に言えば、野党にとって最大のポイントは、戦力を結集し、「統一候補を擁立」することができるかどうかだ。過去、常にここでつまずいてきた。しかし今回、ブリュッセルの密会が行われたことは、別の記事でもご紹介のとおり。どのような合意がなされたのか、なされなかったのか。

ブリュッセルの乱〜コンゴ民主共和国、ブラック選挙の陰影


与党PPRDにとって最大の弱点は、エマニュエル・ラマザニ・シャダリー候補の有権者に対する存在感、アピール度だろう。副首相、内務・治安大臣を歴任するも、これまでにあげた重鎮達に比べれば、明らかに集票力で見劣りする。与党陣営の作戦においては、有力候補を間引くことは重要な作戦と考えられていたのではないかと憶測される。そして、これからもメディアの独占、野党の選挙キャンペーンへの妨害、活動家の逮捕、票の操作など、まだまだたくさんの工作の余地がある。


最後に、今回の選挙戦で、もし万が一、野党側の勝利との結果となれば、実力部隊を有する現政権と、野党側で、大きな衝突が生じるリスクがある。もっとも独立選挙管理委員会が、そのような勇気ある結果を発表をするのだろうか。

歴史から紐解く2018年コンゴ民主選挙特集はここまでとしたい。なんでもありのコンゴの選挙。結末は、闇の奥(Au cœur des ténèbres)に。

(おわり)


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