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今日は何の日?

昔の今日は何があったのでしょうか?ちょっとのぞいてみましょう。

アスワンハイダム起工式(1960/01/09)

1960-01-09 00:00:00 | 生物系
1960/01/09

ナイル川は、アフリカ大陸東部を北流し、地中海に注ぐ大河です。エジプトは人類最古の文明の発祥地であり、ナイル川流域には旧石器時代の住居跡が散在します。古代エジプトの王たちはナイルの氾濫を巧みに利用し、上流から運ばれた肥沃な土を両岸の耕作地に導き、農作物を育てていました。
しかし今では人口の増加とともに洪水をコントロールする必要性が生じ、ダムが建設されました。アスワンハイダムは、1902年に完成したアスワンダムの力不足を補うため、エジプトのナセル大統領がソ連から4億の借款と多くの技術支援を受け、建設されたのです。
1960年1月9日の起工式から11年の歳月をかけ、高さ111m、長さ3,600mという世界最大級のダムが完成したのは、1970年6月でした。
ダムによって作られた人工湖は、大統領にちなんでナセル湖と名付けられ、約1,700億m3という貯水量で、豊富な水産物を提供しています。
このダムの建設によって、12基の水力発電装置は210万キロワットの電力を供給し、毎年のように人々を襲っていたナイル川の氾濫を防止し、不足しがちだった農業用水を安定させました。

一般に、ダムの建設に伴って生じる自然環境への影響は、生態系の変化、動植物の移動阻害、生物種の変化等様々な問題があります。このアスワンハイダムにも、これらの問題を懸念する声がありました。
その1つは、住血吸虫病の蔓延です。毎年定期的に起こっていた洪水によって、寄生虫の宿主であるカタツムリが流されたいたのが、洪水が無くなったために住血吸虫が流布したと考える人もいます。また、氾濫がなくなったことで、栄養豊かな土が下流まで流されず、ナイル河口付近では大量の化学肥料を投入しなければならなくなったともわれています。
自然環境ばかりではなく、アブシンベル神殿などの大遺跡も危険にさらされました。ナイル川を塞き止めたために水没してしまう遺跡を救うために、ユネスコによる遺跡の救済キャンペーンが行われ、小さなブロックに切り分けられた遺跡は、62m高い位置への移設されたのです。

ダムの建設に限らず、私たち人間はより安全で豊かな生活を求めて、自然環境に手を加えてきました。私たちは目先の利益にとらわれることなく、自然環境をよく理解して環境に与える影響を予測しなければなりません。これからは、自然環境を維持するための科学を発展させることが必要なのです。

2005.12.26 作成 KS