加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

【読書】「逃亡日記」―ひたすら逃げ続ける日々。

2007年03月06日 00時16分15秒 | 本のこと。
だれだって、逃げ出したい。

鉛のような日々、さしせまった受験、口やかましい母親、もつれてしまった恋愛模様、すぎてしまった納期、冷めたピザのような人間関係、雨の日の月曜日。

だが、逃げられない。逃げてどこへゆくのか?
橋の下で雨露をしのぐのか。

コアなファンを持つ漫画家、吾妻ひでおは逃げた。残飯とシケモクを拾って、生活した。公園のトイレで髪を洗った。図書館で一日ごろごろした。自殺もなんどか企てた。

連れ戻されて、また逃げた。なぜかガスの配管工になって、社内報に漫画を描いた。

また連れ戻されてアル中になった。精神病院でアルコール依存症の治療を受けた。

そんな悲惨な体験を、独特の絵柄で描いた「失踪日記」は大変な評判を呼び、ベストセラーになった。
三大漫画賞ももらったし、珍しくSF色は無いのに星雲賞のノンフィクション賞をもらった。みんな、「吾妻ひでお」に賞をあげたかったのだ。気持ちはわかる。

この「逃亡日記」は、その「失踪日記」が当たったので出された便乗本である。
本の冒頭にある漫画で本人がそう言っている。

本人の言うとおり、立ち読みで十分なんだけど、わたしは買った。

そのとおり、立ち読みで十分なんだけど、みなさん、買いなさい。
この貴重な、かけがえのない漫画家がふたたび失踪することのないように。

逃亡日記

日本文芸社

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