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アフリカと中国(7)~コンゴのコントラ・シノワ(後編)

2013-07-20 07:30:30 | アフリカ情勢
アフリカと中国、第七話。前回は、「コントラ・シノワ」の衝撃、そして現場にもたらした様々な意味でのマグニチュードについてお話をした。

特にコンゴにとっての最重要課題の一つであるインフラ。従来、政府を取りまとめてきたインフラ・公共工事・復興省(ITPR)とは別に、大統領府の中に、直轄の「大規模工事局」(Bureau de Grands Travaux)なるものが設置された話に及んだ。既存の計画を差し置いて、恣意的に決定された中国のファイナンスによる道路計画が、ほとんど無調整に進んでいく事態となっていた。

(キンシャサの大統領府)


そういった中で、巨額の中国投資、支援によるインフラ整備計画の詳細はブラックボックスの中だ。そしてある日突然、道路が封鎖され、ブルドーザーが運搬される。木は切り倒され、通りの商売人や周辺住民は追いやられる。

その後。この「コントラ・シノワ」には様々な物言いがついた。

まずは「国際社会」、つまり伝統的な西側の支援国である。先に述べた重債務国救済イニシアティブ(RRTE/HIPCs)の話に加え、資源や森林のコンセッションを巡る、不透明な取引や不法な契約不履行などを看過(あるいは当局自らが加担)し、中国の益するところとしているのではないかとの物言い。特にカナダは自国企業がとばっちりを食ったとしてここに深く反発した。

結局、この投資・借款契約は、国際通貨基金(IMF)をはじめとする国際社会からの圧力で62億ドルに縮小された。

それ以上に波紋を呼んだのはコンゴの国民議会、そのものである。「そもそも、国の資源は、国民に利するように活用されるべきであり、国民が使い道を決める。それが筋ではないのか。なぜ政府がそれを勝手に決定し、将来にわたっての負債としたのか、あるいは将来の資源の逸失利益を国民が甘受しないといけないのか」。国民議会議長のヴィタル・カメレは、もともと与党連合の一角をなし、カビラ大統領に近い人物であったが、将来の国民が追うべき負担と不透明な投資契約を批判し、これが一つの大きな引き金となり、辞任に追い込まれた。

コンゴの市民社会も反発した。例えばキンシャサの「6月30日通り」。ここは古くから並木が4車線の目抜き通りを飾り、キンシャサのシンボルとなっていた。しかし、改修工事が決定されるや否や、中国企業体が突然重機を現場に持ち込み、通行を規制し、既存道路の舗装をはがしていった。そしてシンボルの並木は、容赦なく切り倒された。工事中の交通確保に配慮が薄かったことから、市内は大混乱。のみならず、キンシャサ市の交通はほぼ麻痺の状態に至った。

そして2年の時がたち、キンシャサの6月30日通りは8車線の道路として立派に改修された。それまではほとんど目にしなかった信号機も設置された。しかしそこには以前のシンボルであった並木の姿はなかった。

(6月30日通りの並木、中国事業体による改修前。)


(6月30日通り、中国事業体による改修後。シンボルの並木はそこにない。コンゴ民主共和国大統領府大規模工事局HPより。)


市民社会は、これがコンゴの復興のあるべき姿か、と疑問を投げかけた。運転手をするわたしの知人はいたく心を痛めた。「キンシャサの木は、自分が生まれる前から、そこに生きてきた。彼らは、そこに生える権利を持っていた。そこに立ち続け、子孫の代までキンシャサを見守ってくれるはずだった。」

別の運転手は言う。「工事そのものには反対しない、これまでキンシャサの道路はひどかった。雨が降ったら、穴ぼこにいつはまるか、怖くて仕方がなかった。しかし、工事を終えて、早速舗装が剥がれ、穴が空き、道路が傷み始めた。見た目はいいが、すぐにだめになる。中国の電気製品と一緒だ。」

これに対し、ペンキ塗りを生業とするの別の知人は言う。「中国を悪者にするのは勝手だ。しかしこの遅れた国に、すぐ見える形で開発をもってきたのは中国だ。コンゴがいつまでも遅れた国でいればいいというのか。西側の金持ち国の言うことを聞いていればいいというのか。中国のやったことをオレは批判しない。」コンゴ人の間でも意見はさまざまだ。


こういった中、わたしが現地に駐在中、中国大使館の幹部とお話をする機会があった。その人は遠く祖国を離れたこの地にいて、外交官の外交辞令や答弁原稿を離れ、しばしば本音を語ってくれた。
「これは投資契約であって、国家の援助でも、国家的な策略でもない。私企業の活動として、中国企業がコンゴ側にコンセッションを求め、あわせて社会資本の整備を請け負う。西側の言う援助でも、借款でもない。西側の援助会合への出席を求められるが、そもそも趣旨の違う話なのだ。」
「いつも中国大使館がたたかれるが、われわれも実は難しい立場だ。本国から金融機関とゼネコンからなる企業体がやってきては、案件を激しく競争しながら取り合っている。問題があると大使館に対応が迫られる。日本で言えば、例えばI商事、M物産、M商事が来訪し、それぞれのビジネスで案件をとり合っている、という状況だ。大使館のできることはあまりない。」
「決定はすべて北京、問題は現場。」「そもそも何人中国人がいるのかも把握できない。大使館の基本的な使命である、領事業務も中国人保護もままならない。」

勧善懲悪の世界観で中国の進出を報じる向きもあるが、アフリカにおける中国観はきわめて多様であり、矛盾するようなエレメント、すべてが中国の一面なのである。


・・・と、きょうもトウショウメンを食べながら執筆してきた。しかし心はアフリカ。この企画、決してトウショウメンに集中して、うまく食べられるものではないといまさらながら気づいた。しかし終わるまではアフリカと中国に思いを馳せに、トウショウメンを食べにくる。ああ、トウショウメン、早く解放されて、ゆっくり美味しく食べたい、、

(きょうは原点回帰。半●門の●家、マーラートウショウメン。本当にクセになる、、)


(つづく)


刀削麺シリーズ「アフリカと中国」
第一話 こと始め
第二話 冷戦が作った関係
第三話 中国の戦略
第四話 資源国との付き合い
第五話 コンゴのコントラ・シノワ(前編)
第六話 コンゴのコントラ・シノワ(中編)


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