加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

麻生氏の発言と映画『ニュールンベルグ裁判』

2013年08月03日 08時52分29秒 | 社会時評なんちって
麻生氏、ナチス発言を撤回 「改憲の悪しき例あげた」

撤回しようが、弁明しようが、この麻生氏の発言はどうしようもないものだと思う。
「ナチス政権はワイマール憲法を停止しただけで、ナチス憲法なるものがあるわけではない。つまり改憲の例としてはふさわしくない」というあたりまえの話はさておき(さておけないが)、いちばんいけないのは「ジョークにしたってセンスが悪すぎる」ということなのだ。

わたしは麻生氏はきらいではない。政権交代がなければ主に経済政策ですばらしい成果を挙げ、名宰相と言われた可能性のあった方だと思う。
だが、この発言も、いやその認識もよろしくない、と思う。

元の発言の根底にあるのは、「ナチス」が狂騒の中ではなく静かに政権を取ったという印象なのだろう。
はたして、そうなのだろうか。
もちろんわたしはナチスが台頭してきた1920年代から政権を奪取した33年まで、ドイツにいたわけではないし、麻生氏もそうだろう。

だが、この国家社会主義政党が、それこそ当時もっとも民主的だと言われたワイマール憲法のもとで行われた公正な選挙によって勢力を拡大したのは事実だ。それでも得票率は40パーセントを超えなかったというから「狂騒的」という感じではなかったのかもしれない。
いわゆるナチスの熱狂的な党大会の様子や90パーセントを超える票を得るようになるのは33年以降、国会議事堂放火事件を経て政権を掌握してからの光景である。麻生氏を批判しているとうの「朝日新聞」が、たしか「世界のチャンピオンに聞く」というシリーズものでアドルフ・ヒトラーに嬉々としてインタビューしていたのも、ヒトラーが総統になってからである。

ナチスは徐々に議会制民主主義を通して勢力を拡大し、ドイツ国民がある日気がつくとナチスの世の中になっていた。のかもしれない。
そこまで考えて思い出したのが、下の映画、「ニュールンベルグ裁判」である。今にしてみると信じられないような「オールスター映画」なのだが、内容は白黒の重厚な法廷ドラマである。とてもおもしろい映画だし、ぜひ観て感動していただきたいので詳しくは書かないが、ある重要なドイツ人の登場人物のうめくような誠実な告白が、もっとも「真実」に近いような気がした。

麻生氏はこの映画を100回観るべきだ(笑)

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