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向田邦子『寺内貫太郎一家』

2013-01-13 | ま行の作家


向田邦子は「粋」だ。

好きだな。やっぱり。

さすが、会話の魔術師。

ほんとテンポが良い。

考えてみれば、昔のニッポンの親父は怖かったよね。



向田作品は不倫テイストのイメージがあるが

本当は「家族」を書いているんだと思う。

そして描かれる「孤独」や「老い」。


人情があたたかくてホロリとくる。

なんてことない物語なんだけれど。


「おめえな、自分で金稼いだことあんのかよ。
 指の先でポケットの五円玉と十円玉数えながら、ギョーザライス
 食ったことあっかよ。
 雨の降る夕方によ、誰も待ってねえ暗いアパートに帰って、電気
 つけたことがあんのかよ。
 何時間待ったって、あったけえメシも番茶も出てこねんだぞ。
 心配したり、文句いってくれる人間がいねえってことが、どれほど、どれほど....」

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