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アフリカの犯罪をアフリカで裁けるか?(5)~勝者の論理

2015-08-26 07:30:07 | アフリカ情勢
アフリカの犯罪をアフリカできちんと裁けるのか?アフリカの法治と不処罰についてこれまで4回にわたり考えてきた。そして前回は開廷とともにスタックしたイセーン・アブレ元チャド大統領のセネガル特別法廷 についてご紹介した。

第一話 不処罰とアフリカ
第二話 あすはわが身?
第三話 イセーヌ・アブレ元チャド大統領特別法廷(前編)
第四話 イセーヌ・アブレ元チャド大統領特別法廷(後編)

紛争や政争により蛮行が横行するような事態は、残念ながらアフリカではしばしばだ。そして「戦争に対する罪」、「人道に対する罪」の疑義が呈されることとなる。これまで、これらの犯罪がきちんと裁かれない「不処罰」を問題としてきたが、他方、裁かれるとなればそれはそれで問題が生じる。

例えばコートジボワール。2011年の大統領選挙後の内戦で多くの蛮行が横行したとされる。そしてローラン・バグボ元大統領やJeune Patriot(愛国青年団)を扇動したブレ・グデ氏などは、国際刑事裁判所の訴追を受け、送致、拘留された。これらに関与したとされる元大統領の婦人、シモン・バグボ女史の扱いについても注目を集めてきた。

しかしこれらは全て「敗者」が裁かれる形となっている。では、勝者の側には何も多く咎はなかったのか?・・いや、実際は同様の罪状が指摘されている。

特にアビジャン解放、事態の軍事的収束に最大の貢献を果たしたとされる北部勢力(FN)。2011年の内戦では同様に蛮行を働いたとの指摘がある。これを率いた当時の首相、現国民議会議長のギョーム・ソロの罪状が議論されている。こちらは裁かれなくても良いのか?同盟を組んだアラサン・ワタラ大統領の責任は問われないのか?疑問が呈されている。

そして今、バグボ元大統領の政党、FPI所属有力者が国内法により次々に訴追されている。前政権の膿と腐敗を清算しようという動向だが、他方で前回選挙で過半数近い得票を得て辛くも敗者となったFPIを単に無力化する、いわゆる「魔女狩り」というようにも映る。


このような法適用の対称性、敗者の裁判は随所で見受けられる。昨年、「国民革命」で前政権が崩壊したブルキナファソ。コンパオレ体制で甘い汁を吸ってきた旧与党CDP勢力への「粛清」が議論となっている。汚職、横領、不正。次期選挙における被選挙権の剥奪。敗者が裁かれていく。だからアフリカの政権移行は難しい。


何も紛争の敗者ばかりではない。例えばセネガルの前大統領の息子、カリム・ワッドをめぐる汚職・横領事件。ベナンのビジネスをめぐる汚職と大統領殺害未遂の容疑が絡み合うパトリス・タロン事件。法の適用は均衡のもと行われているだろうか?

アフリカでは多くの支配層が、多かれ少なかれ、厳密に法適用すれば、なんらかの罪状を問われるようなところで日常動いている。しかし一度時の政権と仲を違えば、その罪が追求され、無力化が図られる。例えていえば、みんなスピードオーバー承知で流れに乗って公道を走っているのに、一度白バイに捕まれば赤切符、となるのだ。


アフリカの法適用と不処罰。そもそも西側の法規範をアフリカに根付かせることの是非は今さら問えない。アフリカの犯罪をアフリカ人がきちんと裁いていくことができるのか。西側規範の法秩序はアフリカに根付くのか。長くて深い命題は続く。


(アフリカの司法官を集めたセミナー。不処罰や法の適用、司法の独立などが熱く、真剣に議論された。)


(おわり)

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